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旅路〜ルーシュピケ〜
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「そう。
縦の糸を傷つけないように、横の糸を隙間に入れて通していくんだよ・・・。
上手じゃないか。」
ダイダの手解きを受けてコーラルは初めての機織りの体験をしている。
「これを何百、何千と繰り返していくんだ。
無心で手を動かしていれば、嫌な事も忘れていくさ。」
ダイダは優しくコーラルの頭を撫でた。
コーラルは恥ずかしそうに頷くと、再び機織り機に視線を戻した。
「イオリ?
何やってるのさ?」
見習いの機織り達から少し離れた場所で器用に手を動かすイオリにラックは首を傾げた。
「ちょっと、試しにね。」
イオリがせっせと手を動かしているのをラックとナギが顔を見合わせ肩を竦めた。
少し前の事だった。
山積みになっている乱雑な糸を見て、イオリが不思議そうに問いかけた。
「これって、何ですか?」
「商品にならない糸や、切れ端の毛糸だよ。
こうやって、練習に使うのさ。
興味があるなら持っておいき。」
ダイダからお墨付きをもらうと、イオリは何かを考え込み、キョロキョロとあたりを見渡し、落ちていた細い木を持ってきた。
何をするのか分からないが、細い木をナイフで削りヤスリをかけ始めたイオリにカロスやグラバー首を傾げた。
「あれは、なんだ?」
「何でしょう?
棒の先が槍のように曲がっていますね。」
それからイオリは山積みの糸から太めの毛糸を探して来た。
「確か・・・これをこうして・・・こうやって。」
何やらブツブツと言いながら手を動かし始めたイオリであった。
「試してるって、何をさ?」
再びラックが問いかけると、イオリは木の棒を見せた。
「これは鍵編み棒って言って、毛糸を編む為の道具だよ。
太さによって模様の大きさも変わるだろうけど、今は出来るのか試してるところ。
しっかりとヤスリをかければ、鍵編み棒がツルツルして編み安いよ。」
見る見る間に毛糸が編まれていく様にカロスとグラバーが驚いていた。
「い・・・イオリ様?
それは、何を作っておいでなのです?」
グラバーがグイッと顔を近づけると、イオリは苦笑した。
「余ってた毛糸で鍵編みをしています。
とりあえず、これをこうして、こうすると・・・。
出来た。
コーラル!
おいで。」
イオリが編み込んだ輪っかは、途中が捻れていた。
不思議そうに近づいてきたコーラルに渡すとイオリはそれを頭から被って前髪を止めるように教えた。
「はい。ヘアバンド。
どう。前髪が邪魔じゃないだろう?」
頭にフワフワの髪飾りを付けられ、嬉しそうなコーラルにイオリは満足気に頷いた。
「ほう、毛の糸でハチマキをな・・・なんと面妖で面白い物だ。
若き者よ。
それは、私等でも出来るのかの?」
カロン興味心身で近づいてきた。
「勿論できますよ。
もっと沢山編めばマフラーになるし、帽子や洋服だって編めます。
でも、俺が教えられる物なんて、ありませんがね?」
申し訳なさそうに笑うイオリを見上げカロンは顔を赤くしてブルブルと震えた。
そして、両手を挙げると歓喜の声を上げた。
「良い!
機織り機も、初めは小さい器具から出来たのだ。
編み物とやらも、何年もかけて改良してみせるわい。
ほれ、教えなさい。」
再びルーシュピケに大きな影響を及ぼす事が生まれた。
「残り物が、これになるのか・・・。
これは、良い商売になりそうだ。」
グラバーは1人、山積みになった糸とイオリを見比べ、頭の中で商機を見出すのだった。
「あっ、グラバーさん。
イオリに関する商売でしたら、ホワイトキャビンを通してくださいよ。」
しっかりしたラックにグラバーは唸るのだった。
縦の糸を傷つけないように、横の糸を隙間に入れて通していくんだよ・・・。
上手じゃないか。」
ダイダの手解きを受けてコーラルは初めての機織りの体験をしている。
「これを何百、何千と繰り返していくんだ。
無心で手を動かしていれば、嫌な事も忘れていくさ。」
ダイダは優しくコーラルの頭を撫でた。
コーラルは恥ずかしそうに頷くと、再び機織り機に視線を戻した。
「イオリ?
何やってるのさ?」
見習いの機織り達から少し離れた場所で器用に手を動かすイオリにラックは首を傾げた。
「ちょっと、試しにね。」
イオリがせっせと手を動かしているのをラックとナギが顔を見合わせ肩を竦めた。
少し前の事だった。
山積みになっている乱雑な糸を見て、イオリが不思議そうに問いかけた。
「これって、何ですか?」
「商品にならない糸や、切れ端の毛糸だよ。
こうやって、練習に使うのさ。
興味があるなら持っておいき。」
ダイダからお墨付きをもらうと、イオリは何かを考え込み、キョロキョロとあたりを見渡し、落ちていた細い木を持ってきた。
何をするのか分からないが、細い木をナイフで削りヤスリをかけ始めたイオリにカロスやグラバー首を傾げた。
「あれは、なんだ?」
「何でしょう?
棒の先が槍のように曲がっていますね。」
それからイオリは山積みの糸から太めの毛糸を探して来た。
「確か・・・これをこうして・・・こうやって。」
何やらブツブツと言いながら手を動かし始めたイオリであった。
「試してるって、何をさ?」
再びラックが問いかけると、イオリは木の棒を見せた。
「これは鍵編み棒って言って、毛糸を編む為の道具だよ。
太さによって模様の大きさも変わるだろうけど、今は出来るのか試してるところ。
しっかりとヤスリをかければ、鍵編み棒がツルツルして編み安いよ。」
見る見る間に毛糸が編まれていく様にカロスとグラバーが驚いていた。
「い・・・イオリ様?
それは、何を作っておいでなのです?」
グラバーがグイッと顔を近づけると、イオリは苦笑した。
「余ってた毛糸で鍵編みをしています。
とりあえず、これをこうして、こうすると・・・。
出来た。
コーラル!
おいで。」
イオリが編み込んだ輪っかは、途中が捻れていた。
不思議そうに近づいてきたコーラルに渡すとイオリはそれを頭から被って前髪を止めるように教えた。
「はい。ヘアバンド。
どう。前髪が邪魔じゃないだろう?」
頭にフワフワの髪飾りを付けられ、嬉しそうなコーラルにイオリは満足気に頷いた。
「ほう、毛の糸でハチマキをな・・・なんと面妖で面白い物だ。
若き者よ。
それは、私等でも出来るのかの?」
カロン興味心身で近づいてきた。
「勿論できますよ。
もっと沢山編めばマフラーになるし、帽子や洋服だって編めます。
でも、俺が教えられる物なんて、ありませんがね?」
申し訳なさそうに笑うイオリを見上げカロンは顔を赤くしてブルブルと震えた。
そして、両手を挙げると歓喜の声を上げた。
「良い!
機織り機も、初めは小さい器具から出来たのだ。
編み物とやらも、何年もかけて改良してみせるわい。
ほれ、教えなさい。」
再びルーシュピケに大きな影響を及ぼす事が生まれた。
「残り物が、これになるのか・・・。
これは、良い商売になりそうだ。」
グラバーは1人、山積みになった糸とイオリを見比べ、頭の中で商機を見出すのだった。
「あっ、グラバーさん。
イオリに関する商売でしたら、ホワイトキャビンを通してくださいよ。」
しっかりしたラックにグラバーは唸るのだった。
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