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第四章
王宮への帰還
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グリフォンの言葉に、俺はハッとする。
そうだ。グリフォンは自分自身よりも、大切に思っている者達…シェンナやザビアを助けてくれた礼を俺にしたかったのだ。
その感謝の気持ちを軽々しいと突き返すなんて、それは確かに酷い侮辱だろう。
「…うん、分かった。これは貰っておくよ。…有難う」
俺は神妙に頷くと、ローブの内側に貰った羽を仕舞う。実はこのローブも魔法アイテムだった。
どうやらマジックボックス機能があるらしく、収納したいものを入れるとどこかしらに消えてしまう。そして取り出そうとすれば出て来るのだ。
なんでそれを知ったかと言えば、ベルが俺の服の中に入って気が付いたからである。…今度密かに、ベルを収納してみようかと目論んでいるのは内緒だ。
ふと視線を感じ、振り向くと、シェンナ姫とザビア将軍がキラキラした目で俺を見ていた。
「素晴らしいですわ!聖獣様が外から来られた方に『印』をお授けになるなんて!ああ…お兄様、きっと天がわたくし達の現状と行く末を憂い、わたくし達に加護をお授けになったのですわ!」
「ああ、その通りだ!きっと我が国も聖獣様も救われる!」
ちょっと待て!止めてくれ!なんなんだ、その過剰な期待は!?俺はしがない魅了師見習い…ですらない、ほぼ普通の一般人なんだってば!
『お前が一般人なら、他の連中は塵芥だな』
ベルの訳の分からないツッコミに反論する余裕もなく、彼らに必死に「違いますから!俺は別に、大した事ないですから!」と否定するも、「なんと謙虚な…!」と、逆に更に尊敬の眼差しを向けられる結果となってしまったのだった。…解せぬ。
◇◇◇◇
「お…おお…!さ、流石は世に名高い黒の魅了師殿!まさか…まさかこの短時間で、こうもあっさりと依頼を達成されるとは…!」
感動に震えている王様。その前には、俺とザビア将軍、そしてグリフォンとシルフィ姫が勢ぞろいしていた。ちなみにここは、グリフォンが住まう神殿である。
俺が2人(1人と1匹?)を無事捕らえた事をザビア将軍が王様に報告し、王様と側近がザビア将軍を伴いて慌てて駆け付けて来たという訳だ。
実はあの後、ザビア将軍とグリフォンは話し合いをした。
何を話し合ったのかといえば、俺の(というか、ウォレンさんの)『血の誓約』について。
この誓約が不履行になると、誓約を破った側が酷いペナルティを負ってしまう。自分達を救おうとしてくれている者に、そのようなペナルティを負わせる事は出来ない。…って事らしいんだけど、いやいや、ペナルティを負うのはウォレンさんだから、俺は別にどうでもいいんですけど。
そんな俺の心の声は当然無視され、話し合いの結果、黒の魅了師がグリフォンとシェンナ姫を捕らえた事にして一旦王宮に戻ればいい。
そうすれば、俺ことウォレンさんが王様と交わした誓約は無事成し遂げられた事になるから。という事で落ち着いた。
そもそもグリフォンの呪いを解く為には、まず敵陣であるオンタリア王国に潜入しなくてはならない。ならば輿入れを利用し、堂々と乗り込めばいいじゃないか…とまあ、そういう話になったのだ。
「黒の魅了師殿。…その、姫と聖獣様は大丈夫なのでしょうか?」
王は自分に視線を合わすことなく、高御座で寄り添っているシェンナ姫とグリフォンを気遣わしげに見やる。
「ええ。ですが今、彼らは魅了の力で私の言う事しか聞きません。元の状態に戻るには、魅了の力を解く必要があります」
…なんて。口から出まかせ言ってるけど、そもそも一旦魅了した相手って、元に戻す事が出来るのだろうか?
そんな疑問を乗っけつつ、ベルの方へと視線を送るが、蛇のくせに欠伸をしていた。
…って、目をつぶって顔を背けた!普段は要らん事察して首絞めたりぶっ叩いたりしてくるくせしやがって、俺が聞きたい時には知らんぷりか。ふざけんなよこいつ!
そうだ。グリフォンは自分自身よりも、大切に思っている者達…シェンナやザビアを助けてくれた礼を俺にしたかったのだ。
その感謝の気持ちを軽々しいと突き返すなんて、それは確かに酷い侮辱だろう。
「…うん、分かった。これは貰っておくよ。…有難う」
俺は神妙に頷くと、ローブの内側に貰った羽を仕舞う。実はこのローブも魔法アイテムだった。
どうやらマジックボックス機能があるらしく、収納したいものを入れるとどこかしらに消えてしまう。そして取り出そうとすれば出て来るのだ。
なんでそれを知ったかと言えば、ベルが俺の服の中に入って気が付いたからである。…今度密かに、ベルを収納してみようかと目論んでいるのは内緒だ。
ふと視線を感じ、振り向くと、シェンナ姫とザビア将軍がキラキラした目で俺を見ていた。
「素晴らしいですわ!聖獣様が外から来られた方に『印』をお授けになるなんて!ああ…お兄様、きっと天がわたくし達の現状と行く末を憂い、わたくし達に加護をお授けになったのですわ!」
「ああ、その通りだ!きっと我が国も聖獣様も救われる!」
ちょっと待て!止めてくれ!なんなんだ、その過剰な期待は!?俺はしがない魅了師見習い…ですらない、ほぼ普通の一般人なんだってば!
『お前が一般人なら、他の連中は塵芥だな』
ベルの訳の分からないツッコミに反論する余裕もなく、彼らに必死に「違いますから!俺は別に、大した事ないですから!」と否定するも、「なんと謙虚な…!」と、逆に更に尊敬の眼差しを向けられる結果となってしまったのだった。…解せぬ。
◇◇◇◇
「お…おお…!さ、流石は世に名高い黒の魅了師殿!まさか…まさかこの短時間で、こうもあっさりと依頼を達成されるとは…!」
感動に震えている王様。その前には、俺とザビア将軍、そしてグリフォンとシルフィ姫が勢ぞろいしていた。ちなみにここは、グリフォンが住まう神殿である。
俺が2人(1人と1匹?)を無事捕らえた事をザビア将軍が王様に報告し、王様と側近がザビア将軍を伴いて慌てて駆け付けて来たという訳だ。
実はあの後、ザビア将軍とグリフォンは話し合いをした。
何を話し合ったのかといえば、俺の(というか、ウォレンさんの)『血の誓約』について。
この誓約が不履行になると、誓約を破った側が酷いペナルティを負ってしまう。自分達を救おうとしてくれている者に、そのようなペナルティを負わせる事は出来ない。…って事らしいんだけど、いやいや、ペナルティを負うのはウォレンさんだから、俺は別にどうでもいいんですけど。
そんな俺の心の声は当然無視され、話し合いの結果、黒の魅了師がグリフォンとシェンナ姫を捕らえた事にして一旦王宮に戻ればいい。
そうすれば、俺ことウォレンさんが王様と交わした誓約は無事成し遂げられた事になるから。という事で落ち着いた。
そもそもグリフォンの呪いを解く為には、まず敵陣であるオンタリア王国に潜入しなくてはならない。ならば輿入れを利用し、堂々と乗り込めばいいじゃないか…とまあ、そういう話になったのだ。
「黒の魅了師殿。…その、姫と聖獣様は大丈夫なのでしょうか?」
王は自分に視線を合わすことなく、高御座で寄り添っているシェンナ姫とグリフォンを気遣わしげに見やる。
「ええ。ですが今、彼らは魅了の力で私の言う事しか聞きません。元の状態に戻るには、魅了の力を解く必要があります」
…なんて。口から出まかせ言ってるけど、そもそも一旦魅了した相手って、元に戻す事が出来るのだろうか?
そんな疑問を乗っけつつ、ベルの方へと視線を送るが、蛇のくせに欠伸をしていた。
…って、目をつぶって顔を背けた!普段は要らん事察して首絞めたりぶっ叩いたりしてくるくせしやがって、俺が聞きたい時には知らんぷりか。ふざけんなよこいつ!
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