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38話
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リックの話をしてから数日後、そのリックが帰国した。第二王子の帰国ということでパーティーも開かれた。普段あまり出席しないエルヴィンもさすがに出席する。あと、リックに聞きたいこともあった。
ブローチのことではない。いや、ブローチのことも、一時帰国の時は何も言えていないしどういうつもりだと問いただしたいが、それよりも数日前の事件についてだ。
とある公爵子息が様々な社交場だけでなく、あろうことか城でも麻薬取引などを行っていたことが発覚し、急遽拘束されたらしい。
子どもの頃はラウラのこともありなるべく社交場へ出るようにしていたエルヴィンだが、大人になってからはあまり出なくなっていた。それもあってちっともそんなことが行われていたことなど知らなかった。そもそも、遡る前にはそんな事件、起きていない。
それともこれもヒュープナー事件のように発覚していなかっただけなのかな。
社交場にあまり出なくなっていても今のエルヴィンには友人もいるので情報は使用人たちなどからでなくともある程度入ってくる。どのみち公爵家子息ということで庶民の間ですら話題らしい。
その麻薬取引云々を暴いたのは帰国したてのリックだったと聞く。エルヴィンとしてはその辺についてリックに聞いてみたかった。もちろん好奇心もあるが、とにかく以前は起きていなかった事件だけに少し気になった。
ヒュープナー事件も偶然があまりに重なって発覚したようなものだが、今回もそうなのだろうか。
ただ、偶然はそんなに重なるものだろうかと思ってしまう。もしかしてエルヴィンが遡ったことに何か関係があったりしないだろうか。
根拠はないし自分でも何も把握できていないが、少なくとも気になることは多少なりとも把握しておきたかった。
だが帰国したての上にそのような事件の中心にいるせいもあり多忙そうなリックと、エルヴィンは中々話す機会がなかった。ついでにニルスもリックが帰国して忙しくなったのか接することがかなり減ったかもしれない。
結局、リックとは帰国を祝うパーティーまでほぼ接触することができなかった。
会場では遠目でリックとデニスが会話する姿が見える。その様子が穏やかそうだ。遡る前は見られなかった様子だった。
その近くには二人の補佐であるニルスとジェムが付き添っている。
なんだろ……エンディング感というかこのやり切ったというかやり終えた感。俺、少なくともここ最近何もしてないんだけど。
彼らの光景を見てエルヴィンも穏やかな気持ちになるものの、なんだか微妙な気持ちになるのは遡ってからの習性だろうか。もしくはラウラに勧められ続ける恋愛小説の影響だろうか。
そういえば主人公の周りに登場する、あまり物語の展開に関係ない役柄的な存在を「モブ」って言うんだっけ? 今の俺、そんな感覚かもしれない。
とはいえ遡る前に味わったつらい出来事を思えばモブ大歓迎だ。むしろ最高だ。何もしなくても穏やかに幕が下りるとか素晴らしすぎるのではとエルヴィンは思う。
そんなことを考えているとエルヴィンに気づいたリックがニルスとともに近づいてきた。
「やあ、エルヴィン」
「お久しぶりです、リック王子」
「久しぶりなの? 三日前も会ったじゃない」
リックの言葉に、むしろニルスが首を傾げている。エルヴィンとしても首を傾げたい。
「会ったというか……遠くで顔を少し拝見しただけですけど」
「えー、でも目もあったよね?」
「それすら定かではないです」
「俺は心も通わせたつもりだったのに」
「……相変わらずですね、リック王子は」
苦笑しているエルヴィンの前で、ニルスがため息をついている。ニルスに触れてはいないが、さすがに呆れているんだろうなくらいはエルヴィンにもわかった。
「というか王子がついてる」
「は?」
「俺のこと、ずっとリックって呼んでくれてたのに、留学期間が長すぎた? もしかしてあのエルヴィンが人見知りでも発動してるの?」
「……どの俺ですか。あと、呼び方については子どもの頃に言ったはずです。公共の場ではせめて王子をつける、と。あなたが最初にそれでいいからと言ってきたんでしょう」
「えー、覚えてないなあ」
初めて出会った時に転んで足についた砂利の石の形すら覚えていそうなやつが何言ってんだと内心思いつつ、エルヴィンはリックに笑いかけた。
「ここは譲りませんからね。こういった場で呼び捨てになどさせようとしないでください」
「仕方ないなあ。じゃあそうする代わりに俺との時間、作ってね」
もちろん、はなからそのつもりだったというか、むしろ作ってもらえたらありがたいとエルヴィンは思っていた。だがまるで譲歩される代わりに時間を作るみたいで、とてつもなく微妙な気持ちになる。
「……ほんっと相変わらずですね」
エルヴィンはむしろますますニッコリとリックを見た。
「で、リックのほうから時間を作ってと言ってきたのは何かお話でもあったのですか」
翌日、王宮にいるリックの元を訪れると、話は通っているらしくエルヴィンはスムーズにリックの個人的な応接室へ案内された。最初、ニルスだけがその応接室にいてエルヴィンに茶を淹れてくれた。いくらリックに仕えている補佐とはいえ、これではまるでメイドではとつい思う。それと以前にもこういうことあったようなとさらに思い返したら、ヒュープナー事件が発覚するきっかけとなった書類の時だった。
ブローチのことではない。いや、ブローチのことも、一時帰国の時は何も言えていないしどういうつもりだと問いただしたいが、それよりも数日前の事件についてだ。
とある公爵子息が様々な社交場だけでなく、あろうことか城でも麻薬取引などを行っていたことが発覚し、急遽拘束されたらしい。
子どもの頃はラウラのこともありなるべく社交場へ出るようにしていたエルヴィンだが、大人になってからはあまり出なくなっていた。それもあってちっともそんなことが行われていたことなど知らなかった。そもそも、遡る前にはそんな事件、起きていない。
それともこれもヒュープナー事件のように発覚していなかっただけなのかな。
社交場にあまり出なくなっていても今のエルヴィンには友人もいるので情報は使用人たちなどからでなくともある程度入ってくる。どのみち公爵家子息ということで庶民の間ですら話題らしい。
その麻薬取引云々を暴いたのは帰国したてのリックだったと聞く。エルヴィンとしてはその辺についてリックに聞いてみたかった。もちろん好奇心もあるが、とにかく以前は起きていなかった事件だけに少し気になった。
ヒュープナー事件も偶然があまりに重なって発覚したようなものだが、今回もそうなのだろうか。
ただ、偶然はそんなに重なるものだろうかと思ってしまう。もしかしてエルヴィンが遡ったことに何か関係があったりしないだろうか。
根拠はないし自分でも何も把握できていないが、少なくとも気になることは多少なりとも把握しておきたかった。
だが帰国したての上にそのような事件の中心にいるせいもあり多忙そうなリックと、エルヴィンは中々話す機会がなかった。ついでにニルスもリックが帰国して忙しくなったのか接することがかなり減ったかもしれない。
結局、リックとは帰国を祝うパーティーまでほぼ接触することができなかった。
会場では遠目でリックとデニスが会話する姿が見える。その様子が穏やかそうだ。遡る前は見られなかった様子だった。
その近くには二人の補佐であるニルスとジェムが付き添っている。
なんだろ……エンディング感というかこのやり切ったというかやり終えた感。俺、少なくともここ最近何もしてないんだけど。
彼らの光景を見てエルヴィンも穏やかな気持ちになるものの、なんだか微妙な気持ちになるのは遡ってからの習性だろうか。もしくはラウラに勧められ続ける恋愛小説の影響だろうか。
そういえば主人公の周りに登場する、あまり物語の展開に関係ない役柄的な存在を「モブ」って言うんだっけ? 今の俺、そんな感覚かもしれない。
とはいえ遡る前に味わったつらい出来事を思えばモブ大歓迎だ。むしろ最高だ。何もしなくても穏やかに幕が下りるとか素晴らしすぎるのではとエルヴィンは思う。
そんなことを考えているとエルヴィンに気づいたリックがニルスとともに近づいてきた。
「やあ、エルヴィン」
「お久しぶりです、リック王子」
「久しぶりなの? 三日前も会ったじゃない」
リックの言葉に、むしろニルスが首を傾げている。エルヴィンとしても首を傾げたい。
「会ったというか……遠くで顔を少し拝見しただけですけど」
「えー、でも目もあったよね?」
「それすら定かではないです」
「俺は心も通わせたつもりだったのに」
「……相変わらずですね、リック王子は」
苦笑しているエルヴィンの前で、ニルスがため息をついている。ニルスに触れてはいないが、さすがに呆れているんだろうなくらいはエルヴィンにもわかった。
「というか王子がついてる」
「は?」
「俺のこと、ずっとリックって呼んでくれてたのに、留学期間が長すぎた? もしかしてあのエルヴィンが人見知りでも発動してるの?」
「……どの俺ですか。あと、呼び方については子どもの頃に言ったはずです。公共の場ではせめて王子をつける、と。あなたが最初にそれでいいからと言ってきたんでしょう」
「えー、覚えてないなあ」
初めて出会った時に転んで足についた砂利の石の形すら覚えていそうなやつが何言ってんだと内心思いつつ、エルヴィンはリックに笑いかけた。
「ここは譲りませんからね。こういった場で呼び捨てになどさせようとしないでください」
「仕方ないなあ。じゃあそうする代わりに俺との時間、作ってね」
もちろん、はなからそのつもりだったというか、むしろ作ってもらえたらありがたいとエルヴィンは思っていた。だがまるで譲歩される代わりに時間を作るみたいで、とてつもなく微妙な気持ちになる。
「……ほんっと相変わらずですね」
エルヴィンはむしろますますニッコリとリックを見た。
「で、リックのほうから時間を作ってと言ってきたのは何かお話でもあったのですか」
翌日、王宮にいるリックの元を訪れると、話は通っているらしくエルヴィンはスムーズにリックの個人的な応接室へ案内された。最初、ニルスだけがその応接室にいてエルヴィンに茶を淹れてくれた。いくらリックに仕えている補佐とはいえ、これではまるでメイドではとつい思う。それと以前にもこういうことあったようなとさらに思い返したら、ヒュープナー事件が発覚するきっかけとなった書類の時だった。
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