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スパゲッティのお店の夢
6.
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「なんか、最近、夢の事を話題にする事が多くない?」
昼食を食べ終え、ファミレスから大学に戻る途中で、三ヶ嶋君が言った。特に何かを意識して言ったというよりは、自然に出てきた疑問のように感じた。
「そうか?」
充が答える。
「ああ、そうかもね」
僕は答える。僕は夢の日記を書いているから余計にそう感じるだけなのかもしれないけど、三ヶ嶋君に指摘されるとそんな気もしてきた。
「確かに俺も、正夢とか、予知夢とか、よく考えると怪しい事、言ってるしな」
冗談めかして充が言った。
「でも」
少し声色を変えて充が続ける。
「それって本当に夢なのか?」
「どういう事?」
僕はそう聞いた。
「そっちの方が現実で今が夢って事ないか?」
その表情は真剣に見えて、冗談にも思える。
「夢と現実の境目って本当にあると思うか?」
なんだかとても難しそうな話をしている気がした。言われてみると、夢を見ている時、それをはっきりと夢と認識しているかと言われると微妙だ。分かっていたと思えるのは、夢から覚めた時である。だったら、もしかしたら、今もなんて事を考え始めると少しだけ不安に思えてきた。
「それはたぶん、宇宙の始まりとか、果てがあるのかとか、考える事と同じくらい難しいよ」
三ヶ嶋君がそんなふうに言った。
「少なくとも、俺は今、この瞬間が現実だと思っていて、それが全てだと思う。もし、夢だったとしても、目が覚めて、夢だと気が付くまでは、現実と変わらない気がする」
「ファミレスで飯を食って、お腹いっぱいになって、次の講義、眠くなりそうだなと心配しているのはいかにも現実と言う気はするけど」
と、僕は言ってみた。
「確かに現実っぽいリアリティを感じている事は事実だけど、それが本当の事だって誰が証明できるのかと言うところだな」
と、充が言う。
「なんかSFの映画のような話だね」
僕がそう言うと、充が答えた。
「確かにな。だからこそ、リアルに感じる事を大事にした方が良いのかもしれない。と言う訳でやっぱり出会いと言うのは大事にしないといけないという事だな」
「結局、その話に戻るんだ」
「夢だろうと現実だろうと、大事な事はそんなには変わらないよ。俺は自分のやりたい事に忠実なんだ」
「なんだそれ」
「ひとつだけ思うのが、もしこれが夢だったら、俺の思い通りになれって事だな」
その充の意見に僕も同意したくなった。もし、この夢が誰かの夢だとしたら、それは誰の夢なんだろうと、ちょっとだけ考えた。誰の物にも思えなかったのは、やはり、現実だったからだろうか。
昼食を食べ終え、ファミレスから大学に戻る途中で、三ヶ嶋君が言った。特に何かを意識して言ったというよりは、自然に出てきた疑問のように感じた。
「そうか?」
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僕は答える。僕は夢の日記を書いているから余計にそう感じるだけなのかもしれないけど、三ヶ嶋君に指摘されるとそんな気もしてきた。
「確かに俺も、正夢とか、予知夢とか、よく考えると怪しい事、言ってるしな」
冗談めかして充が言った。
「でも」
少し声色を変えて充が続ける。
「それって本当に夢なのか?」
「どういう事?」
僕はそう聞いた。
「そっちの方が現実で今が夢って事ないか?」
その表情は真剣に見えて、冗談にも思える。
「夢と現実の境目って本当にあると思うか?」
なんだかとても難しそうな話をしている気がした。言われてみると、夢を見ている時、それをはっきりと夢と認識しているかと言われると微妙だ。分かっていたと思えるのは、夢から覚めた時である。だったら、もしかしたら、今もなんて事を考え始めると少しだけ不安に思えてきた。
「それはたぶん、宇宙の始まりとか、果てがあるのかとか、考える事と同じくらい難しいよ」
三ヶ嶋君がそんなふうに言った。
「少なくとも、俺は今、この瞬間が現実だと思っていて、それが全てだと思う。もし、夢だったとしても、目が覚めて、夢だと気が付くまでは、現実と変わらない気がする」
「ファミレスで飯を食って、お腹いっぱいになって、次の講義、眠くなりそうだなと心配しているのはいかにも現実と言う気はするけど」
と、僕は言ってみた。
「確かに現実っぽいリアリティを感じている事は事実だけど、それが本当の事だって誰が証明できるのかと言うところだな」
と、充が言う。
「なんかSFの映画のような話だね」
僕がそう言うと、充が答えた。
「確かにな。だからこそ、リアルに感じる事を大事にした方が良いのかもしれない。と言う訳でやっぱり出会いと言うのは大事にしないといけないという事だな」
「結局、その話に戻るんだ」
「夢だろうと現実だろうと、大事な事はそんなには変わらないよ。俺は自分のやりたい事に忠実なんだ」
「なんだそれ」
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