103 / 194
第四章
名付け
しおりを挟む
扉の中は、淡く光る空間が広がっていた。
その中を、ザビア将軍は迷う事無く進んで行き、俺はその後をついて歩く。
ザビア将軍が歩きながら教えてくれたところによると、国内に限り、この空間を使って好きな所に行く事が出来るのだそうだ。そして今向かっているのは、ザビア将軍だけが知る、秘密の隠れ家らしい。
「グリフォンって、凄く魔力が強いんだな」
よく分からないが、こんな空間魔法を造れるなんて本当に凄い。まるでどこでもドアではないか。機会があれば、自分も是非とも習得してみたい。
『ふん。いくら幻獣の中でも上位種とはいえ、グリフォンごときにそこまでの力は普通無い。多分だが、信仰の対象として長年この国の人間どもに崇め奉られた結果、神霊系に近い霊力を得るに至ったんだろう』
「成程。祈りの力…ってやつか」
そんな神霊系に近い幻獣に呪いをかけるなんて、オンタリア王国には相当強力な術者がいるに違いない。
ウォレンの代わりに魅了師として仕事をしに来た筈が、なんだかよく分からないままこの国を救う事になってしまってしまったのだが。そんな術者と自分のような素人が戦って、果たして勝てるのだろうか。
『いや、それよりもまずは、グリフォンだなぁ』
俺が現れたら、敵と認定して攻撃してくるかもしれない。
いくら助けるから信じてくれって言ったところで、俺は国王に雇われた魅了師なのだから、当然信用なんてしてくれる訳がない。
ザビア将軍が説得してくれたって、俺が魅了の力で将軍をタラシ込んだって思われるよな、絶対に。
いくら手負いだとは言え、最強クラスの幻獣。こちらも少しでも戦力を増強しておく必要がある。
「シルフィ」
『なーに?マスター』
「お前に名を付けてやる。『フウ』というんだ。どうかな?」
『フウ?フウ…それがボクのなまえ…!ヤッター!ありがと、マスター!!』
シルフィが大はしゃぎで俺の周りを飛び回る。良かった、気に入ってくれたようだ。
…ん?あれ?何かシルフィ…いや、フウの奴、身体が少し大きくなった…?
『ねぇ、マスター。フウって名前、意味があるの?』
おお、何か喋り方もカタコトじゃなく、しっかりしてきた。これが進化ってやつなのかな?
「うん、俺の故郷で『風』って意味。お前は風の精霊だからな」
ちょっと安直かなとも思ったけど、名前考えるの苦手だし、ちゃんと意味があるからいいかなって思ったんだ。
『おいユキヤ。その『故郷』とやらは、界渡りする前の世界の事か?』
「…うん。まぁな」
あ、ベル。そこんとこ忘れてくれていなかったか。
『そこらへん、もっと詳しく聞かせろ』
「なんで?」
『お前の事で、俺が知らない事があるのは不愉快だ』
なんという俺様。いいじゃん別に。秘密の一つや二つあったって。
「後でな。ここではちょっと…。落ち着いたら話すよ」
まあ、ベルだったら、俺が転生者だって事を秘密にしておく必要もないしな。それに『界渡り』とか『転生者』について、俺自身も詳しく知りたいし。
「黒の魅了師殿」
ザビア将軍が立ち止まる。どうやら聖獣の所に到着したようだ。見れば俺達の前には、再び大きな扉が聳え立っていた。
ザビア将軍が表情を引き締め一呼吸置くと、意を決した様に扉に手を当てた。
その中を、ザビア将軍は迷う事無く進んで行き、俺はその後をついて歩く。
ザビア将軍が歩きながら教えてくれたところによると、国内に限り、この空間を使って好きな所に行く事が出来るのだそうだ。そして今向かっているのは、ザビア将軍だけが知る、秘密の隠れ家らしい。
「グリフォンって、凄く魔力が強いんだな」
よく分からないが、こんな空間魔法を造れるなんて本当に凄い。まるでどこでもドアではないか。機会があれば、自分も是非とも習得してみたい。
『ふん。いくら幻獣の中でも上位種とはいえ、グリフォンごときにそこまでの力は普通無い。多分だが、信仰の対象として長年この国の人間どもに崇め奉られた結果、神霊系に近い霊力を得るに至ったんだろう』
「成程。祈りの力…ってやつか」
そんな神霊系に近い幻獣に呪いをかけるなんて、オンタリア王国には相当強力な術者がいるに違いない。
ウォレンの代わりに魅了師として仕事をしに来た筈が、なんだかよく分からないままこの国を救う事になってしまってしまったのだが。そんな術者と自分のような素人が戦って、果たして勝てるのだろうか。
『いや、それよりもまずは、グリフォンだなぁ』
俺が現れたら、敵と認定して攻撃してくるかもしれない。
いくら助けるから信じてくれって言ったところで、俺は国王に雇われた魅了師なのだから、当然信用なんてしてくれる訳がない。
ザビア将軍が説得してくれたって、俺が魅了の力で将軍をタラシ込んだって思われるよな、絶対に。
いくら手負いだとは言え、最強クラスの幻獣。こちらも少しでも戦力を増強しておく必要がある。
「シルフィ」
『なーに?マスター』
「お前に名を付けてやる。『フウ』というんだ。どうかな?」
『フウ?フウ…それがボクのなまえ…!ヤッター!ありがと、マスター!!』
シルフィが大はしゃぎで俺の周りを飛び回る。良かった、気に入ってくれたようだ。
…ん?あれ?何かシルフィ…いや、フウの奴、身体が少し大きくなった…?
『ねぇ、マスター。フウって名前、意味があるの?』
おお、何か喋り方もカタコトじゃなく、しっかりしてきた。これが進化ってやつなのかな?
「うん、俺の故郷で『風』って意味。お前は風の精霊だからな」
ちょっと安直かなとも思ったけど、名前考えるの苦手だし、ちゃんと意味があるからいいかなって思ったんだ。
『おいユキヤ。その『故郷』とやらは、界渡りする前の世界の事か?』
「…うん。まぁな」
あ、ベル。そこんとこ忘れてくれていなかったか。
『そこらへん、もっと詳しく聞かせろ』
「なんで?」
『お前の事で、俺が知らない事があるのは不愉快だ』
なんという俺様。いいじゃん別に。秘密の一つや二つあったって。
「後でな。ここではちょっと…。落ち着いたら話すよ」
まあ、ベルだったら、俺が転生者だって事を秘密にしておく必要もないしな。それに『界渡り』とか『転生者』について、俺自身も詳しく知りたいし。
「黒の魅了師殿」
ザビア将軍が立ち止まる。どうやら聖獣の所に到着したようだ。見れば俺達の前には、再び大きな扉が聳え立っていた。
ザビア将軍が表情を引き締め一呼吸置くと、意を決した様に扉に手を当てた。
5
あなたにおすすめの小説
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる