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旅路〜デザリア・ガレー〜
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日差しが強い砂漠の旅が終わろうとしている。
揺らめく向こう側に大きな壁に覆われた街が見えてきた。
「あれがガレーだ。」
子供達にも見える位に近づくと、より壁の高さが目立っている。
「すっごい大きな壁ね。
ポーレット位あるかなぁ?」
懐かしい街を思い出しパティが振り返える。
「確かにね。
ポーレットの壁は魔獣から街を守る為だったから、ガレーも同じかな?」
オアシスを求めるのは人間だけではないと教わったイオリはシモン・ヤティムに視線を向けた。
「うむ。
確かに今は魔獣から守る役目が強い。
だが、遥か昔は他のオアシスの部族からガレーの農園を街を守る、正しく城壁であった。」
シモン・ヤティムはガレーの歴史を語り出した。
「デザリアとは神鳥様によって、もたらされた恩恵で出来た国と言うのは理解してくれていると思うが、《星が落ちた日》に出来た数々のオアシスを初代国王が全て掌握するまでには多少の年月が要したのだ。」
それぞれのオアシスが出来ると近隣にいた人間達が所有権を主張したのだ。
彼らは酋長として貧困に苦しむ仲間達を守ろうとしていた。
それは初代国王アーマッド・デザリアも同じ立場であった。
そして、彼らは争い始めた。
所有するオアシスの大小や水量によって生活のレベルが違ってくるからだ。
豊に生活ができるオアシスがある一方、小さいオアシスを所領する者達は資源がいつ枯渇するのかと怯えていた。
細やかな幸せを願っていた人間達だったが、さらに豊かを望み他のオアシスを襲い始めたのだ。
神鳥の想いを汲み取っていたアーマッド・デザリアは、その状況を悲しんだ。
「弱き者を守るのは理解する。
されど欲に溺れてはいけない。
大きなオアシスは小さなオアシスを助け、小さなオアシスは大きなオアシスにはない役割を全うせよ。
絶対神が贈って下さった神鳥は我らを助けて下さり見守っている。」
アーマッド・デザリアは大小問わず全てのオアシスに足繁く通い、切々と説いて回った。
「悲しい人間の性だな。
あの大きな壁は、その時の争いの名残りでもあるのだ。」
シモン・ヤティムは目を細めて大壁を見つめた。
「その人達は本当に美味しい物を知らなかったんだね。」
唐突に話すパティにシモン・ヤティムは虚をつかれた顔をした。
「だって、本当に美味しい物はみんなで食べると、もっと美味しいんだよ。」
無邪気に微笑むパティにシモン・ヤティムは呆気に取られていた。
「でも、それはオレ達が食べ物に困ってないからだよ。
イオリが食べ物に困らないようにしてくれてるからね。」
スコルの言葉は現実的だった。
食べ物に困ってない自分達に昔の人間達の気持ちを完璧に理解するなど無理なのかもしれない。
それでも、諦めないパティは食い下がった。
「だったら、イオリが沢山いれば争いは起こらないって事?
じゃあ、みんなイオリになれば良いよ。」
「それは、無理・・・。」
言いかけそうになるシモン・ヤティムであったが、パティの言葉に真意を得たように顎を摩った。。
「・・・教育か。」
筆頭魔法使いは何かを考えるように遠くに見える大きな壁を見つめた。
揺らめく向こう側に大きな壁に覆われた街が見えてきた。
「あれがガレーだ。」
子供達にも見える位に近づくと、より壁の高さが目立っている。
「すっごい大きな壁ね。
ポーレット位あるかなぁ?」
懐かしい街を思い出しパティが振り返える。
「確かにね。
ポーレットの壁は魔獣から街を守る為だったから、ガレーも同じかな?」
オアシスを求めるのは人間だけではないと教わったイオリはシモン・ヤティムに視線を向けた。
「うむ。
確かに今は魔獣から守る役目が強い。
だが、遥か昔は他のオアシスの部族からガレーの農園を街を守る、正しく城壁であった。」
シモン・ヤティムはガレーの歴史を語り出した。
「デザリアとは神鳥様によって、もたらされた恩恵で出来た国と言うのは理解してくれていると思うが、《星が落ちた日》に出来た数々のオアシスを初代国王が全て掌握するまでには多少の年月が要したのだ。」
それぞれのオアシスが出来ると近隣にいた人間達が所有権を主張したのだ。
彼らは酋長として貧困に苦しむ仲間達を守ろうとしていた。
それは初代国王アーマッド・デザリアも同じ立場であった。
そして、彼らは争い始めた。
所有するオアシスの大小や水量によって生活のレベルが違ってくるからだ。
豊に生活ができるオアシスがある一方、小さいオアシスを所領する者達は資源がいつ枯渇するのかと怯えていた。
細やかな幸せを願っていた人間達だったが、さらに豊かを望み他のオアシスを襲い始めたのだ。
神鳥の想いを汲み取っていたアーマッド・デザリアは、その状況を悲しんだ。
「弱き者を守るのは理解する。
されど欲に溺れてはいけない。
大きなオアシスは小さなオアシスを助け、小さなオアシスは大きなオアシスにはない役割を全うせよ。
絶対神が贈って下さった神鳥は我らを助けて下さり見守っている。」
アーマッド・デザリアは大小問わず全てのオアシスに足繁く通い、切々と説いて回った。
「悲しい人間の性だな。
あの大きな壁は、その時の争いの名残りでもあるのだ。」
シモン・ヤティムは目を細めて大壁を見つめた。
「その人達は本当に美味しい物を知らなかったんだね。」
唐突に話すパティにシモン・ヤティムは虚をつかれた顔をした。
「だって、本当に美味しい物はみんなで食べると、もっと美味しいんだよ。」
無邪気に微笑むパティにシモン・ヤティムは呆気に取られていた。
「でも、それはオレ達が食べ物に困ってないからだよ。
イオリが食べ物に困らないようにしてくれてるからね。」
スコルの言葉は現実的だった。
食べ物に困ってない自分達に昔の人間達の気持ちを完璧に理解するなど無理なのかもしれない。
それでも、諦めないパティは食い下がった。
「だったら、イオリが沢山いれば争いは起こらないって事?
じゃあ、みんなイオリになれば良いよ。」
「それは、無理・・・。」
言いかけそうになるシモン・ヤティムであったが、パティの言葉に真意を得たように顎を摩った。。
「・・・教育か。」
筆頭魔法使いは何かを考えるように遠くに見える大きな壁を見つめた。
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