溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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龍の姫巫女のお出迎え

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 時が止まった様な静けさだった。

「やっぱり、分かってなかったのね?」

 驚き、何も言わずに見つめてくるディミトリオ・ハクヤにリリィは呆れた様に溜息を吐いた。

「龍王が加護を与え、龍の使者として龍の姫巫女を預けるのはロンサンティエ家の当主・・・今で言う皇帝なんかじゃない。
 この”龍王島“に赴き、龍王に認められた者が龍の使者となるのよ。
 だから、今代の龍の使者は貴方。
 分かった?」

 衝撃的事実にディミトリオ・ハクヤは慄いた。

「いや、でも・・・。
 私は皇帝の代理であって・・・。」

「龍には龍のことわりがある。
 人が勝手に定めた決め事なんて龍には関係ないのよ。」

 リリィの気に反応したかの様にディミトリオ・ハクヤの手の平にいたルーチェが一瞬で大きな姿に変化し、空に飛び出した。

「龍は私の願いを聞き届け、私は龍の使者・・・貴方を助ける。
 あとは貴方次第。」

 悠々と存在する白銀の龍を背に力強い青い目を向けるリリィの心理にディミトリオ・ハクヤは思わずといった様に呟いた。

「私に国取りをしろと?」

 まさか自分の口から、そんな言葉が出るとはと驚くディミトリオ・ハクヤにリリィは微笑みを浮かべた。
 それは初めて見る柔らかい・・・母の様な笑顔だった。

「それを決めるのも貴方。
 国が欲しくないなら、それに見合う誰かにあげれば良いんじゃない?
 龍は自由に空を飛び回るのよ。
 貴方も好きにすれば良い。」

 すると、止める間もなくリリィが崖から飛び降りた。

「おい!!」

 慌てて手を伸ばしたディミトリオ・ハクヤはルーチェが優しくリリィをキャッチするのを見た。

 ルーチェに腰掛けたリリィがクスクスと笑う。

「龍は自由よ。
 龍の巫女である私も誰の命令も受けない。
 私を帝国に連れて行きなさい。
 精々、国が混乱するのを楽しむといいわ。」

 そう言い放ったリリィを乗せたままルーチェが飛び立っていく。

「早く帰って休んだほうが良いわよ!
 老師はおじいちゃんだから朝目覚めるのが早いの!」

 飛び去っていくリリィとルーチェを見送っていると、背後からクレイとスサとセイエイがやって来た。

ぬし様・・・。」

「聞いていたのか?
 今世の姫巫女は随分と自由らしい。
 龍は自由・・・何者にも縛られない彼らが羨ましい。」

 付き物が落ちた様に笑うディミトリオ・ハクヤに3人の部下は膝を付いた。

「どこまでもお供いたします。」

 《そうだ。全てを取られた訳では無かったな。》

 ディミトリオ・ハクヤは苦労すると分かっていながら、自分に付いてきてくれる部下に心の中で感謝をした。
 
「帝国での息苦しい日々も終わるかもしれないな・・・。」

 矜持という物を根こそぎ取られた大公閣下は、己の中に芽生えた期待に小さく震えるのだった。
 
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