続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

愛し子の帰還

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　その男ーーーー
　名をカッチェと言う。
　牛飼いの次男として生家の生業を手伝うも、全く売れない牛の乳に困り果てていた時に1人の青年と運命の出会いをし人生が変わった。

　様々な牛乳の使い方をしり、彼の・・・彼らの家族の人生は変わった。
　生き甲斐を得た両親は喧嘩をする事はなくなり、兄夫婦も子を儲けて穏やかに生活をしている。
　そしてカッチェはというと、ポーレットの街で牛乳を使った料理を出す店を開き連日忙しい日々を送っていた。

　そのカッチェが鍋をかき混ぜながら心配そうに厨房から店内を見ていた。

　彼の目に映っているのは1つのテーブルだった。
　彼の師である青年・・・冒険者イオリが3年ぶりに店に顔を出したのだ。
　カッチェにとっては誰よりも緊張するお客様である。

「うん。美味しいです。
　これ、にんにくチップですね？」

「はっ・・はいっ！
　“日暮れの暖炉”のガーリックチキンを作る時に出るニンニクチップを買ってるんです。
　ウチでは作れないですから。」

　いつもと違い、焦っているカッチェに店の従業員達は驚くと同時にイオリに注目をした。

「ホワイトシチューは淡白と感じる人もいるでしょうから、アクセントに良いですよ。
　でも、これに頼ると元のシチューのクオリティが下がってもいけないので使い所を考えましょう。」

「はいっ！ありがとうございます！」

　ガバッと頭を下げるカッチェに従業員はいよいよイオリの存在を意識して緊張し始めた。

「カッチェさん。
　やっぱりオレはグラタンが好きだよ。
　鶏肉とマカロニ、それからホワイトクリームの組み合わせが美味い！」

「パティもグラタン！
　シチューっぽさも楽しめてお得！！」

　双子の獣人を始め子供達がホフホフと頬張る様子にカッチェは微笑んだ。

「ありがとな。
　君たちが褒めてくれると自信がつくよ。
　そうだ。ヨーグルト食べる？
　義姉さんがワイルドベリーのジャムを作ったんだ。」

「「食べる！！」」

「ナギも！」
「ニナも！」

　慌てて下の2人も手をあげると必死にアピールをする。

「待ってな。持ってくるよ。」

　カッチェがキッチンに向かおうとした時だった。

カランっ！
　
　という音と共に体格の良い男達が店に入ってきた。
　いかにもと言う程に威嚇をする男達にヒューゴの目がギラついた。

「おいっ！いつもの持ってこい！」

　怯える女性従業員が慌てる様子を見てカッチェが声をかけた。

「あいよ。
　他のお客様もいるんだ。
　静かにしてくださいよ。」

　イオリに一瞥して奥に引っ込むカッチェだったが、他の従業員は怯えていた。

「早く持ってこいよ！
　気が利かねー店だな。」

　男が机をバンバン叩く音にニナが耳を塞ぐと仲間の男達が笑い出した。

「悪いな嬢ちゃん。
　嫌なら出ていきな。
　こんな店よりポーレットにゃー良い店があるぜ。
　前の通りにサガンってのがあるから行ってみな。」

　ニナは無言で首を横にふり、隣にいたヒューゴに隠れるようにスプーンでカッチェのシチューを食べた。

「ニナはカッチェさんのシチューが好きだもんな。」

　そう話すスコルに舌打ちをすると男達はイオリとヒューゴを睨みつけた。

「子供の躾はしっかりしとくんだな。
　どこの冒険者かしらないが、人の助言は聞いておくもんだ。」

　双子が立ち上がり威嚇し始めると、いつでも逃げれるようにナギはニナと手を繋いだ。

「どの人の助言を聞くかは自由です。
　そして、俺達があなた達の助言を聞く事はない。」

　イオリは静かにシチューを食べ終えると男達に視線を向けた。

「此処じゃ、お店に迷惑がかかる。
　表に出て話しましょうか。」

　男達は逆上すると椅子を倒して立ち上がった。

「上等だよ！
　小僧が！大人の礼儀を教えてやるよ！！」

　側にいたゼンは騒ぐ男達を見て呆れたように目を回しシチューを夢中で貪り直した。