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第六章

抗議

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『これ、もしかしなくても俺の『魅了』対策?』

『ささやか過ぎて、クソ程も役に立ちゃしねえがな』

あ、やっぱりか。そうだよな、魔鳥スラッシュで俺が居るのを知ってたんだから、万が一侵入した際のプランも織り込んでて当たり前だ。

火竜サラマンダー達は、整備・・が整うまで入国は出来かねる。故に、ここより先は輿にて王宮までご案内いたす」

バティルは俺を招き入れる事に不本意そのものって顔で、異論は認めないと言外に含ませてるけど、これに対しては「そうだろうな」って軽く頷いておいた。

なんせ、敵認定の俺に使役された百以上の火竜サラマンダーだ。ホイホイ招き入れるなんて愚の骨頂だし、俺でも断固拒否するよ。

「では『特使』殿。火竜サラマンダーに姫達を降ろすように命令を」

そして待機命令も忘れずにと言うバティルに敢えて返事をせず、俺は後ろを振り返ると先頭のボス火竜サラマンダーに手招きした。

「こっちにおいで」

大人しく「待て」をしていたボス火竜サラマンダーは、喜び勇んで俺に駆け寄って(正しくは這い寄って)きた。しかも、振動を全く起こさず乗っている姫達にきちんと配慮し、尚且つ言ってないのに「伏せ」をするコイツはとっても可愛い。

『う~ん……。こいつ、このままペットとして連れて帰れないだろうか……』

そんな風に悩んでいたら、首に巻き付いていたベルの身体がギュ~~と締った。
慌てて『嘘!冗談!!』と心の中で叫んだら、途端に締め付けが緩みました。……今度絶対〆よう。

気を取り直し、俺の前で伏せをする火竜サラマンダーの頭を優しく撫でてやる。

「よしよし、良い子だな。今夜は外で仲間と待っていてもらうけど、大人しくしててくれよ」

俺の声掛けにボス火竜サラマンダーはグルグル鳴いた。まるで「畏まりました」と言っているみたいだけど、実際そうなんだろう。

「ザビア将軍。これから入国するから、姫と侍女達を下ろしてくれるかな?」

「は、はい!」

「と言うわけだから、動かないでそのままでいてくれ」

言い聞かせながら、今度は頬あたりを撫でてやれば、気持ちよさそうに目を細めて尾っぽをブンブン振る。駆け寄ってきた時といい今といい、巨大イグアナな見た目なのに子犬パピーを彷彿とさせるコイツに、更に愛着がわいてしまった。

「ふふ、可愛いなお前」

微笑んで撫で続けていると、ボス火竜サラマンダーはグルゥと一声鳴くと俺に顔を向け、ぺろりと舌先で顔(仮面)を舐めてきた。う~ん、やっぱり犬だ。本当に可愛い。

シャーーッ!!

ガァァーーッ!!

その時、大きな威嚇音と濁音が二つ同時に空気を震わせた。威嚇音は耳のすぐ近くから、そして濁音は前方からだ。

ボス火竜サラマンダー黒蛇ベルと大カラス両方の鳴き声(?)に明らかな怯えを見せ、尻尾を股の内に挟んでしまった。やっぱり犬っぽい…いやいや、それよりも。

「ちょ…煩いぞベル!火竜こいつを怯えさせんなよ!」

差し詰め「馴れ馴れしく俺のモンに媚び売ってんじゃねぇ!!」と喚いてるのだろう。

まだシャーシャーとボス火竜サラマンダーを威嚇してるベルの頭を、俺はぺちっと軽く叩いた。即さま仕返しとばかりに尻尾で顔を叩かれたけど。……まあ、首を絞められるよりはマシかな。

やれやれ、いつも通り安定の狭量さを発揮する大悪魔ベリアル様だ。発せられたもう一つの鳴き声の方を見ると、杖の上に停まっている使い魔に対し、バティルが念話で何か文句を言っている。

『どうやらあの大鴉使い魔、俺が悠長にしてるのが気に食わなくて急かしたんだな』

『…舐めくさりやがって、ドグサレが…!!』

地を這うような低い声で毒づくベルに苦笑が漏れる。何だかオレ様っぷりがベルに似てるな、なんて言ったら『ざけんな!!』とめっちゃ強烈な尻尾ビンタが来た。いてぇ!!

兎に角、俺はボス火竜サラマンダーから降りた姫達と共にオンタリアオ王国へと足を踏み出したのだった。

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