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積み重ねられた嘘の瓦解
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しおりを挟む「うるさいババアね。」
鈴音の様な軽やかな声が部屋に響いた。
突如として現れたのは、神々しいまでに美しい娘であり、誰の目も一瞬で奪われていた。
優しげに微笑む、その可憐な様子とは裏腹に一同に有無を言わせない存在感。
アバリシア・ルマンは相手の正体を悟りながらも聞かないわけにはいかなかった。
「・・・何者だ。」
辛うじて震える声を抑えたアバリシア・ルマンに娘はクスクスと笑っている。
「あら?
私の事を招待してくれていたかと思っていたわ。
謝らないといけないわ。
貴方が寄越した者達のノックが五月蝿いと、私の侍従と侍女がブチのめしてしまったの。
御免なさいね。」
すると、娘は優雅にドレスの片方の裾を持ち上げると小首を傾げた。
「皆さん、初めまして。
“龍王”より当代の龍の姫巫女の任を仰せつかまりました。
リリィと申します。
短いお付き合いとなりますが、どうぞよしなに。」
真っ白な髪を輝かせ、光を纏わせた娘が自己紹介をしても、誰1人として声を上げる事が出来ずにいた。
その中において、1番最初に動いたのは武人としての訓練を重ねた騎士であった。
慌ててアバリシア・ルマンを庇うように立つと対峙したリリィに向けて剣の柄を握りしめた。
「折角、会いに来たのにお茶の一杯も出す余裕もないのかしら?」
小馬鹿にするように微笑むリリィに、ギリギリとアバリシア・ルマンの歯軋りの音が聞こえた。
「・・・龍の姫巫女。」
世界にとって特別な存在である娘を前に、アバリシア・ルマンは何とも言えぬ屈辱感が湧いてきた。
目の前の娘は美しい。
アバリシア・ルマンが見てきた中でも随一の美貌である事は間違いない。
加えて、龍の加護を得ている神秘がリリィの可憐だけじゃない妖艶さに拍車をかけていた。
「貴方がアバリシア・ルマンね。」
トコトコと近づくリリィにアバリシア・ルマンはギョッとし、そして彼女を守る騎士も抜いてはならないと分かっていながらも剣を握る手に力が入っていた。
「私は厄介なオバサンと話に来たのよ。
邪魔しないで。」
今にも剣を抜きそうな騎士にリリィが息を吹き掛ければ、塵の様に吹き飛んでいく。
「「「「な!!」」」」
見ていた者達は信じられない光景に驚き立ち上がる者や、椅子から転げ落ちる者。
ダラダラと汗を掻き、何かに祈りを捧げる様子を見せる者もいた。
自分を守る騎士が吹き飛ばされ、龍の姫巫女のとの間に何者いなくなった時、アバリシア・ルマンはベールの中で悔しそうに顔を歪めていた。
自分の足元で泡を吹いて倒れている夫に期待などしていなが、盾にすらならないと分かれば幻滅もした。
「・・・無礼者。
ここが、何処だか分かっているのか?」
何とか吐き出した言葉は、なんとも陳腐な台詞だった。
登場から今まで笑みを絶やさずにいたリリィは、より一層笑みを深めた。
「勿論よ。
滅びゆくルマン家の当主殿。
貴方には特等席で見せてあげるわ。
変わりゆく国、そして価値観。
信じてきたものが、全て偽りであったと知った時。
貴方は、どんな顔をするのかしら?」
部屋にはリリィのコロコロと笑う声だけが響いていた。
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