417 / 473
積み重ねられた嘘の瓦解
397
しおりを挟む
今この時、アバリシア・ルマンの味方は誰もいなかった。
隣に侍らせて置くだけの見目の良い夫も、泡を吹いて気絶している。
先程まで、自分に傅いていた者達は今だ外で惚けた顔をして、こちらを向きもしない。
1番の武器であったはずの魔法師は火龍の逆鱗に触れて消し炭となった。
誰も彼もが役立たずと一蹴するには、目の前の龍の姫巫女の齎した状況は異常だった。
ローブの男だったモノを見つめていたアバリシア・ルマンにリリィの声が届いた。
「道具が1つ壊れて残念ね。」
リリィのその物言いにアバリシア・ルマンの眉がピクリと動いた。
「あら?そう思っていたんじゃない?
違った?
彼らは、この国でも屈指の魔法使いだと聞いたわ。
まぁ、魔法が使えない国だったら少し使える位でも重宝されるわよね。
聞いてない?
彼らが送り込んだカランカの事。」
アバリシア・ルマンはリリィの言っている事を理解していた。
“ドラゴニルス”が放ったカランカは、ロンサンティエ帝国にて諜報活動する上で重要な働きを見せていた。
国王レイド・フロドゥールに進言し、諜報活動に力を入れてきたのはアバリシア・ルマンだった。
先帝ハイゴール・ウィリの時代はザルと言っていいほど楽に情報を入手できていた。
しかし、若き皇帝ファヴィリエ・ルカが皇帝位を継ぐと情報が送られてくる事がなくなった。
これは皇帝が王宮の改革に動いた事も大きいが、目の前の龍の姫巫女の仕業である事は明白であった。
「王宮で魔法や、呪詛が使えないと分かったから今度は直接に生き物を使ったのよね?
可哀想なカランカと同じく、あの男達の奴隷として働かされていた動物達・・・。
申し訳ないけれど、彼らなら既に解放されているわ。」
ハッと顔を上げるアバリシア・ルマンに龍の姫巫女リリィはニッコリと微笑んだ。
「貴方達が最初に送り出してきたカランカ。
彼が自分と同じ境遇の生き物達の助けとなって、奴隷契約を解消させたのよ。」
アバリシア・ルマンには理解できなかった。
カランカは動物だ。
己の考えで強力な奴隷契約を解除できる訳がない。
しかし、ロンサンティエ帝国に送り込んだ者達からの情報は頓挫している。
その事実にアバリシア・ルマンは小刻みに震えた。
「龍ですら獣と蔑む貴方達だもの。
小動物を道具として使う事への罪の意識もないのでしょう?
でもね。
あの子達も生き物だもの。
必死に己の運命と争う事だってするのよ。
最初に送られてきたカランカは、私の従者が気に入って共に行動しているわ。
一緒におやつを分け合ったり、お昼寝したり、見えない鎖に縛られているより、こっちの方が素敵じゃない。」
アバリシア・ルマンは自分達の作戦が見事に見破られていた事を知った。
『計略は露見しなければ真実となる。』
敬愛する祖父の言葉を思い出し、アバリシア・ルマンは己の失策を嘆いた。
「アバリシア・ルマン女侯爵・・・。
他国に密偵を放った罪を認めるか?」
国王レイド・フロドゥールの言葉にアバリシア・ルマンは乾いた笑い声を出した。
「祖父の罪?ルマン家が国の裏切り者?
王よ。
我が一門が、この国にどれだけ貢献した事か忘れたとは言わせんぞ。
この国は我がルマン家が支えてきたも同じ。
我らルマンを罪人と断罪するならば、それはフロドゥール国全体の罪であり、国王である貴方にも責がある。」
アバリシア・ルマンは国王を巻き込み最後の勝負に出ようとしている。
それはまるで国王が自分を・・・ルマン家を切り捨てる事が出来ない事を確信している様だった。
しかし・・・
「その通りだ。」
国王レイド・フロドゥールの一言はアバリシア・ルマンにとって誤算だった。
隣に侍らせて置くだけの見目の良い夫も、泡を吹いて気絶している。
先程まで、自分に傅いていた者達は今だ外で惚けた顔をして、こちらを向きもしない。
1番の武器であったはずの魔法師は火龍の逆鱗に触れて消し炭となった。
誰も彼もが役立たずと一蹴するには、目の前の龍の姫巫女の齎した状況は異常だった。
ローブの男だったモノを見つめていたアバリシア・ルマンにリリィの声が届いた。
「道具が1つ壊れて残念ね。」
リリィのその物言いにアバリシア・ルマンの眉がピクリと動いた。
「あら?そう思っていたんじゃない?
違った?
彼らは、この国でも屈指の魔法使いだと聞いたわ。
まぁ、魔法が使えない国だったら少し使える位でも重宝されるわよね。
聞いてない?
彼らが送り込んだカランカの事。」
アバリシア・ルマンはリリィの言っている事を理解していた。
“ドラゴニルス”が放ったカランカは、ロンサンティエ帝国にて諜報活動する上で重要な働きを見せていた。
国王レイド・フロドゥールに進言し、諜報活動に力を入れてきたのはアバリシア・ルマンだった。
先帝ハイゴール・ウィリの時代はザルと言っていいほど楽に情報を入手できていた。
しかし、若き皇帝ファヴィリエ・ルカが皇帝位を継ぐと情報が送られてくる事がなくなった。
これは皇帝が王宮の改革に動いた事も大きいが、目の前の龍の姫巫女の仕業である事は明白であった。
「王宮で魔法や、呪詛が使えないと分かったから今度は直接に生き物を使ったのよね?
可哀想なカランカと同じく、あの男達の奴隷として働かされていた動物達・・・。
申し訳ないけれど、彼らなら既に解放されているわ。」
ハッと顔を上げるアバリシア・ルマンに龍の姫巫女リリィはニッコリと微笑んだ。
「貴方達が最初に送り出してきたカランカ。
彼が自分と同じ境遇の生き物達の助けとなって、奴隷契約を解消させたのよ。」
アバリシア・ルマンには理解できなかった。
カランカは動物だ。
己の考えで強力な奴隷契約を解除できる訳がない。
しかし、ロンサンティエ帝国に送り込んだ者達からの情報は頓挫している。
その事実にアバリシア・ルマンは小刻みに震えた。
「龍ですら獣と蔑む貴方達だもの。
小動物を道具として使う事への罪の意識もないのでしょう?
でもね。
あの子達も生き物だもの。
必死に己の運命と争う事だってするのよ。
最初に送られてきたカランカは、私の従者が気に入って共に行動しているわ。
一緒におやつを分け合ったり、お昼寝したり、見えない鎖に縛られているより、こっちの方が素敵じゃない。」
アバリシア・ルマンは自分達の作戦が見事に見破られていた事を知った。
『計略は露見しなければ真実となる。』
敬愛する祖父の言葉を思い出し、アバリシア・ルマンは己の失策を嘆いた。
「アバリシア・ルマン女侯爵・・・。
他国に密偵を放った罪を認めるか?」
国王レイド・フロドゥールの言葉にアバリシア・ルマンは乾いた笑い声を出した。
「祖父の罪?ルマン家が国の裏切り者?
王よ。
我が一門が、この国にどれだけ貢献した事か忘れたとは言わせんぞ。
この国は我がルマン家が支えてきたも同じ。
我らルマンを罪人と断罪するならば、それはフロドゥール国全体の罪であり、国王である貴方にも責がある。」
アバリシア・ルマンは国王を巻き込み最後の勝負に出ようとしている。
それはまるで国王が自分を・・・ルマン家を切り捨てる事が出来ない事を確信している様だった。
しかし・・・
「その通りだ。」
国王レイド・フロドゥールの一言はアバリシア・ルマンにとって誤算だった。
197
あなたにおすすめの小説
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる