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11:豊穣に祈りと感謝を
収穫祭1
しおりを挟む三角旗で飾られ、人の声や足音が奏でられる町。香ばしい香りや、甘い果実の匂いが漂う――収穫祭当日。
広場の簡易の長テーブルの一つの上には編みカゴの上にパンが並べられていた。テーブルの後ろにはイヴとシェリーが佇んでいる。初めての収穫祭に、興味深そうにイヴは周囲を何度も見渡していた。店舗が並ぶ道の方にも人が流れていっているのが今いる場所からも見える。
「あんまりキョロキョロしないようにしな。あっちの売ってるのは奥まであるし、後で見に行けばいいんだからね。旅商人とかもあっちで出してるから」
「は、はい」
「いつもと違って人が多いから、売れたらちゃんと袋にしまうんだよ」
往来は普段の倍は最低でもある。中央のテーブルの方にはグレンが立っており、シンプルでやや小ぶりのパンを配っているが、イヴ達の方は金銭のやりとりをする。防犯のため代金とお釣り用に今回は革袋が用意されていた。手元に置いておけて持ち運びも出来るためだ。それでも盗まれる可能性があるため、イヴはシェリーに気を付けるように重々言い聞かされた。そのため金銭周りには気を配っていた。
人々の流れは中央のテーブルに向かっている。中央のテーブルには配布用のパン以外にも、今収穫できる物の取れ立てが並んでいた。そちらは販売している訳ではなく、捧げ物のように飾られている。それでも流れるのはパンが配られているからだろう。老若男女並んで受け取っており、そこから違う場所へと移動している。
「すぐになくなっちゃいそうですね」
「なくなれば祭りを楽しむだけだからね。いいさ。アンタも、早く売れたらその分見て回れるからね」
「あの、このパンはなんのパンですか?」
話している間にお客さんが訪れた。切り替えて挨拶をする。今回用意したパンは三種類ありそれの説明をした。順に味や中の具を説明し、最後のパンの説明に入る。半円型のパンは焼き上がってから時間は経っているが、香ばしく焼き上げられており食欲をそそらせていた。
「この最後が、細かくしたリンゴのはちみつ漬けを入れた甘いパンです」
「へえ。甘いパンなんて珍しい。これください」
「ありがとうございます!」
外から来た客は物珍しげに話を聞いて、購入の運びとなった。
アメリアとミランダから話を聞いてから、グレンと話し合って決めたパンははちみつとリンゴを使ったパンだった。具材が具材けに中はしっとりするため、バランス良くなるよう入れられており、食感に違いを持たせるためかパンの表面はパリッと仕上がっている。試作の際にイヴもグレンも味見をしたが、顔を綻ばせた。歯触りの良い食感からしっとりとした食感に辿り着いた時、くどくない甘さと果実の香りが入り込み、一個食べきるまでにそう時間はかからなかった。
(先にわたしの分は分けてもらってるし……とにかく全部売れたらいいなぁ)
今回考案したパンは、グレンの厚意で事前にイヴの分が取り除かれていた。甘いパンのためおやつとして食べてもいいし、友人と一緒に食べてもいいからとの事で数個だ。アイデアは他の人の話を大いに参考にしてはいるが、自分が考えたパンが売れる喜びにイヴはついつい頬を緩めた。
「いらっしゃいませー!」
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