Axis of Fate〜大樹物語〜

たみぽん

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第2話「ラウルス遺跡」

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その頃逃げて行った少女はというと、建物のエントランス近くまで来ていた。

「はぁ…はぁ…出口だ」

大きな扉が見えてもう直ぐ出口だと思ったその時。

ドオーンっ!

「うわぁっ!」

大きな音を立てて高さ二メートルぐらいの巨大な蜘蛛のモンスターが少女の前へと現れた。
それに驚いた少女は後ろへとしりもちをついてしまう。

「キシャーァッ!」

自分の縄張りに入ってきた事を怒っているのか蜘蛛が複数の目をギラリと光らせ、少女を見詰め雄叫びをあげた。

「ここはキミの居場所なんだね…すぐに出ていくから…っ!」

だが女の子は恐怖に駆り立たれ、立ち上がることさえままならない。

「ギィっ!」

すると、蜘蛛の前脚が少女へと襲い掛かる。

「あ…!」

女の子は両手で顔を覆い目を瞑り、衝撃が来るのを覚悟した。
 
「?」
 
だが、思っていた衝撃は来ず、彼女の上を閃光が通り過ぎ蜘蛛に貫いた後、炎の球が直撃し爆発する。

「!!…」

その衝撃により巨大蜘蛛は仰向けにひっくり返っていた。
そして少女の前に現れたのは先ほど助けてくれた女性と、自分に剣を向けてきた男…ルアとアルファだった。

「あんた分かってるでしょうね!」
「あぁ…分かってるさ!」

2人は言い合いながらも少女を庇う様に前へと立ち蜘蛛から女の子を隔てる。

「お姉ちゃん…お兄さん…?」
「大丈夫よ。守ってあげるからね」

呆気にとられた顔で小さく呟く少女に、ルアがにこりと笑い言う。

「…来るぞ」
「えぇ、ここからは私達が相手よ!」

体勢を立て直した蜘蛛の様子にアルファが警告を発する。

「…ギ ギギぃ…」

いきなり現れ攻撃を受けた巨大蜘蛛は二人を警戒してか、なかなか動こうとはしない。

「私が詠唱するから、あんたはいつもの様に…」
「ああ、分かってる。俺が前衛でこいつの攻撃を防ぎながら戦う。いつもの作戦だな」

その様子にルアとアルファは余裕で作戦を話し合う。

「分かってるならさっさと配置についてよね」
「うるせえ。さっさと詠唱しやがれ」

ルアの言葉にそう言い返すと剣を構えて蜘蛛との間合いを詰める。距離を詰めてきたアルファに対し、蜘蛛は前脚を振りかざす。

「ギィー」
「はあっ」

アルファの剣が太く長い前腕を受け止めはじき返すと、今度は糸を吹き出す。

「そう簡単に捕まるかよ!」

蜘蛛から瞬時にバックステップで間合いを取り糸の攻撃を避ける。

「ふんっ」

一気に間合いに入ると剣を振るい蜘蛛の脚を一本、切り落とす…

「ギシャーっ!」

その攻撃に蜘蛛は悲鳴をあげた。

「…我願うは炎精の戯れ!」

詠唱を終えたルアが右手を掲げると蜘蛛の下に魔法陣が現れ、炎が渦巻き蜘蛛を飲み込んだ。

「ギィイ!?」

その攻撃に相手は苦し気に声で悶えた。

「やっぱりデカかろうと虫は虫だ。火属性に弱いみたいだな」
「そうね。そんじゃ、この調子でどんどん行くわよ!」

アルファの言葉に彼女も相槌を打つと再び意識を集中させ詠唱を開始する。

「はあ!やっ!」

三連続で斬りつけてくるアルファの攻撃を耐えた蜘蛛は鋭利な前爪で彼を切り裂こうとする。

「ギィー…キシャアアッ!」
「っと。喰らうかよ」

ブクブク…
その攻撃を避け後ろへ飛び退けるている彼へと蜘蛛は口元をもごもごさせていた。

「アルファ危ない!」

異変に気づいたルアが大きな声をあげて伝える。

フゥッ

が、紫の毒液を吐き出した蜘蛛の攻撃を着地と同時に受け、避けきれずにアルファは毒液を顔に受けてしまう。

「ぐっ…」
「アルファ!」
「お兄さん!」

一瞬ふらつき、つらそうな表情をする彼の様子にルアと少女が叫んだ。袖で顔を拭い、幸い目には入らなかったため視界は大丈夫だった。口に入ったものは唾と共にすぐに吐き出した。

「妖精の息吹よ…」
「ルアなに回復魔法しようとしてんだ!?さっさと片付けるぞ!」

回復魔法を詠唱しようとする彼女へとアルファは怒る。

「でも、回復しないと!」

それにルアが驚いて言う。

「これくらい平気だ!こいつを倒すのが先だ!」
「もう…分かったわよ。でも無茶しないでよね」

彼の言葉に溜息を吐くとそう言って詠唱を組み直す。

「ああ。ここからだ」

アルファは言うと詠唱を開始した。

「突き上げろ、大地の牙!」

剣を逆手に持ち直すと地面へと突き刺した。
すると蜘蛛の下から岩柱が発生し、その巨体を大きく浮かす。

「光よ一条の光となりて彼の者を目指せ!」

それと同時に詠唱を終えたルアの閃光が再び体を貫いた。

「ギャアっ」

攻撃を受けながらも着地した蜘蛛はフラフラとしている。

「これで最期だ!喰らいやがれ!」

ここだとばかりにアルファが風の力を最大限に込めた掌底を蜘蛛に喰らわす。
相手を浮き上がらせエントランスの扉ごと共に吹き飛ばした。
そして巨大な蜘蛛の身体は黒い塵となって消え去っていった。

「はぁ…はぁ…くっ」

息を切らしたアルファは毒が身体に回りだんだんと意識が遠のいてその場へと座り込んでしまう。

「アルファ!」
「お兄さん…大丈夫なの?」

慌ててアルファの下へと駆け寄るルアの後から遅れてやって来た少女が心配そうに尋ねる。

「大丈夫。疲れて倒れちゃっただけよ。ここじゃいつ魔物に襲われるか分からないから、どこか別の場所に連れて行って休ませないとね」

毒が回って倒れたと知れば少女が不安がると思い、彼女はそう言って安心させるとアルファを抱えようとする。
しかし、ルアでは身体の大きい彼を抱えての移動が難しいので、この建物の中にある使えそうな一室を探し、そこに彼を寝かせることにしたのだった。
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