続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜パライソの森⒉〜

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「残念ですが。
 情報が筒抜けだったようですね。」

 イオリは銃を真っ直ぐにソウスケに向けた。
 銃が何なのか分かっていないだろうが、危機感はあるのだろう。

「何を馬鹿なっ!
 私はムネタカの家臣だぞ。
 私を不忠者と言うのか、無礼者!」

 構えていた刀を向けてきたソウスケをイオリは眉1つ動かす事なく見据えた。

「俺の従魔が男を連れてきた時に顔を歪めて舌打ちしてましたよ。
 人を欺く時は最後まで粘らないと駄目ですよ。」

 思わずソウスケは、ハッと手を口に当てた。

「ほら、また。
 表情に出てます。」

「クソッ!」
 
 ーーーそうは言ってもね。

 見抜いたと言ったが、本当の所はイオリの右目の鑑定に、最初からこの男は『裏切り者』とはっきり刻印されていた。
 証拠などあるわけもないから誘導してみたら、見事に引っかかってくれた。

「・・・ソウスケ?」

 目の前で繰り広げられる応酬を信じられないとばかりに、フラフラと近づこうとするムネタカをイオリは止めた。

「近づかない方がいい。
 この人は貴方を殺そうとしている敵です。」

 イオリの言葉にガーディアン達が戦闘態勢に入った。

「嘘だ!!
 ムネタカ、信じるな!
 その者は得体の知らない輩だぞ!」

 必死のソウスケに誰もが疑いの視線を向けていた。

「何かの間違いであろう?
 国を取り戻そうと約束したではないか!
 ソウスケ・・・どうして。」

 膝をつき嘆くムネタカに、キクが走り寄ろうとしてピタリと止まる。

「本当に残念ですが、貴方もです。」

 距離のあるソウスケと違い、キクの額にはしっかりと銃口を突き付けられた。

「・・・キク?」

「ムネタカ・・・様。」

 キクはブルブルと震えながらも、ムネタカの目から逃れようと視線を逸らした。

「この地に主人を連れてくる。
 それが、貴方達の役割だった。
 違いますか?」

 イオリの真っ直ぐな目にソウスケとキクの目が泳いだ。

「何故だ?」

 イドリアルの疑問はルーシュピケの民にしたら、もっともの事だ。

「・・・推測に過ぎませんが。
 ムネタカ様の死をルーシュピケの所為にしようとしているんじゃないですかね。」

 ーーーパライソの森で争いが起こる事は避けられない。

 アマメはハッキリと言った。
 それは、どう転んでも“グランヌス”がパライソの森・・・ルーシュピケを手中に収めようとしていると言う事だ。

「“グランヌス”の王子様であるムネタカ様がルーシュピケの民によって殺されれば、“グランヌス”にしたら攻め込む為の口実が出来ます。」

 それにより、ガーディアン達が騒めき出した。

「“グランヌス”が攻めてくる!?」

 驚いた声を上げたのはイドリアルだけじゃない。

「まさか!
 我が国が戦争を仕掛けると言うのか!?」
 答えろ!
 それをは画策しているのか?」

 ムネタカは顔面を白くした2人の幼馴染を凝視し、憎しみを込めた言葉で話しかけた。

「・・・お疑いの意味が分かりません。
 ムネタカ様は幼き頃より苦楽を共にしてきた私達ではなく、会ったばかりの者を信じるのですか?」

 庇護欲を唆るキクの涙にムネタカは希望に縋りたいと手を伸ばした。

 そこに立ち塞がった者がいた。
 
「心を揺さぶられては駄目です。
 この2人は裏切り者です。」

 ハッキリと言い切ったのは、死んだと思っていたロクだった。
 その目には涙が流れていた。

「・・・ロク、お前。」

「俺の勘違いなら良かった。
 でも、そうじゃなかったんスね。
 危険な洞窟に、留まろうと言い張る2人に少しづつ疑いを持ち始めていたんっスよ。
 主を守る為なら、俺は仲間だろうと欺きますよ。」

 弱々しくもニコと笑ったロクは腰から刀を素早く抜くと柄でキクの鳩尾を打った。

「ゔぅっ・・・。」

 短く呻いたキクは崩れ落ち気を失った。

「他人を巻き込んでまで主人殺しを企んだんっス。
 ・・・ソウスケ殿。
 お覚悟を。」

 任務が露見し顔を顰めるソウスケにロクは静かに刃を構えた。

 
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