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24話
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結局当日朝早くには新鮮な魚が無事届けられ、婚約パーティは滞りなく盛大な様子で終了した。
パーティが終わってもまだニルスはデニスの婚約者の顔を明確に覚えていない。だが綺麗に着飾った状態と日常ではまた雰囲気も違うだろうから仕方がないと気にしていない。いずれ会う機会が増えるとしたらいつか覚えるだろう。
デニスは婚約することもなかなか渋っていたわりに、その婚約者のことはそれなりに気に入っているのかもしれない。パーティの間もずっと一緒にいるようだった。何度か他の令嬢とダンスをする機会がこういった催しのしきたり上あったものの、その後はまた婚約者の元へ戻っていた。
両親の同じ兄弟であるが、デニスとリックは似ているようで似ていない。髪や瞳の色は同じだが、二人とも整った容姿でありつつ中世的な顔立ちをしているリックに対し、デニスはどちらかと言えば男らしい顔立ちをしている。性格も一見優しげだが結構な食わせ者であるリックに対し、デニスは一見偉そうだがその分単純で流されやすいところがある。おかげで昔からデニスが二歳年下であるリックの手のひらで転がされているようにしか見えないところをニルスは度々目の当たりにする羽目になった。リックに仕えている身として王やデニスたちに少々申し訳なく思うくらいには見かけている。
ちなみにデニスとリックの間にはアリアネという妹であり姉である存在がいる。
サヴェージ家唯一の女児ということで昔からかわいがられてきたせいもあり、もうすぐ二十歳になるというのに相変わらずわがままなところは変わらない。また兄デニスのことが大好きなようで、今回の正式な婚約に関してもずっと不満そうにしていた。デニスの婚約が遅くなったのはアリアネのせいもあるのではないかと関係者の中ではこっそり思う者もいるようだ。
単にデニスがその気、なかっただけだけどな。
エルヴィンの妹であるラウラも候補に上がっていたが、とにかく将来王の妃となる女性だけに候補者は慎重に選ばれていた。それもあり、見た目云々よりもとにかく家柄と性格などが重視されたようだ。ラウラはさすがエルヴィンの妹だけに見た目も素晴らしいとニルスは思っているが、性格はどちらかといえばおとなしい。他の候補者たちもいわゆる淑女たちばかりで、優秀であるものの皆派手なところは皆無だった。
ラウラと接する機会が増えると、ニルスから見ればおとなしいというよりは少々控えめとはいえ芯のあるしっかりした女性というイメージに変わっていったし、デニスをしっかり支えつつ王妃にもふさわしい気がしていた。ただエルヴィンを見ているとラウラをどうやら王妃にはさせたくないように思える上に、ラウラ自身もまだ結婚など考えたくないといった様子だった。そのためあえて最有力候補として勧めるのはやめておいた。
そしておしとやかな淑女たちを周りから勧められていたもののデニスの好みではなかったのだろう。あまりその気にならない様子だった。それを以前婚約が中々決まらなかった時にリックに言えば「ああ、ニルスにしては鋭いね」と言われた。
「俺にしては……?」
「だってそういう恋愛絡みのこと、ニルスって鈍そうじゃない」
確かにエキスパートだとは到底言えないし得意でもないが、鈍いとはっきり言われるとムッとなる。
「そんなことない」
「へえ? じゃあ女性でも男性でも、ニルスは手玉に取っちゃうんだ?」
何故そう極端に走るのか。
「あり得ない」
「まあ、知ってるけどね」
「……」
「兄上は多分さ、グラマラスでゴージャスな感じの女性が好きなんだよ」
「……いい家柄の淑女としてあまりピンとこない」
「頭、悪そうだよね。っていうか兄上が頭悪そうだよまるで」
「……言いすぎでは」
「まあ、そういう女性、俺も嫌いじゃないけどさ。見た目が華やかでいて中身は淑女とか、そんな人がいるならできれば俺もお付き合いしてみたいね」
ニコニコと言うリックの言葉に、ふとある人の笑顔がニルスの頭によぎる。
「ねえ、今ニルス、エルヴィンのこと考えてる?」
「……考えてない。とにかくデニス殿下はそういう派手な女性じゃなければ婚約しないということだろうか」
「まさか。兄上もそこまで馬鹿じゃないと思うよ。そりゃ好みの女性に骨抜きにされちゃったりしたら馬鹿にもなりかねない、流されやすいとこはあるけどさ」
「……言いすぎでは」
「とりあえず俺もさ、兄上にお似合いそうな、淑女でいてしっかりした令嬢がいれば積極的に勧めようとは思っているよ」
「……あの、リック」
「何?」
「……エルヴィンの妹はその、確かまだ結婚とか、は……」
「ああ、ラウラね! 確かに出会った頃よりずいぶんしっかりしてきた気がするラウラは兄上に合うかもしれないね」
「い、いや……だが」
「大丈夫だからそんなに困った顔しないでくれる? 世の令嬢たちが見たらギャップと庇護欲にかられちゃうんじゃない?」
「……俺の表情を読めるのは俺の兄さん以外だとお前くらいだろ」
「そっか。でもごめん、俺はお前とは付き合えない」
何故そうなる、とニルスはドン引きしながらリックを見た。
「やめろ」
「つれないねえ。とにかく大丈夫。ラウラ、まだ結婚とか考えたくないと思ってるって言いたいんでしょ。確かエルヴィンもそんなこと言ってた気がするし、その気がないのに無理やり推したらかわいそうだもんね」
「……ああ」
ホッとして頷くニルスに、リックはまたニコニコとした顔を向けてきた。
そしてようやく選ばれた令嬢だ。もしかしたらあの令嬢はリックが勧めたのかもしれない。ニルスがまだ顔を覚えられていない人とはいえ綺麗な人だろうし、何よりわがままなアリアネともそれなりに上手くやっているようだ。多分デニスもそういうところが気に入ったのかもしれない。
パーティが終わってもまだニルスはデニスの婚約者の顔を明確に覚えていない。だが綺麗に着飾った状態と日常ではまた雰囲気も違うだろうから仕方がないと気にしていない。いずれ会う機会が増えるとしたらいつか覚えるだろう。
デニスは婚約することもなかなか渋っていたわりに、その婚約者のことはそれなりに気に入っているのかもしれない。パーティの間もずっと一緒にいるようだった。何度か他の令嬢とダンスをする機会がこういった催しのしきたり上あったものの、その後はまた婚約者の元へ戻っていた。
両親の同じ兄弟であるが、デニスとリックは似ているようで似ていない。髪や瞳の色は同じだが、二人とも整った容姿でありつつ中世的な顔立ちをしているリックに対し、デニスはどちらかと言えば男らしい顔立ちをしている。性格も一見優しげだが結構な食わせ者であるリックに対し、デニスは一見偉そうだがその分単純で流されやすいところがある。おかげで昔からデニスが二歳年下であるリックの手のひらで転がされているようにしか見えないところをニルスは度々目の当たりにする羽目になった。リックに仕えている身として王やデニスたちに少々申し訳なく思うくらいには見かけている。
ちなみにデニスとリックの間にはアリアネという妹であり姉である存在がいる。
サヴェージ家唯一の女児ということで昔からかわいがられてきたせいもあり、もうすぐ二十歳になるというのに相変わらずわがままなところは変わらない。また兄デニスのことが大好きなようで、今回の正式な婚約に関してもずっと不満そうにしていた。デニスの婚約が遅くなったのはアリアネのせいもあるのではないかと関係者の中ではこっそり思う者もいるようだ。
単にデニスがその気、なかっただけだけどな。
エルヴィンの妹であるラウラも候補に上がっていたが、とにかく将来王の妃となる女性だけに候補者は慎重に選ばれていた。それもあり、見た目云々よりもとにかく家柄と性格などが重視されたようだ。ラウラはさすがエルヴィンの妹だけに見た目も素晴らしいとニルスは思っているが、性格はどちらかといえばおとなしい。他の候補者たちもいわゆる淑女たちばかりで、優秀であるものの皆派手なところは皆無だった。
ラウラと接する機会が増えると、ニルスから見ればおとなしいというよりは少々控えめとはいえ芯のあるしっかりした女性というイメージに変わっていったし、デニスをしっかり支えつつ王妃にもふさわしい気がしていた。ただエルヴィンを見ているとラウラをどうやら王妃にはさせたくないように思える上に、ラウラ自身もまだ結婚など考えたくないといった様子だった。そのためあえて最有力候補として勧めるのはやめておいた。
そしておしとやかな淑女たちを周りから勧められていたもののデニスの好みではなかったのだろう。あまりその気にならない様子だった。それを以前婚約が中々決まらなかった時にリックに言えば「ああ、ニルスにしては鋭いね」と言われた。
「俺にしては……?」
「だってそういう恋愛絡みのこと、ニルスって鈍そうじゃない」
確かにエキスパートだとは到底言えないし得意でもないが、鈍いとはっきり言われるとムッとなる。
「そんなことない」
「へえ? じゃあ女性でも男性でも、ニルスは手玉に取っちゃうんだ?」
何故そう極端に走るのか。
「あり得ない」
「まあ、知ってるけどね」
「……」
「兄上は多分さ、グラマラスでゴージャスな感じの女性が好きなんだよ」
「……いい家柄の淑女としてあまりピンとこない」
「頭、悪そうだよね。っていうか兄上が頭悪そうだよまるで」
「……言いすぎでは」
「まあ、そういう女性、俺も嫌いじゃないけどさ。見た目が華やかでいて中身は淑女とか、そんな人がいるならできれば俺もお付き合いしてみたいね」
ニコニコと言うリックの言葉に、ふとある人の笑顔がニルスの頭によぎる。
「ねえ、今ニルス、エルヴィンのこと考えてる?」
「……考えてない。とにかくデニス殿下はそういう派手な女性じゃなければ婚約しないということだろうか」
「まさか。兄上もそこまで馬鹿じゃないと思うよ。そりゃ好みの女性に骨抜きにされちゃったりしたら馬鹿にもなりかねない、流されやすいとこはあるけどさ」
「……言いすぎでは」
「とりあえず俺もさ、兄上にお似合いそうな、淑女でいてしっかりした令嬢がいれば積極的に勧めようとは思っているよ」
「……あの、リック」
「何?」
「……エルヴィンの妹はその、確かまだ結婚とか、は……」
「ああ、ラウラね! 確かに出会った頃よりずいぶんしっかりしてきた気がするラウラは兄上に合うかもしれないね」
「い、いや……だが」
「大丈夫だからそんなに困った顔しないでくれる? 世の令嬢たちが見たらギャップと庇護欲にかられちゃうんじゃない?」
「……俺の表情を読めるのは俺の兄さん以外だとお前くらいだろ」
「そっか。でもごめん、俺はお前とは付き合えない」
何故そうなる、とニルスはドン引きしながらリックを見た。
「やめろ」
「つれないねえ。とにかく大丈夫。ラウラ、まだ結婚とか考えたくないと思ってるって言いたいんでしょ。確かエルヴィンもそんなこと言ってた気がするし、その気がないのに無理やり推したらかわいそうだもんね」
「……ああ」
ホッとして頷くニルスに、リックはまたニコニコとした顔を向けてきた。
そしてようやく選ばれた令嬢だ。もしかしたらあの令嬢はリックが勧めたのかもしれない。ニルスがまだ顔を覚えられていない人とはいえ綺麗な人だろうし、何よりわがままなアリアネともそれなりに上手くやっているようだ。多分デニスもそういうところが気に入ったのかもしれない。
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