続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜デザリア・ガレー〜

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「終わったみたい。」

 木の上にいたイオリはゼンとソルに微笑んだ。

『“魅了の力”が関係してたらって、心配してたもんね。
 あの人、寝ちゃったの?』

「余計な事してリルラさん怒ってるかな?」

『リルラは怒らないよ。』

 ゼンがイオリの頬をペロッと舐めた。

『双子が飽きたってさ。
 さっきから騒いでるよ。』

 イオリはクスクス笑うと下を覗き込んだ。

 腰に手を当てて見上げているスコルとパティの姿が見える。
 周りにはガレーの子供達とナギとニナが談笑しているようだ。

『カカオ農園の問題は無くなったんでしょ?
 じゃぁ、早く行こうよ。』

 ゼンはイオリに乗れとばかりに背を向けた。

「そうだね。
 後は、大人に任せよう。」

 イオリが背に乗ったのを確認するとゼンは木のテッペンから飛び降りた。


「「「「わっ!!」」」」

 驚くガレーの子供達を見てゼンが無言で笑っている。
 体が震えているのが証拠だ。
 驚かしたのが楽しいらしい。

「もう!
 イオリ何してたの?」

 ご立腹なパティにイオリは笑った。

「ごめん。
 ちょっとね。
 それじゃ、行こうか。
 アシィール君。
 カカオ農園に案内してくれる?」

 体の大きくなったゼンに恐々手を伸ばしていたアシィールが驚いたように頷いた。

「はっ・・ハイ!
 みんな行こう。」

 アシィールの声掛けにジェイドが飛び出した。

「こっちの方が近道だよ。
 さっさと行こうぜ。」

 街とは反対側をズンズンと歩いていくガレーの子供達の後をイオリ達は追いかけた。

 道ではない木々の中を子供はスイスイと歩いて行く。
 森の中はお手の物と楽しそうに追随するイオリ達ではあるが時折、狭い場所がありヒューゴが窮屈そうだ。

「大丈夫ですか?」

「何とかなる。」

 いつも背中に背負っている大剣を腰バックに仕舞い込むとニカッと笑った。

 暫くすると人の手が入った山間に出た。

 整然と並んでいるのがカカオの樹なのだろう。

「テシャン爺さんに声かけてくるよ。」

 シトリンがオランを伴ってカカオの樹を避けながら走っていくのを見送ると、アシィールはイオリ達を案内した。

「この辺がテシャン爺さんのカカオ農園です。
 テシャン爺さんは主に薬用になる植物を育てているんです。」

 デザリアの食材庫であるガレーの地では多くの野菜や果物が栽培されているが、魔獣対策に使うスパイスや薬として利用する薬草も豊富であると筆頭魔法使いシモン・ヤティムから聞いていた。

 デザートのチョコレートを求めてカカオに興味を持ったイオリであったが、カカオとはデザリアでは老化防止や病気の予防として用いられているようだ。

「おい。
 来たぞ。
 テシャン爺さんとドネ婆さんだ。」

 カカオの木から顔を出せば、シトリンとオランの2人が麦わら帽子を被った老齢の夫婦を伴って戻ってくるのが見えた。
 大きな籠を背負う夫婦の姿に遠い故郷を思い出すイオリであった。
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