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25話
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デニスが正式に婚約してからそれなりに経った。婚約パーティーにはさすがに出席していた様子のエルヴィンだが、普段パーティーに出ることはかなり少ないようだ。
「あまり騒がしい集まり、得意じゃないんだ」
以前エルヴィンはニルスにそんなことを言っていた。華やかそうな容姿をしているわりにそんなことを言うエルヴィンに例えようのない強い感情が湧き上がるのを感じつつニルスは単に「そうか」とだけ答えていた。
ニルスとしてはエルヴィンがパーティーにあまり出ないことはむしろよかったと思っている。
こういう場は誘惑だらけだろうし……。
ニルスからすればエルヴィンがそういった場に出れば間違いなく誰もが放っておかないはずだとも思っている。その上普段とてもしっかりとしている兄属性であるエルヴィンだが案外抜けているというか天然というか、少々ハラハラするところがある。心配でしかない。
リックが留学してからしばらくの間、エルヴィンの様子がおかしかった時があった。ちなみにそれに関してはリックがいなくてそうなったのだろうかと見るたびに心が痛んだものだ。
とはいえ別にエルヴィンは落ち込んでいる風でもなく、その時もやたらその辺の誰かに気さくな笑顔とともに気さくな様子で触れたりしていた。もちろん、ニルスに対してもそんな感じだったし、あくまでも親しみのある感じであり、性的な風ではちっともなかった。エルヴィンらしいと言えばエルヴィンらしい感じだったしニルスはさすがに勘違いなどしなかった。しかしあれは勘違いするものが続出しそうでニルスは内心ハラハラしていた。
そんなエルヴィンがパーティーに顔を出せばどうなることか、とつい思ってしまう。
とはいえデニスの婚約パーティーの時はニルスですら、エルヴィンも出席していたのを知っているにも関わらず、中々見つけることができなかった。多分パーティーが得意ではないからどこかにひっそりとたたずみやり過ごしたのだろう。
改めてエルヴィンが騒がしい集まりが得意でなくてよかったとニルスは思う。
ついでにニルスもできるのであればあまりパーティーには出たくない。ウィスラー家の者として仕方なく出席はしているが、本当ならば兄であるユルゲンに全部任せたいくらいだ。
ユルゲンはニルスの五歳上の兄で、ラフェド王やリックに仕えている父親やニルスの代わりに家の大抵の仕事をこなしてくれている俊傑な辣腕家であり尊敬すべき人だ。またニルスと違ってにこやかだ。ユルゲンも社交界の中心にいる人物であるものの、幸いというか妻子がもういるため、独身の様々な人に結婚相手として群がられることはない。それもあって代わりに出て欲しいとつい思ってしまう。
先日のパーティーでも渋々出たはいいが、何人かの令嬢に囲まれた時は内心リックやユルゲンに助けを求めていた。
別に女性恐怖症でもなんでもないが、ニルスがあまりに喋らないせいもあり寄ってきてくれてもその後怖がられたり機嫌を悪くしたり気まずそうにされたりすることがたまにある。こちらから近寄ったならばそれも仕方ないと思えるが、勝手に近づかれて勝手にそうなられてもどうしようもない。かといってそれに関しては気遣う気もない。
結局のところ面倒なのだ。だからあまり社交の場は好まない。
そういえば一人、俺があまり喋らなくても離れてくれない人がいたな。
相変わらず顔は今思い返そうとしても思い出せないが、その令嬢が離れてくれなかった時に「この人、もしかしたらエルヴィンの好みなのだろうか」と思った記憶はある。多分派手な顔つきで胸の大きな人だったのだろう。
確かヒュープナー家の男爵令嬢だったか……?
顔は覚えられなくとも仕事柄貴族の名前や状況などはある程度把握している。ヒュープナー家は男爵の爵位を持っていてラヴィニアという娘がいたくらいは把握している。
とにかく離れてくれなくて困っていたが、悲しいかな、困っていると顔を見てわかってくれるのはユルゲンかリックくらいであり、そんなニルスを誰も手助けはしてくれなかった。
……もしかしたらエルヴィンもわかってくれただろうか。
ユルゲンもリックもそしてエルヴィンもそのパーティーには出席していなかったため、ニルスは何とか自分で逃げおおせた。
知人たちには「あんな魅力的な女性に言い寄られたというのにもったいない」などと言われたが、どのみちラヴィニアはニルスに興味があるというより、デニスやリックに興味がありそうだった。ニルスのことも聞かれたが、ちょくちょく二人の王子について聞かれたりしていた気がする。
後日エルヴィンの元へ会いに……いや、守るという仕事を全うするために出向こうとした時、あろうことかエルヴィンのほうからやって来てくれた。ただ、何故か少々顔を青ざめさせている。
「どうしたんだ」
いつも穏やかそうに笑っているエルヴィンが顔を青ざめさせている。絶対何かあったに違いないし、その原因となるものがあるならば即刻消し去らなければならない。
「ニルス……! お前、この間のパーティーでラヴィニアに、いや、ミス・ラヴィニアに言い寄られてたって……本当か!」
「え? あ、いや、言い寄られてた、というか……」
何故こんなに青ざめつつ必死に聞いてくるのだろうとニルスは内心かなり驚いていた。もしかして嫉妬的な? ともよぎったが、まずあり得ないだろとすぐに却下する。
「というか……っ?」
「……デニスやリックについて聞かれてた気が」
「ああああ神よ……!」
神に祈るほど、リックについて聞かれたことがショックなのだろうか。もしくはミス・ラヴィニアがやはりタイプだったのだろうか。
ニルスはまた心臓が少々ズキズキとしつつ困惑を隠せないままエルヴィンを見ていた。
「あまり騒がしい集まり、得意じゃないんだ」
以前エルヴィンはニルスにそんなことを言っていた。華やかそうな容姿をしているわりにそんなことを言うエルヴィンに例えようのない強い感情が湧き上がるのを感じつつニルスは単に「そうか」とだけ答えていた。
ニルスとしてはエルヴィンがパーティーにあまり出ないことはむしろよかったと思っている。
こういう場は誘惑だらけだろうし……。
ニルスからすればエルヴィンがそういった場に出れば間違いなく誰もが放っておかないはずだとも思っている。その上普段とてもしっかりとしている兄属性であるエルヴィンだが案外抜けているというか天然というか、少々ハラハラするところがある。心配でしかない。
リックが留学してからしばらくの間、エルヴィンの様子がおかしかった時があった。ちなみにそれに関してはリックがいなくてそうなったのだろうかと見るたびに心が痛んだものだ。
とはいえ別にエルヴィンは落ち込んでいる風でもなく、その時もやたらその辺の誰かに気さくな笑顔とともに気さくな様子で触れたりしていた。もちろん、ニルスに対してもそんな感じだったし、あくまでも親しみのある感じであり、性的な風ではちっともなかった。エルヴィンらしいと言えばエルヴィンらしい感じだったしニルスはさすがに勘違いなどしなかった。しかしあれは勘違いするものが続出しそうでニルスは内心ハラハラしていた。
そんなエルヴィンがパーティーに顔を出せばどうなることか、とつい思ってしまう。
とはいえデニスの婚約パーティーの時はニルスですら、エルヴィンも出席していたのを知っているにも関わらず、中々見つけることができなかった。多分パーティーが得意ではないからどこかにひっそりとたたずみやり過ごしたのだろう。
改めてエルヴィンが騒がしい集まりが得意でなくてよかったとニルスは思う。
ついでにニルスもできるのであればあまりパーティーには出たくない。ウィスラー家の者として仕方なく出席はしているが、本当ならば兄であるユルゲンに全部任せたいくらいだ。
ユルゲンはニルスの五歳上の兄で、ラフェド王やリックに仕えている父親やニルスの代わりに家の大抵の仕事をこなしてくれている俊傑な辣腕家であり尊敬すべき人だ。またニルスと違ってにこやかだ。ユルゲンも社交界の中心にいる人物であるものの、幸いというか妻子がもういるため、独身の様々な人に結婚相手として群がられることはない。それもあって代わりに出て欲しいとつい思ってしまう。
先日のパーティーでも渋々出たはいいが、何人かの令嬢に囲まれた時は内心リックやユルゲンに助けを求めていた。
別に女性恐怖症でもなんでもないが、ニルスがあまりに喋らないせいもあり寄ってきてくれてもその後怖がられたり機嫌を悪くしたり気まずそうにされたりすることがたまにある。こちらから近寄ったならばそれも仕方ないと思えるが、勝手に近づかれて勝手にそうなられてもどうしようもない。かといってそれに関しては気遣う気もない。
結局のところ面倒なのだ。だからあまり社交の場は好まない。
そういえば一人、俺があまり喋らなくても離れてくれない人がいたな。
相変わらず顔は今思い返そうとしても思い出せないが、その令嬢が離れてくれなかった時に「この人、もしかしたらエルヴィンの好みなのだろうか」と思った記憶はある。多分派手な顔つきで胸の大きな人だったのだろう。
確かヒュープナー家の男爵令嬢だったか……?
顔は覚えられなくとも仕事柄貴族の名前や状況などはある程度把握している。ヒュープナー家は男爵の爵位を持っていてラヴィニアという娘がいたくらいは把握している。
とにかく離れてくれなくて困っていたが、悲しいかな、困っていると顔を見てわかってくれるのはユルゲンかリックくらいであり、そんなニルスを誰も手助けはしてくれなかった。
……もしかしたらエルヴィンもわかってくれただろうか。
ユルゲンもリックもそしてエルヴィンもそのパーティーには出席していなかったため、ニルスは何とか自分で逃げおおせた。
知人たちには「あんな魅力的な女性に言い寄られたというのにもったいない」などと言われたが、どのみちラヴィニアはニルスに興味があるというより、デニスやリックに興味がありそうだった。ニルスのことも聞かれたが、ちょくちょく二人の王子について聞かれたりしていた気がする。
後日エルヴィンの元へ会いに……いや、守るという仕事を全うするために出向こうとした時、あろうことかエルヴィンのほうからやって来てくれた。ただ、何故か少々顔を青ざめさせている。
「どうしたんだ」
いつも穏やかそうに笑っているエルヴィンが顔を青ざめさせている。絶対何かあったに違いないし、その原因となるものがあるならば即刻消し去らなければならない。
「ニルス……! お前、この間のパーティーでラヴィニアに、いや、ミス・ラヴィニアに言い寄られてたって……本当か!」
「え? あ、いや、言い寄られてた、というか……」
何故こんなに青ざめつつ必死に聞いてくるのだろうとニルスは内心かなり驚いていた。もしかして嫉妬的な? ともよぎったが、まずあり得ないだろとすぐに却下する。
「というか……っ?」
「……デニスやリックについて聞かれてた気が」
「ああああ神よ……!」
神に祈るほど、リックについて聞かれたことがショックなのだろうか。もしくはミス・ラヴィニアがやはりタイプだったのだろうか。
ニルスはまた心臓が少々ズキズキとしつつ困惑を隠せないままエルヴィンを見ていた。
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