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初めての旅 〜アンティティラ〜

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 ヒューゴとニナの兄妹は朝食に出した味噌汁も気に入ってくれたのかニコニコ食べてくれていた。
 これは益々、鰹節を手に入れたいところだ。

『◯☆♪で※□◎∞♪ね?』

「ゼン・・・。飲み込んでから話な。
 なに言ってるか分からないよ。」

 イオリが苦笑するとゼンはゴクンっと飲み込むと言った。

『ダグスクには真っ直ぐ行く?
 ちょっと先にゴブリンの集落がありそうだよ。
 沢山いるみたい。行く?』

 イオリはヒューゴと顔を合わせた。
 未熟なイオリでさえも、ゴブリンが集落を作る事で一般人が被害に合う危険性が高くなる事は知っている。
 基本的に進んで魔獣狩りをしないイオリはヒューゴに意見を求めた。

「うーん。ゴブリンとは言え集団で襲われると難しいからな。
 ダグスクの道すがらなのか?」

『そうだね。街道沿いの森の奥だね。』

「それなら、良いんじゃないか?
 俺のレベル上げもさせてもらえるな。」

 それならばとイオリは了承した。
 当然の如く双子が自分も!とアピールを忘れない。

「じゃあ、ご飯食べたら出発しよう。
 ゴブリンは集団になると罠をかけてきたり、連携をとってきたりするから
 いつもの通りに戦うと痛い目にあうよ。
 
 しっかりと、状況をみて動く事。」

「「はーい」」

「今回はヒューゴさんと双子のレベル上げを目的とするから、できる限り俺は手を出さない。
 ナギとニナは俺から離れない事。」

「うん」

 ナギとニナはしっかりと頷いた。

『ボクは?』

「一緒に遊んでおいで。時間も勿体ないし、ゼンが側にいれば早いでしょ。」

『了解!』

 ご機嫌んなゼンは再びおにぎりを口に含むと頬にいっぱい詰め込んでいた。


 一晩お世話になったキャンプ地に別れを告げイオリ達は馬車を進めた。
 この日はイオリが御者席を担当した。

 全員、戦闘服を着込みニナは2号を背負ってナギと手を繋いでいた。
 街道を進んでいくとゼンがアウラに声をかけて馬車を止めた。

『この辺りから奥に進むと見えてくるはずだよ。』

 馬車を降り収納すると、話す事もなく音を立てずに森の中をかき分けて進んで行った。

 ゼンを先頭にヒューゴ、双子の順に歩くのをイオリはゆっくりと追いかけた。
 アウラは体を小さくさせるとニナとナギを背に乗せイオリの側を離れなかった。

 しばらく無言で歩くとゼンが振り向いて、見てと目で示した。
 まだ、朝が始まった程の時間。
 ゴブリンの多くは休んでいるのか静かに眠っていた。
 それでも起きてるゴブリンもいる。
 慎重に陣形をとるとヒューゴは双子に合図を送った。


_________


 そのゴブリンはいつもと違う風を感じていた。
 しかし、その違いを説明することは出来ない。
 仲間がまだ眠る中、見回りだと森に入ろうとした時だった。

 バサっ!!と影の塊が飛び出してきたかと思うと、己の意識が途切れた事すら気づかずに事切れた。
 
 1匹のゴブリンの異変に気づき、起きていた他のゴブリンが騒ぎだした。
 一斉に弓を草むらに飛ばしたが、逆に突風が吹き荒れ弾き返された。
 いよいよ、寝ていたゴブリンまでもが騒ぎ出すと、分厚い剣撃が飛んできて多くのゴブリンが巻き込まれて吹っ飛んだ。

ギャッギャギャギャ!!

 襲う事を本能で刷り込まれているゴブリンは相手の力量など関係なく襲う。
 残り散ったゴブリンも各々、武器を手にしたとき2つの黒い塊がもの凄い速さで襲ってきた。

ギャーギャギャギャ!!

 断末魔の騒ぎの中、数匹のゴブリンが草むらの中に人間の子供を見つけた。
 逃げる思考より襲う本能に体の動きを任せたゴブリンは子供達を襲うべく雄叫びを上げながら走りだした。

ギャーー!!

 あと数歩で届くと思った瞬間
 視界に黒い筒が現れ、ドンっ!の音と共に声を出すまもなく意識を奪われた目で空を見上げていた。

 そうして、ゴブリンの集落はものの数分で殲滅されてしまった。
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