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旅路〜デザリア〜

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 デザリアの首都バッカスを出発して3日、所々あるオアシスをで休憩をとり目的地ガレーを目指しているイオリ一行。

 ムジーザでフワフワのパンやパンケーキを味わったデザリア一同は、その魅力にハマり、毎食の様に所望する。
 今日は昼食にサンドイッチを出してみると案の定、狂嬉していた。

「・・・あんなに気にいるとはね。」

 困ったように話すイオリにスコルが同調する。

「そろそろ、米が食べたいよ。」

「じゃあ、今夜はカレーにしてパンでもご飯でも選べるようにしようか。」

「それ、いいね!」

 馬車の中では今日も夕食の献立会議が白熱していた。

「本当に、君達は食べる事に注ぐ情熱がすごいな。」

 感心しているシモン・ヤティムであるが、彼もフワフワなパンに魅了されている1人である。
 旅の途中では、ありきたりな食事が当たり前と考えていたが、イオリ達のように快適さを求める人間がいるとは考えていなかった。

「生きるとは食べる事です。
 簡単に食べる事ができない世界だからこそ、1食1食を大切にしたいんですよ。」

 真剣に語らうイオリにシモン・ヤティムは「なるほど。」と押され気味だ。

「それより、そろそろガレーについて教えてください。
 農業が盛んと聞きましたが、どんな街ですか?」

 話を変えて、現在の目的地について尋ねるイオリと期待した目を向ける子供達にシモン・ヤティムは咳払いをする。

「ウォホン!
 ガレーの街は確かに農業が盛んだ。
 大きなオアシスがある地方の中で最も水源が豊富とも言える。
 港に作られた首都バッカスの主な食糧補給源はダンジョンであるわけだが、ガレーは広大な土地に農園を作り上げている。
 砂漠地帯であった訳だが、《星が落ちた日》に緑地帯と湖が現れて徐々に人々が住み着くと、初代王によってガレーの名が付けられた。
 しかも、その緑地帯が農業に適していたとあって、国の中でも王都に次ぎ貴重な土地といえる。」

 シモン・ヤティムの話によると、ガレーには山もあり一年中青々と草木が育っているのだとか。
 山の麓に広がる湖には豊富な水が湧き出ていて、水路を作り街全体に轟かせているらしい。

「かつての領主達が街づくりに力を注いできた成果もあって、どこを見ても美しい場所だ。
 中に入れば、そこが砂漠の中であるとは思えない程にな。」

 現在の当主であるジュード・ガレーとはデザリア王の妻であるティエナ妃の兄であるとか。
 ジュードは公爵の地位に甘んじず、優しく真面目な人物なのだそうだ。
 先代のガレー公爵は現在も存命で、街の住人に愛されているとシモン・ヤティムは嬉しそうに微笑んだ。

「あの方は不思議な人でな。
 一緒にいると、何故か心が穏やかになるのだ。
 若くして筆頭の地位についた私を何度助けて下さったか分からない。
 周りの意見など耳に入らなかった若き日の私も、あの御仁には絆されていたものだ。
 そういう意味で、イオリ殿に似ているかもしれんな。」
 
 と語るシモン・ヤティムにイオリは不思議そうに首を傾げるが、聞いていたヒューゴと子供達は楽しそうに頷いたのだった。
 
 
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