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愛し子の帰還
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ポーレットに新しいお菓子屋さんが誕生した翌日、ホッとしていたのも束の間・・・イオリはポーレット公爵夫人オルガの突撃にあっていた。
「イオリちゃん。
匂い袋が出来たって本当!?」
ワクワクした顔のオルガに苦笑するとイオリは椅子を勧めた。
「まぁ、今現在できる範囲ですが試してください。」
テーブルに並べられた小さな袋達を見てオルガとついて来た筆頭侍女モーナまでもが目をキラキラさせている。
「まぁ、微かな漂う甘い香り・・・。
この袋の中に花達が入っているのね?」
「何と可愛らしい・・・。」
「袋は頂いたドレスの端切れから作りました。
花はボーさんと相談して香りの強いベルガモットや薔薇やラベンダー、それにオルガ夫人がお好きなジャスミンも使ってみました。」
イオリが1つ1つ説明するとオルガは興味深そうに手に取った。
オルガ自身もジャスミンを入れた大きな袋があるが、イオリのそれとは全く違う物だった。
「この大きさならドレスに挟めるわね。」
「布をドレスに合わせれば、もっと目立たなくなりますわ。」
2人が楽しそうに話しているとテントからパティが恐る恐る顔を出した。
「イオリ~。オルガちゃん。
終わった?」
そんなパティを不思議そうに見つめたオルガ夫人は首を傾げた。
「あらっ?どうしたの?
パティちゃん?こっちにいらっしゃい。」
無言で首を振るパティにイオリは眉を下げた。
「匂い袋の加工工程に悲鳴をあげてテントに逃げちゃったんです。
ゼンやアウラ程じゃないですけど、スコルとパティも匂いに敏感ですから。」
「あらあらあら。
それは残念ね・・・。
しょうがないわ、可哀想な事出来ないもの。
匂い袋はパーティーの時だけにしましょう。」
安心したように耳を垂らすパティは手を振るとすぐ様テントに潜り込んだ。
「それにしても、不思議な香りね。
花だけでこんなに香るの?」
オルガの疑問にイオリはある物を見せた。
「花の香りには短い期限があります。
その香りを持続させる為に、これを使いました。」
そこにはオルガが見たこともない仕掛けが施されてた器具があった。
「これは何かしら?
ガラスでしょうけど、いろんな管がついてるわ。」
マジマジと観察するオルガとモーナにイオリの説明が始まった。
「花の香りを凝縮する為の装置です。
以前,アンティティラに滞在した時に“山喰い”という魔獣の被害を抑える為に木酢液を作る事を提案したんです。
木を熱し冷やす事で天然の液体が出来るのですが、それが木酢液と言って虫達が嫌いな液体でなんです。
今回はその技術を応用して花の液体を作りました。
匂いを引き立たせる為にアルコールも混ぜています。
その液体を花達を纏わせました。」
「「・・・・。」」
ポカーンとした顔の2人に心配したイオリはオドオドすると、手を振った。
「凄いわ!イオリちゃん!
前から賢い子と思っていたけれど、何言ってるか分からないのに凄い事が分かるわ!」
何はともあれ匂い袋が完成して喜ぶオルガに安心し、イオリは試作品を渡した。
「ポイントは微かな漂いだと思うんですよ。
強い匂いは逆効果です。
その辺は御2人の方が得意だと思うのでお任せします。」
「任せて!
楽しみだわ。皆んなの驚く顔。」
いたずらが成功する瞬間を想像して微笑むオルガにモーナは溜息を吐いた。
「ゼン様や子供達が匂いが嫌いでは、制作はイオリさんにお任せできませんね。
ハーブについて学んでいる者達に相談してみましょう。
彼女達なら興味を持ってくれるはずです。」
モーナの提案にイオリは安堵した。
「それは助かります。
バートさんにお願いして、蒸留器を用意してもらったのは良いんですが家族が逃げ惑ってしまって困っていたんです。
皆さんによろしくお伝えください。
ちなみにガラスの蒸留器はアンティティラの職人さんが作ってくれた物ですよ。」
困った顔をするイオリにクスクスしたオルガであったが、彼女の予想は的中した。
匂い袋を忍ばせ出席した夜会では注目の的になり、他領の貴族からの問い合わせが続いた。
それでも制作方法を秘匿したのには訳がある。
ポーレットの街に香りが充満するのを防ぐ為だ。
単に専属冒険者の家族達を案じての事であったが、それとは知らない貴族達は価値が高まるステータスとして匂い袋を求めた。
『うげぇ。臭い・・・。
ボク、クッキーの匂いの方が好き。』
布団に鼻を擦り付けるゼンに同意とスコルは体に匂いがつかない様に風呂に行ってしまった。
「やっぱり、お前達は色気より食い気だな。
昼になったらカッチェさんの店に行くって言ってたぞ。もう少しの辛抱だ」
斧の手入れをしていたヒューゴが笑うと首を傾げるニナであったが、カッちぇの店と聞いてニコっと笑った。
「イオリちゃん。
匂い袋が出来たって本当!?」
ワクワクした顔のオルガに苦笑するとイオリは椅子を勧めた。
「まぁ、今現在できる範囲ですが試してください。」
テーブルに並べられた小さな袋達を見てオルガとついて来た筆頭侍女モーナまでもが目をキラキラさせている。
「まぁ、微かな漂う甘い香り・・・。
この袋の中に花達が入っているのね?」
「何と可愛らしい・・・。」
「袋は頂いたドレスの端切れから作りました。
花はボーさんと相談して香りの強いベルガモットや薔薇やラベンダー、それにオルガ夫人がお好きなジャスミンも使ってみました。」
イオリが1つ1つ説明するとオルガは興味深そうに手に取った。
オルガ自身もジャスミンを入れた大きな袋があるが、イオリのそれとは全く違う物だった。
「この大きさならドレスに挟めるわね。」
「布をドレスに合わせれば、もっと目立たなくなりますわ。」
2人が楽しそうに話しているとテントからパティが恐る恐る顔を出した。
「イオリ~。オルガちゃん。
終わった?」
そんなパティを不思議そうに見つめたオルガ夫人は首を傾げた。
「あらっ?どうしたの?
パティちゃん?こっちにいらっしゃい。」
無言で首を振るパティにイオリは眉を下げた。
「匂い袋の加工工程に悲鳴をあげてテントに逃げちゃったんです。
ゼンやアウラ程じゃないですけど、スコルとパティも匂いに敏感ですから。」
「あらあらあら。
それは残念ね・・・。
しょうがないわ、可哀想な事出来ないもの。
匂い袋はパーティーの時だけにしましょう。」
安心したように耳を垂らすパティは手を振るとすぐ様テントに潜り込んだ。
「それにしても、不思議な香りね。
花だけでこんなに香るの?」
オルガの疑問にイオリはある物を見せた。
「花の香りには短い期限があります。
その香りを持続させる為に、これを使いました。」
そこにはオルガが見たこともない仕掛けが施されてた器具があった。
「これは何かしら?
ガラスでしょうけど、いろんな管がついてるわ。」
マジマジと観察するオルガとモーナにイオリの説明が始まった。
「花の香りを凝縮する為の装置です。
以前,アンティティラに滞在した時に“山喰い”という魔獣の被害を抑える為に木酢液を作る事を提案したんです。
木を熱し冷やす事で天然の液体が出来るのですが、それが木酢液と言って虫達が嫌いな液体でなんです。
今回はその技術を応用して花の液体を作りました。
匂いを引き立たせる為にアルコールも混ぜています。
その液体を花達を纏わせました。」
「「・・・・。」」
ポカーンとした顔の2人に心配したイオリはオドオドすると、手を振った。
「凄いわ!イオリちゃん!
前から賢い子と思っていたけれど、何言ってるか分からないのに凄い事が分かるわ!」
何はともあれ匂い袋が完成して喜ぶオルガに安心し、イオリは試作品を渡した。
「ポイントは微かな漂いだと思うんですよ。
強い匂いは逆効果です。
その辺は御2人の方が得意だと思うのでお任せします。」
「任せて!
楽しみだわ。皆んなの驚く顔。」
いたずらが成功する瞬間を想像して微笑むオルガにモーナは溜息を吐いた。
「ゼン様や子供達が匂いが嫌いでは、制作はイオリさんにお任せできませんね。
ハーブについて学んでいる者達に相談してみましょう。
彼女達なら興味を持ってくれるはずです。」
モーナの提案にイオリは安堵した。
「それは助かります。
バートさんにお願いして、蒸留器を用意してもらったのは良いんですが家族が逃げ惑ってしまって困っていたんです。
皆さんによろしくお伝えください。
ちなみにガラスの蒸留器はアンティティラの職人さんが作ってくれた物ですよ。」
困った顔をするイオリにクスクスしたオルガであったが、彼女の予想は的中した。
匂い袋を忍ばせ出席した夜会では注目の的になり、他領の貴族からの問い合わせが続いた。
それでも制作方法を秘匿したのには訳がある。
ポーレットの街に香りが充満するのを防ぐ為だ。
単に専属冒険者の家族達を案じての事であったが、それとは知らない貴族達は価値が高まるステータスとして匂い袋を求めた。
『うげぇ。臭い・・・。
ボク、クッキーの匂いの方が好き。』
布団に鼻を擦り付けるゼンに同意とスコルは体に匂いがつかない様に風呂に行ってしまった。
「やっぱり、お前達は色気より食い気だな。
昼になったらカッチェさんの店に行くって言ってたぞ。もう少しの辛抱だ」
斧の手入れをしていたヒューゴが笑うと首を傾げるニナであったが、カッちぇの店と聞いてニコっと笑った。
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