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第一章
全方位にナンパしてました
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周囲には何も無い空間が広がり、その中心には闇よりも暗い、まるでブラックホールのような穴が出現した。
言葉も発せられず、ただ呆然とその穴を見つめていると、暗闇の中から足跡が聞こえてくる。あきらかに『何か』がこちらに向かってやって来ているようだ。
先程の魔法陣の残渣か、金色の光がキラキラと乱舞し、こちらに向かってくる『何か』の姿を気まぐれに照らし出す。
……どうやら魔物とかの類ではなく、人の姿をした何かのようだ。
そして『ソレ』は、俺の前に姿を現した。
見た目年齢は二十二、三位…だろうか。先程霧散した光の残滓に照らされ、乱雑に見えて調和の取れた短髪は鈍く光る金の色。まるで滴り落ちる血のような、縦に瞳孔が割れた深紅の瞳。そして、均整が取れ鍛え上げられた見事な肉体が、露出の多い黒衣から惜しげもなく晒されている。
一見して分かる。人間とは明らかに違う、異質なる美貌。
「ほぉ…。お前が俺の召喚者か?」
『彼』は腕を組むと、声も出せずに膝をついている俺を見下ろし、捕食者の顔でニィッと笑った。
「これは…。すっ飛んで来てみれば、かなりの上玉だな。悪くない」
そんな台詞と共にジロジロと、それこそ全身舐め回すように見つめられる。
こんな無遠慮な視線を向けられたら、普段であるなら確実に不快感を覚えていただろう。だが現状認識が追い付いていない今現在、俺にそんな余裕は存在しなかった。
ただ「この異質なモノの正体はなんだ?」と、素朴な疑問を心の中で繰り返す。
「お前、名は?」
「え?あ…ユ、ユキヤ」
唐突に聞かれ、思わず名乗ってしまう。
すると男はほんの一瞬、驚いたように目を見開いた。まるで予想していなかったかのように。だが直ぐに双眸を細め、再度口端をつり上げた。
(……っ!!)
凶暴な笑みだったが、同時に壮絶な色気を纏って目に突き刺さるかのようで。思わず気押されたユキヤの頬が無自覚に赤く色づいてしまう。
「そうか。ではユキヤ。俺はお前が気に入った。よってお前の純潔と死んだ後の魂とを引き換えに、お前の願いをなんなりと叶えてやろう」
「……はぁ?」
一瞬、何を言われたのか理解できず、間の抜けた声を上げてしまう。
えっと…。純潔と死んだ後の魂って……。は?え?!なんじゃそりゃ!?
「む、無理ムリ!そんなもんと引き換えにするような望みなんて無いし!ってか、そもそも俺、何かを召喚しようなんてしていない!間違えたんだよ!」
「召喚していない?」
「そーだよ!だいたい、魔法陣を頭ん中で思い出して、適当な言葉を言っただけなんだって!」
だいたい、あんなデタラメな呪文でホイホイ召喚が発動するなんて、そんな事母さん一言も言ってなかったぞ!?
「……一つ聞くが、その魔法陣とはどういったものだ?」
「え?えっと…。全ての基本になっている、超簡単なやつ。円陣にでかい星が描かれてる…みたいな」
すると男は、合点がいったとばかりに頷いた。
「成る程。道理で無節操に全方位の連中を呼び寄せていた訳だ。お前、どうも無知っぽいから一つ教えてやるがな、力のある術者が呼び出す相手をイメージせずにその魔法陣を使用するって事は、『自分に興味のあるヤツなら誰でも良いからやって来い。そして契約しろ』って誘っているのと同じだぞ」
「そ……そうなんだ……?」
つまり、誰彼構わず「ねえ君、俺と付き合わない?」ってナンパしていたみたいな?
「そうだ。それゆえ、自分が望まぬ者や手に負えない強大な力を持ったヤツが召喚されてしまう事が多々ある。…例えば俺のようにな。だから力のある術者ほど、そういった馬鹿な真似はしない」
男の爬虫類のような瞳孔が細まり、深紅の瞳がギラリと光った。
異形のそれらを目にに、今度はゾクリと全身に悪寒が走る。
確かに、男がただ者でないのは見ただけで分かる。間違いなく、人外の中でも上位種だ。しかもかなり高ランクの。
自分は相当ヤバい事をしでかしたのだと、今更ながら思い知る。
――……どうしよう。契約お断りしたら、怒る……かな?
でも言わないと。契約する気なんて、俺には無いんだから。
「あの~。俺、さっきも言ったけど、別に望みとか無いから……その、契約しなくていいから、帰ってくんないかな?」
刹那、男の背後に紅い炎が噴き上がったように見えた。
「ヒッ!」
や、やっぱ怒った…?!
だが、それはほんの一瞬で、気づけば男はごく普通な様子でいる。あれ?怒ってない?
「お前、望みは無いとか言っていたが、それは嘘だな。」
「う…嘘なんかじゃ!」
確かに望みがないとは言わない。テオに惚れてる、はた迷惑な王子との決闘に勝つこと。だけど、対価として魂や身体を引き換えにするなんて冗談じゃない。
「ま、とにかく望みがなければ、魔獣どもはともかく、俺を召喚することは出来ないぞ?俺達は人間の欲望により召喚される。そして、その欲望に見合った対価を頂く種族だからな」
望みに対して対価を貰う。魔法陣から召喚され、魂と純潔を望むモノ。前世で読んだファンタジー小説とかアニメでも、今の状況と似たようなシーンがあったような、気が…する。
――それって…まさか目の前にいるこの男……いや『モノ』は……?!
ユキヤは喉をごくりと鳴らし、掠れた声で目の前の男に問うた。
「ひょっとしてあんた……“悪魔”……?」
「ほぉ…。それなりに知識はあるようだな。という訳で、正解だ『ユキヤ』」
彼…悪魔が俺の名を口にした瞬間、身体のあちこちが一斉に軋んだ。
「ツ!あ…!」
激痛に膝の力が抜け、ガクリと地面に崩れ落ちてしまう。
痛みに霞む目を必死に開け、男の顔を見上げてみれば、冷たい美貌が俺を見下ろしていた。
言葉も発せられず、ただ呆然とその穴を見つめていると、暗闇の中から足跡が聞こえてくる。あきらかに『何か』がこちらに向かってやって来ているようだ。
先程の魔法陣の残渣か、金色の光がキラキラと乱舞し、こちらに向かってくる『何か』の姿を気まぐれに照らし出す。
……どうやら魔物とかの類ではなく、人の姿をした何かのようだ。
そして『ソレ』は、俺の前に姿を現した。
見た目年齢は二十二、三位…だろうか。先程霧散した光の残滓に照らされ、乱雑に見えて調和の取れた短髪は鈍く光る金の色。まるで滴り落ちる血のような、縦に瞳孔が割れた深紅の瞳。そして、均整が取れ鍛え上げられた見事な肉体が、露出の多い黒衣から惜しげもなく晒されている。
一見して分かる。人間とは明らかに違う、異質なる美貌。
「ほぉ…。お前が俺の召喚者か?」
『彼』は腕を組むと、声も出せずに膝をついている俺を見下ろし、捕食者の顔でニィッと笑った。
「これは…。すっ飛んで来てみれば、かなりの上玉だな。悪くない」
そんな台詞と共にジロジロと、それこそ全身舐め回すように見つめられる。
こんな無遠慮な視線を向けられたら、普段であるなら確実に不快感を覚えていただろう。だが現状認識が追い付いていない今現在、俺にそんな余裕は存在しなかった。
ただ「この異質なモノの正体はなんだ?」と、素朴な疑問を心の中で繰り返す。
「お前、名は?」
「え?あ…ユ、ユキヤ」
唐突に聞かれ、思わず名乗ってしまう。
すると男はほんの一瞬、驚いたように目を見開いた。まるで予想していなかったかのように。だが直ぐに双眸を細め、再度口端をつり上げた。
(……っ!!)
凶暴な笑みだったが、同時に壮絶な色気を纏って目に突き刺さるかのようで。思わず気押されたユキヤの頬が無自覚に赤く色づいてしまう。
「そうか。ではユキヤ。俺はお前が気に入った。よってお前の純潔と死んだ後の魂とを引き換えに、お前の願いをなんなりと叶えてやろう」
「……はぁ?」
一瞬、何を言われたのか理解できず、間の抜けた声を上げてしまう。
えっと…。純潔と死んだ後の魂って……。は?え?!なんじゃそりゃ!?
「む、無理ムリ!そんなもんと引き換えにするような望みなんて無いし!ってか、そもそも俺、何かを召喚しようなんてしていない!間違えたんだよ!」
「召喚していない?」
「そーだよ!だいたい、魔法陣を頭ん中で思い出して、適当な言葉を言っただけなんだって!」
だいたい、あんなデタラメな呪文でホイホイ召喚が発動するなんて、そんな事母さん一言も言ってなかったぞ!?
「……一つ聞くが、その魔法陣とはどういったものだ?」
「え?えっと…。全ての基本になっている、超簡単なやつ。円陣にでかい星が描かれてる…みたいな」
すると男は、合点がいったとばかりに頷いた。
「成る程。道理で無節操に全方位の連中を呼び寄せていた訳だ。お前、どうも無知っぽいから一つ教えてやるがな、力のある術者が呼び出す相手をイメージせずにその魔法陣を使用するって事は、『自分に興味のあるヤツなら誰でも良いからやって来い。そして契約しろ』って誘っているのと同じだぞ」
「そ……そうなんだ……?」
つまり、誰彼構わず「ねえ君、俺と付き合わない?」ってナンパしていたみたいな?
「そうだ。それゆえ、自分が望まぬ者や手に負えない強大な力を持ったヤツが召喚されてしまう事が多々ある。…例えば俺のようにな。だから力のある術者ほど、そういった馬鹿な真似はしない」
男の爬虫類のような瞳孔が細まり、深紅の瞳がギラリと光った。
異形のそれらを目にに、今度はゾクリと全身に悪寒が走る。
確かに、男がただ者でないのは見ただけで分かる。間違いなく、人外の中でも上位種だ。しかもかなり高ランクの。
自分は相当ヤバい事をしでかしたのだと、今更ながら思い知る。
――……どうしよう。契約お断りしたら、怒る……かな?
でも言わないと。契約する気なんて、俺には無いんだから。
「あの~。俺、さっきも言ったけど、別に望みとか無いから……その、契約しなくていいから、帰ってくんないかな?」
刹那、男の背後に紅い炎が噴き上がったように見えた。
「ヒッ!」
や、やっぱ怒った…?!
だが、それはほんの一瞬で、気づけば男はごく普通な様子でいる。あれ?怒ってない?
「お前、望みは無いとか言っていたが、それは嘘だな。」
「う…嘘なんかじゃ!」
確かに望みがないとは言わない。テオに惚れてる、はた迷惑な王子との決闘に勝つこと。だけど、対価として魂や身体を引き換えにするなんて冗談じゃない。
「ま、とにかく望みがなければ、魔獣どもはともかく、俺を召喚することは出来ないぞ?俺達は人間の欲望により召喚される。そして、その欲望に見合った対価を頂く種族だからな」
望みに対して対価を貰う。魔法陣から召喚され、魂と純潔を望むモノ。前世で読んだファンタジー小説とかアニメでも、今の状況と似たようなシーンがあったような、気が…する。
――それって…まさか目の前にいるこの男……いや『モノ』は……?!
ユキヤは喉をごくりと鳴らし、掠れた声で目の前の男に問うた。
「ひょっとしてあんた……“悪魔”……?」
「ほぉ…。それなりに知識はあるようだな。という訳で、正解だ『ユキヤ』」
彼…悪魔が俺の名を口にした瞬間、身体のあちこちが一斉に軋んだ。
「ツ!あ…!」
激痛に膝の力が抜け、ガクリと地面に崩れ落ちてしまう。
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