溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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混沌なる後宮

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 ブランチ辺境伯家

 東の辺境の地を収めるロンサンティエ帝国でも最古参の一族は隣国サントノーレ公国との間に位置する国境を守護していた。
 
 国境沿いは深い森に覆われ魔獣も存在する。
 ロンサンティエ帝国内に魔獣が侵入しないように努めているのだ。

「そもそも、ブランチとは“枝”を意味する。
 フランコ・トワ・ロンサンティエが龍王より賜った宝樹の枝をブランチ辺境領に分け与えた事からブランチ辺境伯家は始まった。」

 口数の多くないコテツが面倒臭そうに話すのをディミトリオ・ハクヤは辛抱強く聞いていた。

 ブランチ辺境伯の名を聞き、急ぎ帰った宰相を見送るとリリィはディミトリオ・ハクヤと供の者達を離宮に誘った。

 朝食を食べながら話すコテツに一同の視線が集まっていた。

「ブランチ辺境伯領に宝樹の“分枝”があるのか?」

 驚きを隠せないディミトリオ・ハクヤにコテツはコクンと頷いた。

「そう。
 辺境伯家は龍に仕え、宝樹の枝を護る一族。」

 龍に仕えるとコテツは言った。

「龍に仕える一族・・・。」

 コテツは大きな肉を頬張ると頷いた。
 話す事の出来ないコテツに呆れながらアリスが代わりに話し始めた。

「フランコ・トワ・ロンサンティエが現れるまで、世界は龍の逆鱗に触れ荒廃していました。
 人間が龍を怒らせ関係が絶たれる、その以前から龍と交友を深めていた人々がいたのです。
 龍を愛し、共に生き、慎み深く生活を営む人間達が。
 一部の人間の所為で龍は人間を見放しましたが、その慎み深い人達までを罰する事はしなかった。
 龍を愛した人々が密かに集まった場所が辺境の地でした。」

 ディミトリオ・ハクヤは自国の貴族の秘密に驚いた。

「フランコ・トワ・ロンサンティエが龍王に認められ国まで起こす事になった裏には辺境地に住む人々の助力が必須でした。
 その礼にフランコ・トワ・ロンサンティエは龍王の許可を得て辺境の地に宝樹の枝を埋めました。
 辺境の人々はロンサンティエの血筋にではなく龍に仕える者達です。
 フランコ・トワ・ロンサンティエは隠れ蓑として、辺境の人々にブランチの姓を授け、自国の貴族としての権利を与えたのです。
 それ故に龍がロンサンティエの滅亡を望むのなら、ブランチ辺境伯はいつでも反旗を掲げる事でしょう。」
 
 ロンサンティエの血筋でないにも関わらずコテツとアリスが“龍王島”にいた理由が分かりディミトリオ・ロンサンティエは納得した。

「今もブランチ辺境伯家は龍との交流を持っているのだな?」 

 ディミトリオ・ハクヤの問いにコテツとアリスは頷いた。

「そうは言っても、ずっとじゃない。
 龍の姫巫女が誕生すれば、仕える人間を送り込む。
 それ以外は崇拝対象として龍を崇め、ブランチ辺境領を守り続けているだけだ。」

 食事を終えたコテツが口を拭った。

「龍王様によりリリィ様が導かれると、ブランチ辺境伯家はコテツと私を“龍王島”に送り込みました。
 年齢の近い私達は共に成長してきたのですよ。」

 アリスは懐かしそうに皿を片付けを始めた。

 運命を背負っていたのはリリィだけじゃない。
 親元から離れて秘境に送られたコテツとアリス。
 兄の悪政に悩んでいた己が不幸に苦しんでいた過去の自分を諌めるディミトリオ・ハクヤであった。
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