溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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混沌なる後宮

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 コテツ、アリス、そしてブランチ辺境伯家の秘密を聞いたディミトリオ・ハクヤは黙り込んでいたリリィに視線を向けた。
 当のリリィと言えば、先程から興味無さ気に封筒をクルクルと回し、ボーッとしている。

 ここはリリィの離宮。

 正面から見れば美しい白亜の建物は、中に入れば貴族の客人をもてなすには十分な装いが施されていた。
 しかし、一度奥に足を踏み入れれば何とも暖かな家庭的な空間が広がっていた。

 広いおしゃれなダイニングリビングが開放感たっぷりで、陽が射す大きなカウンターキッチンはリリィの拘りが詰まっていた。
 寛ぐ為に用意された家具もリリィの手が加えられており、実に心落ち着く様相だ。

 大きな窓から見えるは、これまた広大に広がる庭であり、驚く事に中央にはキラキラと輝く大きな池が出来上がっていた。

 そのダイニングテーブルに頬杖を付き、リリィは1つの封筒を見つめていたのだ。
 
 それは逃げ帰る際に宰相ムク・フランが置いて行った茶会への招待状であった。

「誰からだ?」

 一目見て封筒の意味を理解したディミトリオ・ハクヤが問うとリリィはつまらなそうに封筒を弾き飛ばした。
 受け取ったディミトリオ・ハクヤは納得したように頷いた。

「・・・皇妃からか。
 まぁ、そうだろうな。」

 国を救うかもしれない龍の姫巫女と繋ぎを取りたい者は星の数ほどにいる。
 現にディミトリオ・ハクヤが朝から自分部屋から逃げてきた理由の1つがリリィが目的の貴族の手のひら返しの面会が面倒だったからである。

 茶会ともなれば、そう簡単にはいかない。
 この国1番の皇族を出し抜き龍の姫巫女を招待する貴族はいないだろう。
 最初は皇妃が出張ってくるのは当たり前の事だった。

「皇妃様って宰相さんの娘だったっけ?」

「あぁ、そうだ。
 名をメッサリーナと言う。」

 リリィは先日の謁見時に皇帝ハイゴール・ウィリ・ロンサンティエの近くに多くの女がいた事を思い出していた。
 その最も近くに居たのが皇妃メッサリーナであろう。

 宰相ムク・フラン侯爵の2番目娘であり美貌と頭脳を兼ね備えたメッサリーナ。

 当時、皇太子だったハイゴール・ウィリと侯爵令嬢であったメッサリーナの婚姻は周囲からも祝福された。

 婚姻を結んだ当初、ハイゴール・ウィリに寵愛されメッサーリナ皇太子妃は2人の子供を授かった。

 移り気なハイゴール・ウィリが次々と側妃や愛妾を作ろうが皇妃として絶対的地位が揺るがなかったのは父親が宰相である事とメッサリーナの2人の子供が継承順位1位と2位と認められているからである。

 皇帝ハイゴール・ウィリと皇妃メッサリーナの間に今尚も愛情が存在するのかは分からないが、メッサリーナ皇妃は後宮という場で絶対的な権力を保有しているのだ。

 そこに皇帝すらも跪くべき存在・・・龍の姫巫女がやって来た。
 想像するにしても心穏やかではないであろう。

「あれはあれで、厄介な女なのだ。」

 ディミトリオ・ハクヤの疲れ切った呟きが、後宮の面倒さを物語っていた。
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