拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

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新たな旅 ー王都ー

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 各種のお菓子が並び、グラトニー商会会頭・ロスは興味深げに見つめながらもイオリに伝えようと決めていた事があった。

「元来、砂糖は貴族や富裕層の特権でした。
 それがポーレットの地では当たり前に市民が使えるようになり、お菓子など多様な楽しみ方を知ってしまった。
 当然、砂糖の利権に絡んでいた貴族などは心持ちは良しとしないでしょう。
 何よりも、お菓子など自分達には作り得なかった商品の登場には驚きを隠せなかったのですよ。」

「やはり、迷惑な話でしたでしょうか。」

 心配そうに話すイオリにロスは首を横にふった。

「とんでもない。発展とは新たに何かを生み出すもの。
 国の成長の為に商人ができるのは、それを広める事です。
 しかし、国を支える貴族の中には自分達さえ良ければ良いと考える方々もいるのも確かなのです。」

 ロスは書類を数枚掲げた。

「これは何だと思われますか?
 例の王妃殿が主催の茶会にての茶菓子を持参したいと求めている貴族達です。
 ポーレット公爵ご夫婦が参加されると知っていての行いですよ。」

「それは・・・。
 王家に新しい物を見せ、注目を浴びたいとの思いとポーレット公爵へのアピールでしょうか?」

 イオリの見解にロスは深く頷いた。

「その通りですね。
 我々、商人からしたら恥知らずと言わざる得ない行動です。
 ゴホンっ!失礼・・・。」

「どうぞ。お売りください。」

 ニッコリ笑うイオリにロスは驚きの表情をした。

「しかし・・・良いのですか?
 ポーレット公爵様方もご持参なさるでしょうに・・・。」

 心配をしたロスにイオリはニッコリ笑った。

「構いません。ホワイトキャビンに儲けが出るならポーレットにとって最良の結果でしょう。
 クッキーや飴。シフォンケーキにカステラ・・・。
 茶菓子としては最高ですよ。

 まぁ、ポーレット公爵夫人もそれ位許してくださると思いますよ。」

 そんなイオリの意味深な言葉にロスは黙って思考を巡らせた。

「他に良い物がおありになる・・・?

 そうですか・・・。
 でしたら、こちらも手配するのに余念なく仕事をいたしましょう。」

 何かを理解したロスはニッコリと頷くと、リロイに貴族に茶菓子の手配の指示を出した。

「イオリ様は何かお入りようではありませんか?」

「では、綺麗な宝石箱をお願いします。」

「宝石箱・・・?」

 イオリとは些か関係なさそうな答えにロスは首を傾げた。

「実はですね・・・王妃様・・・・宝石箱に・・・」

 個室だというのに内緒話をするイオリは実に楽しそうであった。

「なるほど・・・。それは面白そうですな。
 ぜひ私も一度見てみたい。」

「でしたら、お茶会が終わったらご紹介しましょう。」

「それは光栄です。是非にも!」

 楽しみでしょうがいないとロスは微笑んだ。

「して・・・イオリさん。
 実はバートから連絡が来ていましてね。
 砂糖工場に変な人間が紛れ込んでいたそうです。
 すぐに拘束され、治安維持隊に身柄を渡されました。」

「!!
 皆さんにお怪我はありませんか?」

「被害は出なかったようですが、もう少しセキュリティーを高めたいとギルドに相談して信頼できる冒険者を雇いたいと言ってきました。
 そこでなのですが、ポーレットのグラトニーよりも王都本部には屈強の物も多数在籍しております。
 王都からも人を送りたいと考えているのですがいかがでしょう?」

 ロスの提案はありがたい事ではあるが、グラトニー商会がガッツリと工場に絡むのもなと悩むイオリだった。

「ちなみにですが、そのうち4人は自らホワイトキャビンに移りたいと願い出た者達です。」

「それは・・・何故です?」

 要領を得ないイオリは眉間にシワを寄せた。

「公共事業としての意気込みと新しい事への挑戦でしょうか。
 事務方もバートとハンスだけでは間に合いそうもないですし、我々の方で余っている人材を送りたいと考えます。
 受け入れてくださいますか?」

 一呼吸おくとイオリは立ち上がり頭を下げた。

「よろしくお願いします。
 俺が冒険者として生きたいが為にホワイトキャビンはバートさんに押し付けているんです。
 是非、仲間を増やしていただきたい。」

 新たな出会いにドキドキするイオリであった。
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