上 下
127 / 505
初めての旅 〜天空のダンジョン〜

163

しおりを挟む
 ダンジョン横のテントに連れて来られたイオリは報告をしていた。

 室内や洞窟での魔獣の種類や、トラップの事、ガーゴイルの事、そしてスカイヤの事。

「ワイバーンの倒した数で次へ進む階層が違う?
 興味深い・・・。時々、その様な報告もありますが実際話を聞いたのは初めてです。」

「ただ、最後のは気分屋です。

 勝負をしてくれない事もあるかと思います。
 その時の対処法は分かりません。」

 ギルド協会員は頷いた。

「あくまでも、この情報は攻略者の善意でお聞きしているもので、本来は当事者がクリアしていく問題です。
 ギルドとしても、全部公開する訳ではないんです。
 攻略者が現れた今、いつダンジョンが消滅するか分かりません。
 今すぐなのか、100年先か・・・。

 皆さん、カードをお願いします。
 情報を入力しましょう。」

 イオリはカードを差し出しながら職員に聞いた。

「それで、この子を従魔に加えたので登録をお願いします。」

 職員はソルを見て微笑むとイオリのカードに記載した。

「従魔に関しては、ここでは仮登録しかできません。
 街に行き、ギルドで本登録をして下さい。  
 可愛い、鳥を従魔にしましたね。」

「あっ、フェニックスだそうです。」

「そうですか、フェニック・・・ス?」

 職員の手が止まり、ギコギコとソルとイオリを見比べる。

「!!!!それは!
 大きな声で言ってはいけませんよ!
 その子がどこぞの貴族にでも狙われかねません!
 何せ、伝説では体が指一本になろうとも復活させる事が出来るそうです。

 勿論、眉唾なのは分かっていますが危険です。
 特に本登録するまでは大事になさって下さい!
 次の街はどちらです?」

 職員の剣幕に、やはりソルは企画外の存在なのだと理解した。
 恐らく、この職員は良い人なのだろう。
 警告してくれているのだから・・・。
 ゼン視線を送ると警戒しながらもコクっと頷いた。

 子供達はソルが心配なのか、固まって守る様にしている。

「次はアンティティラに向かうつもりです。」

 職員は頷いてイオリ達にカードを返した。

「アンティティラの冒険者ギルドのギルドマスター・ヨルマ様に連絡しておきましょう。
 街に着いたらすぐにギルドへ向かってください。

 基本的にダンジョン攻略者は英雄で尊敬されるものですが、中にはダンジョン攻略後の宝を狙う者もいます。
 その子だけではありません、ダンジョンで手に入れたありとあらゆる物が宝です。
 お気をつけて・・・。」

 男性の忠告に耳をかそうとイオリは決めた。何よりも安全な旅が望ましい。

「ご親切に有難うございました。
 肝に命じます。」

 そこに、別の職員が顔を覗かせた。

「おい!ルビウス終わったか?
 君たちとダンジョンで会ったと言う冒険者パーティーが挨拶したいと言っているが?」

「はい。行きます!」

 イオリは受付をしてくれたギルド職員に礼を言い、席を立った。



「あっ。レンさん!御無事で何よりです。」

 ダンジョン攻略者が現れ、それが若者だと知り集まった冒険者達は騒然とした。

「やっぱり!イオリ達だったか!
 ほらな!リーダー言ったろ!
 コイツはやりそうだって!!」

 レンの腕を肩に担いだリーダーの男が驚いた顔をしていた。

「あの、ワイバーンの群れを抜けたのか?!
 いや、恐れ入った・・・Sランクとは聞いたが信じられなかった。」

 イオリ達はニコニコ笑った。

 レンは恥ずかしそうにイオリへ笑顔を向けた。

「イオリのお陰で命があるって聞いた。
 有難うな。命の恩人だ。
 何か礼をしたいが・・・。」

「いえ!リーダーさんにも言いましたが、お互い様です。
 もし、イルツクに行く事があったら宜しくお願いします。

 他にもお話したいのは山々ですが、すぐに出発しようと思います。」

 リーダーは理解して頷いた。

「その方が良いだろう。
 俺たちもワイバーンの所までに集めたお宝があるからな、すぐにポーレットに向かう事にする。」

「それなら、冒険者ギルドでイオリの名前を出して下さい。
 受付にラーラさんと言う人がいます。
 しっかりした優しい人ですよ。」

「泊まるなら“日暮れの暖炉”がいいよ!」

 すかさずスコルが宣伝するとレン達は苦笑していた。

「そうする事にしよう。お前らも気をつけてな。」

 お互い握手をすると馬車置き場に向かった。

 腰バックから馬車と魔法のテントを出すと子供達に指示をした。

「スコル!パティ!馬車の中にテントを張って。
 すぐに出発するよ!」

「「了解。」」

 イオリは大きくなったアウラにハーネスを着けながら、ゼンとアウラに頼んだ。

「さっき聞いた通りだよ。
 アンティティラまで気を抜けないかもしれない。
 2人が頼りだよ。頼んだよ。」

『任せて!フェニックスと言ってもソルはまだ生まれたばかりだからボク達が守るよ!!』

 ゼンの言葉に同意する様にアウラは鼻息を荒くした。

「イオリ。準備できた!」

 スコル達が顔を覗かせるとイオリはソルをナギに託して荷台に乗せた。

「3人はテントに入ってソルを守ってて。 
 一気にアンティティラへ向かうよ。
 ソルが聖水を飲みたがったら教えて。
 スコル、頼んだよ。」

「「「了解!」」」

 子供達がテントに入った事を確認すると、イオリとゼンは馬車に飛び乗りアウラに合図を送った。

 ポーレットへ向かうレン達に会釈をするとイオリ達はダンジョンを後にした。


 
 イオリ達が出発をした後、ダンジョンで待機をしていた冒険者達は攻略者が現れ活気に沸いた。
 喜ぶ者や悔しがる者、様々だったがその中には良からぬ者も出現する。
 
 イオリやレン達の後をコソコソと追う、冒険者達を確認した冒険者ギルド協会の職員たちは溜息を吐きながら、ポーレットとアンティティラへ連絡をしたのであった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】転生後も愛し愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:858

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:626pt お気に入り:449

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:3,012

王妃はわたくしですよ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7,328pt お気に入り:731

催眠アプリでエロエロライフ

BL / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:628

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。