溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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とある男の転換期

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 皇帝陛下の執務室を辞した後のシオン・ポリティス伯爵は案内されるままに皇妃の執務室の応接室に座っていた。

 ほぼ、龍の姫巫女に会って決めると皇帝に言ったと同じのポリティス伯爵も今では素直に受け入れるか、きっぱりと断るかハッキリすれば良かったと後悔している。
 
 心が決まらないまま来てしまい、皇帝ファヴィリエ・ルカに対峙した数分前よりも緊張していた。

 彼が龍の姫巫女を一番最初に見たのは、彼女が前皇帝に謁見した時だった。
 あの時には多くの王都にいた高位貴族が揃い踏みして、立場の弱かったディミトリオ・ハクヤが連れ帰った女を物見遊山に王宮に詰めかけた。
 ポリティス伯爵は末席にて大広間にいたわけだが、登場した龍の姫巫女の美しさ、そして凄まじい力を目にする事になった。
 今では、あの場にいた多くの貴族が粛清され数も大幅に減ったが、ポリティス伯爵はあの時の数少ない目撃者となっている。

 次に目にしたのは、新皇帝となったファヴィリエ・ルカの戴冠式であり宝樹に龍気が満たされた日であった。

 歌う様に祝詞を口にした龍の姫巫女に誘われる様に大きな龍が出現したのは記憶に新しいわけだが、間近で目にした事で彼女の力の強大さに尊敬と共に畏怖の心が生まれた事も事実だった。

 資源が枯渇し、農作物が減っていたロンサンティエ帝国にも少しづつ実りが戻り始めたと報告がきている。
 それに伴い、我先にと儲けを得ようとする商人達で市場が荒れている現状もある。
 
 龍の姫巫女は今、これ以上何をしようと言うのだろうか。
 怖さもあるが、商人として興味が尽きない。

コンコン

 奥の扉がノックされ、入ってきたのは1人の侍女であった。

「ポリティス伯爵。
 お待たせしております。
 こんなに早く対応していただけるとは思っていなかったので、リリィ様の準備が遅れております。
 今しばらくお待ち下さいませ。」

 ポリティス伯爵は、その侍女に見覚えがあった。

「それは失礼しました。
 どうぞ、お気遣いなく願います。
 失礼ですが、貴方はウィッドヴィル伯爵令嬢ではありませんか?」

 そう言われた彼女は微笑むと頷いた。

「覚えていただいており光栄です。
 当主ラザロ・ウィッドヴィルの妹ローラにございます。
 今はリリィ様の侍女をしております。
 もう、令嬢などと呼んで頂ける歳ではございませんし、どうぞ、ローラとお呼び下さい。」

「そうでしたか。
 ローラ様。そう呼ばせて頂きます。」

 ポリティス伯爵とて、目の前の女性の素性は知っている。
 ウィッドヴィル伯爵の右腕として領地を運営していた才女である。
 何よりも彼女が先の皇帝の弟の1人と婚約関係にあった事、そして、その婚姻が結ばれる事なく相手の皇子は死去してしまい悲しみにくれる彼女が先帝ハイゴール・ウィリからの側妃の打診を断った事は有名である。
 婚約者の皇弟が兄である先帝ハイゴール・ウィリの策略で命を落としたという事は実しやかに囁かれてきた事である。

 皇室を憎んで然るべき彼女が再び王宮に姿を現した。
 そして、龍の姫巫女を主人としている事にポリティス伯爵は感慨深く感じるのだった。
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