溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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積み重ねられた嘘の瓦解

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 アバリシア・ルマンは周囲を見渡し、あまり状況は良くないのだと悟った。
 
 本来であるならば、嬉々として報告を上げてくる者達が今日は目を合わせようとしていない。
 隣で微笑む夫フェーブルは、才能としては凡庸で当てにはならない。
 
 そろそろ溜息を吐きそうになる時だった。
 国王の執務室に出入りしている大臣の1人が手を挙げた。

「国王よりの正式な通達は今も御座いません。
 ロンサンティエ帝国の皇帝に会ったまでは分かっているのですが、どうも少人数での面会ゆえに人員を潜り込ませる事ができませんでした。」

「宰相は?」

 大臣の報告にアバリシア・ルマンは問いかけた。

「一緒にロンサンティエの皇帝と面会しているようです。」

「そう。」

 思案顔のアバリシア・ルマンに騎士が立ち上がった。

「どうやら皇帝の執務室にて面会をしている様ですが、間取りが複雑で奥の話が聞こえる事がないとの事です。」

 間取り云々を理解するのは難しいが、盗み聞きは出来ないと言うのは分かった。

 舌打ちしたいのを飲み込んでいると、騎士が座ったのを見計らってローブを着た男が口を開いた。 

「気になる事がある。」

 不遜な態度の男であるが、アバリシア・ルマンにとっては最も信頼する家臣だった。
 祖父から、最高の家臣こそがアバリシア・ルマンの最大の武器だ。

 その1人に話を促すと、男は己の腕に巻き付いた刺青を撫でた。

「帝国に放った偵察からの情報が上がってこない。」

 その報告にはアバリシア・ルマンも奥歯を噛み締めた。

「先の・・・龍の姫巫女がフロドゥールの王城に姿を見せた時だ。
 愚かなダチェットとの呪印の繋がりが露見した事によって、小娘に良い様にやられてしまった。
 だから今度は、もっと綿密に計画を立て、帝国の王宮に偵察を送り込んだ。
 詳しくは言わんが、この刺青は、その証さ。
 だが、こっちの報告も上がって来ていない。」

 感情を露わにしない彼らにしては珍しく悔しそうな声だ。

「ならば、計画の進捗が分からぬと言う事ですね?」

 ここにきて、アバリシア・ルマンは耐えられずに大きな溜息を吐いた。
 その溜息は集まった者達を凍り付かせた。

 皆が、主人と敬愛するアバリシア・ルマンの期待に応えられなかった事に顔面を青白くさせ苦渋な顔をしている。

「正確には後宮に向かう。という報告で連絡は途絶えている。
 相手は龍と龍に魅入られた小娘だ。
 簡単な任務だとも思っていないし、準備を怠ってはいない。
 だが、報告の1つもないとなれば計画を見直す必要があるだろう。」

 ローブの男の言葉にアバリシア・ルマンはついに声を荒げた。

「忌々しいロンサンティエ帝国め。
 我らから奪い取った物の数しれず。
 龍すらも独占する浅ましさに呆れるわ!」

 淑女の仮面をかなぐり捨てたヒステリックな叫びは部屋中を痺れさす。
 
 そこに1つの聞きなれない声が響き渡った。

「うるさいババァね。」

 ギョッとする面々の前には、誰もがハッとする神々しいまでに美しい娘た立っていた。

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