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156話
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リックが腹を抱えて笑っている。それをエルヴィンは何とも言い難い表情で見ながら「いい加減笑うのやめてください」と絞り出すように頼んだ。
「だって。君がそんな勘違いしてたなんて思いもよらなくて」
「そりゃするでしょうっ? あんな苦しかったのに何もなかったみたいに楽になってて、そしておそらくはリックの寝室のリックのベッドで眠っていたんですよ俺。おまけに服まで着替えて。その上あなたが様子を窺いに入ってきた。勘違いもするでしょう?」
お互い同時に言った言葉に、お互い違和感を覚えて二人は改めて話を突き合わせていた。そしてようやく自分が盛大な勘違いをしていたとわかったエルヴィンは少しの間ベッドの布団にもぐって出てこられないほど、居たたまれなさに包まれていた。挙句、ようやく出てきたエルヴィンを見てリックが笑い出したのだ。
「しちゃうかなあ? だって俺と君はそういう関係じゃないでしょ」
「ですが俺、本当に昨日はおかしかったから、理性ぶっ飛んでやらかしたのか、と」
「あはは。何ならそういうことにしてもうしばらく様子を楽しんでもよかったね」
「よくありませんよ……! はぁ……ですが改めて、本当にご迷惑をおかけいたしました。申し訳ありません」
ため息をついた後、向かいのソファーに座っているリックに対して座ったまま頭を下げると「次謝ったら罰ゲームね」と言われた。
「いや、何でですか……」
「あの果物のこと知らないエルヴィンが謝ることなんて何一つないからだよ」
「それでもご迷惑をかけたのは事実ですから」
「ならちょっとした粗相だと思っておきなよ」
「……何かお漏らししたみたいですけど」
「あはは! お漏らしか」
「いや、笑うとこ違います」
「お漏らししても俺は怒らないから大丈夫だよ」
「いやもう、この話どこへ行く感じなんですか……」
「ふふ。とにかく、君が謝るなら俺も同じだけ、ちゃんと食べるのを止めさせられなくてごめんねって言うから」
「……もう。わかりました。では、助けてくださってありがとうございます」
「俺は何も手助けできてないよ?」
「? ですが俺の具合は完全によくなってます。あの果物の威力がどんなものかわかりませんが、さすがに一晩寝たから治ったとかじゃないですよね? そもそもぐっすり眠れるわけがない。リックが魔法でどうにかしてくださったんじゃないんですか?」
怪訝な顔でリックに言えば、一瞬ポカンとした後で「ああ、なるほど」と頷いてきた。
「君はほぼ意識、飛んじゃってたんだねえ」
「そう言いませんでした? だからてっきり理性もぶっ飛んで襲ってしまったのか、と」
「はは。じゃあ次は襲ってもらおうかな。途中から襲うのは俺になるだろうけど」
「……言ってることがわかりませんし、次がそもそもありませんが」
「残念。あとね、君を助けたのはニルスだよ」
リックの口からニルスの名前を聞いたエルヴィンは腹の奥だろうか、よくわからないがどこかが何だか妙に疼く気がした。
「ニ、ルス」
「仕事から戻ってきてね。一瞬殺されちゃうかと思ったよ」
「いやいや、あなた王子ですけど」
「君が関わっているニルスにかかったら王子だろうが王だろうが関係ないと思うよ……。まあ事情は何とか説明したし、把握したニルスが君を助けたってわけ」
ニルスが俺を助けた……。
「って、えっと……」
「君は覚えてないだろうし、俺は明確に言わないけど、でもわかるよね?」
「え? え? あ……」
「ああ、大丈夫。俺は即退散したから」
「い、いえそんな心配、は……」
ニルスが。
助けてくれた。
少し動揺したせいか、脳内に浸透するのに少々時間がかかった。だが浸透すると一気に顔が熱くなった。
「う、わ……」
そんなエルヴィンをリックは楽しそうに笑みを浮かべて見ている。
リックにも把握されているという羞恥心と、ニルスに痴態を見られたのであろう羞恥心が半端ない。だがその反面、ニルスが助けてくれたというじんわりしみ込んでくるような堪らない嬉しさと、あの状況からこうしてすっきりした状況になるまでに自分がニルスにされたであろうことを思っての官能的な気持ちも半端ない。
「ちょ、色々耐えられない……」
「はは」
「あと何で俺は覚えてないんでしょう……」
「まあ、仕方ないよね。後でニルスに聞けば?」
「聞けるわけないでしょう……。それに聞いてニルスが説明してくれると思います?」
「ブローチ使えば」
「使いません……」
「えーせっかくなのに。だいたい旅行中は持ってたブローチ、今はどこにあるの」
「これは制服ですし」
「制服にブローチつけたら駄目なんてルールないでしょ」
「職務中手が触れることもあるんです。無差別な勢いで誰彼ともなく心読んじゃったらどうしてくれるんですか」
「大変だろうねえ」
「他人事……! あとブローチは鍵のかかる俺のロッカーの私服につけてます」
「肌身離さず持ってなさいよ。ああそうそう。本当は昨日渡そうと思ってたんだけど」
ニルスはにこにこと何かを差し出してきた。見れば小さなケースだ。
「……これは?」
「あのブローチ専用のケース。これにブローチ入れてポケットに入れてたら、俺の魔法かけてるから万が一手が当たっても心の声も聞こえないよ」
「また無駄に高等な魔法使って……」
「無駄扱いやめてね。ちゃんとエルヴィンに持っててもらいたいし、必要ないとポケットに入れておいても、いつでも不意に使いたくなったら気軽に使えるでしょ」
「気軽に使わそうとしないでください」
とはいえ、一つだけどうしても知りたいことはある。これだけはニルスに聞けるのならば聞きたい。
「だって。君がそんな勘違いしてたなんて思いもよらなくて」
「そりゃするでしょうっ? あんな苦しかったのに何もなかったみたいに楽になってて、そしておそらくはリックの寝室のリックのベッドで眠っていたんですよ俺。おまけに服まで着替えて。その上あなたが様子を窺いに入ってきた。勘違いもするでしょう?」
お互い同時に言った言葉に、お互い違和感を覚えて二人は改めて話を突き合わせていた。そしてようやく自分が盛大な勘違いをしていたとわかったエルヴィンは少しの間ベッドの布団にもぐって出てこられないほど、居たたまれなさに包まれていた。挙句、ようやく出てきたエルヴィンを見てリックが笑い出したのだ。
「しちゃうかなあ? だって俺と君はそういう関係じゃないでしょ」
「ですが俺、本当に昨日はおかしかったから、理性ぶっ飛んでやらかしたのか、と」
「あはは。何ならそういうことにしてもうしばらく様子を楽しんでもよかったね」
「よくありませんよ……! はぁ……ですが改めて、本当にご迷惑をおかけいたしました。申し訳ありません」
ため息をついた後、向かいのソファーに座っているリックに対して座ったまま頭を下げると「次謝ったら罰ゲームね」と言われた。
「いや、何でですか……」
「あの果物のこと知らないエルヴィンが謝ることなんて何一つないからだよ」
「それでもご迷惑をかけたのは事実ですから」
「ならちょっとした粗相だと思っておきなよ」
「……何かお漏らししたみたいですけど」
「あはは! お漏らしか」
「いや、笑うとこ違います」
「お漏らししても俺は怒らないから大丈夫だよ」
「いやもう、この話どこへ行く感じなんですか……」
「ふふ。とにかく、君が謝るなら俺も同じだけ、ちゃんと食べるのを止めさせられなくてごめんねって言うから」
「……もう。わかりました。では、助けてくださってありがとうございます」
「俺は何も手助けできてないよ?」
「? ですが俺の具合は完全によくなってます。あの果物の威力がどんなものかわかりませんが、さすがに一晩寝たから治ったとかじゃないですよね? そもそもぐっすり眠れるわけがない。リックが魔法でどうにかしてくださったんじゃないんですか?」
怪訝な顔でリックに言えば、一瞬ポカンとした後で「ああ、なるほど」と頷いてきた。
「君はほぼ意識、飛んじゃってたんだねえ」
「そう言いませんでした? だからてっきり理性もぶっ飛んで襲ってしまったのか、と」
「はは。じゃあ次は襲ってもらおうかな。途中から襲うのは俺になるだろうけど」
「……言ってることがわかりませんし、次がそもそもありませんが」
「残念。あとね、君を助けたのはニルスだよ」
リックの口からニルスの名前を聞いたエルヴィンは腹の奥だろうか、よくわからないがどこかが何だか妙に疼く気がした。
「ニ、ルス」
「仕事から戻ってきてね。一瞬殺されちゃうかと思ったよ」
「いやいや、あなた王子ですけど」
「君が関わっているニルスにかかったら王子だろうが王だろうが関係ないと思うよ……。まあ事情は何とか説明したし、把握したニルスが君を助けたってわけ」
ニルスが俺を助けた……。
「って、えっと……」
「君は覚えてないだろうし、俺は明確に言わないけど、でもわかるよね?」
「え? え? あ……」
「ああ、大丈夫。俺は即退散したから」
「い、いえそんな心配、は……」
ニルスが。
助けてくれた。
少し動揺したせいか、脳内に浸透するのに少々時間がかかった。だが浸透すると一気に顔が熱くなった。
「う、わ……」
そんなエルヴィンをリックは楽しそうに笑みを浮かべて見ている。
リックにも把握されているという羞恥心と、ニルスに痴態を見られたのであろう羞恥心が半端ない。だがその反面、ニルスが助けてくれたというじんわりしみ込んでくるような堪らない嬉しさと、あの状況からこうしてすっきりした状況になるまでに自分がニルスにされたであろうことを思っての官能的な気持ちも半端ない。
「ちょ、色々耐えられない……」
「はは」
「あと何で俺は覚えてないんでしょう……」
「まあ、仕方ないよね。後でニルスに聞けば?」
「聞けるわけないでしょう……。それに聞いてニルスが説明してくれると思います?」
「ブローチ使えば」
「使いません……」
「えーせっかくなのに。だいたい旅行中は持ってたブローチ、今はどこにあるの」
「これは制服ですし」
「制服にブローチつけたら駄目なんてルールないでしょ」
「職務中手が触れることもあるんです。無差別な勢いで誰彼ともなく心読んじゃったらどうしてくれるんですか」
「大変だろうねえ」
「他人事……! あとブローチは鍵のかかる俺のロッカーの私服につけてます」
「肌身離さず持ってなさいよ。ああそうそう。本当は昨日渡そうと思ってたんだけど」
ニルスはにこにこと何かを差し出してきた。見れば小さなケースだ。
「……これは?」
「あのブローチ専用のケース。これにブローチ入れてポケットに入れてたら、俺の魔法かけてるから万が一手が当たっても心の声も聞こえないよ」
「また無駄に高等な魔法使って……」
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