続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜王都〜

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 アレックスは陽がのぼると同時に目が覚める。
 冒険者としてよりも時間に煩い騎士としての教育の賜物であった。

 隣のベッドに目をやれば、ロジャーが気持ち良さそうに眠っている。

 昨夜は実に充実していた。
 ロジャーとの旅は楽しいが、料理など皆無の2人にとって旅の途中の食べ物と言ったら干し肉である。
 それで良いと思っていたし、当たり前とも思っていた。

「昨日のロースカツ美味かったな。」

 思い出すと、にやける頬を叩きテントを出た。

トントントントン
 
 早朝と言うのに音がする。
 驚いてみれば、スコルとイオリが何やら作業をしていた。

「おはよう・・・何してるんだ?」

「あれ?アレックスさん。
 おはようございます。早いですね。」

 ニッコリとするイオリにアレックスは頷いた。

「俺はいつものこのくらいだ。
 朝一に体を動かさないと落ち着かないんだよ。」

「分かります。
 俺もそうですよ。
 ヒューゴさんも向こうで素振りしてます。
 今は朝ご飯の準備ですよ。
 パパッと食べられるようにオニギリにしました。
 朝食はスコルの担当なんです。」

 イオリよりも忙しく動き回るスコルにアレックスは驚いた。

「スコルも料理をするのか?」

「うん!
 イオリに教えてもらってるんだ。
 沢山作るから待っててね。」

 竈門に四角いフライパンを置いて溶き卵を入れているスコルを関心して見ていたアレックスはフッと実家を思い出した。
 決して得意ではなかったけれど、母のソフィアンヌも時折、朝にキッチンに立つ事があった。
 実はアレックスにはロジャーの母であるビルデの味の方が馴染み深い。
 それでも時折、使用人の手を借りて作る母の料理は嬉しかった。

 冒険者として生きてきたソフィアンヌの料理は豪快かつ大胆だった。
 朝一番で丸ごとの肉と切っていない野菜の煮込み料理が出てきた事もある。
 魚を丸焦げにして、父に慰められていたのも楽しい思い出だ。

「・・・イオリは母よりも家庭的だな。」

 アレックスはクスッと笑うと体を動かしに向かった。
 
 ヒューゴに声を掛け、手合わせをしてから汗を流しにイオリのテントの風呂を借りに行くとニナとナギの声が聞こえた。

「パティ。起きてよ~。
 もう朝だよ~。」

「朝ごはん出来ちゃうよ。
 出発前にオニギリ食べるんでしょ?」

 こっちにも朝が苦手なのがいると思えば、再びクスッとした。
 
 自身のテントに戻れば、相棒がだらしない顔で眠っている。
 
 アレックスは呆れながらもロジャーのベッドを蹴った。

「おい!起きろ!
 朝ご飯を食い損ねるぞ!」

「それは駄目!」

 ガバッと起きて急いで着替えるロジャーにアレックスは溜息を吐いた。
 
「お前は子供か?」
 
「何が?朝飯だろ?
 行こうぜ!」

 ご機嫌なロジャーと共にテントを出れば甲高い声が聞こえた。

「あー!ロジャーの寝坊助!!
 パティの方がお姉さんみたい。」

 先程まで妹と弟を困らせていたとは思えないほど明るい声でパティが騒いでいる。

 他の家族が苦笑しているところを見ると、ロジャーより僅か先に起きた事になる。

「・・・お前ら、本当に似てるよ。」

 アレックスは相棒の背中を叩き、旅の朝を迎えたのであった。
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