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頑張り方が分からない
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時間は少し戻り…
王子バルドからあと半月で基礎教育を終えるよう言われた男爵令嬢サラ。自室へ戻り、椅子に腰掛けると頭の中で言われた言葉を思い出し項垂れた。
(バルド様ひどいわ…私だって一生懸命頑張ってるのに。身分が違えば受けている教育の質だって変わるもの。時間がかかるのは仕方ないじゃない。)
でも…だって…と、頭の中で文句を言いながら、自分は悪くないと思い込もうとしている。
選んだ僕に後悔させないで…
君が良いと言った言葉を信じさせて…
バルドの真剣な表情と言われた言葉が頭の中をよぎる。
彼なりの激励の言葉のようにも感じ、心がざわつく。
(このノート。何ヶ所も折り曲げた跡がある。授業の内容に細かく付け加えられているわ。ここも、ここも…数字は何かしら?…)
サラが開いたノートは幼き頃のバルドのノート。授業で言われた言葉、習った内容はもちろんのこと、自分の中の疑問点や掘り下げたい場所には参考書のページ数がメモされ、調べたことは小さな書き込みで追加されている。
サラは1冊目のノートの中身をすべて理解した訳ではないが、このノートの持ち主は書き込みが多く、授業の内容について詳しく調べているのだと感じた。せっかくなので、次のノートも開いてみる。
(とても幼い子のようね。字が拙いわ。)
パラパラッとめくり、その下の2冊目も手に取る。どうやら同じ人物のようだけど、先程よりもキレイに読める。
(ん?この内容1冊目と同じ流れね。復習ってことかしら?)
1冊目より字も読みやすく、内容も分かりやすくなっている。さらに、その下のノートを手に取るとお手本のようなキレイな文字が並んでいた。
(また同じ方のようね。内容の流れも…同じはずなんだけど、見た事ない文字が出てくるわ。びっしりと書き込まれてて読むのが大変…)
これは第2王女シャルロッテのノート。彼女は基礎教育は幼き頃に終えた。だが、努力家の彼女はその内容を忘れないように何度も見直し、復習も兼ねて勉強し直していた。そして、さらにもう1度。今度は社交界に活かせるように、内容を違う視点から捉えるように再度見直した。彼女は天才ではない。繰り返すことで忘れないように、内容をいろんなものと紐づけて自分の知識として話せるように心がけていた。
(時間に余裕がある方なのかしら。同じ内容を繰り返しなんて大変なのね。)
サラはノートを見るだけで、書いた本人の意図や理解の深さを知ることが出来ずにいた。しっかりと読み込むだけでも彼女の勉強不足は補われるだろうに…価値のあるものは、全ての人に理解されるとは限らない。
その後も、バルドに渡されたノートに目を通す。どのノートも自分のノートに比べ、書いてある内容が多く、見ても分からない文字や内容もたくさんあった。今の自分よりも幼そうなノートも多い。けど、必死に勉強しているのは伝わってくる。
(高位貴族は10歳で基礎教育を終えている。その言葉はきっと本当なのだゎ…)
サラは大きなため息を吐いた。どのノートも自分のものとはまるっきり違う。基礎教育はただの通り道なのだ。なのにそんな初歩の部分で自分は躓いている…
(どうしよう…泣きたくなってきた。)
あと半月で基礎教育を終えなければならない。じゃないとこの王宮から追い出されてしまう。そう言われても…
気持ちは焦ってばかりで、どうすれば良いのか分からない。頑張らなきゃ、とは思っているのだが、覚え間違えたり、パッと答えが出てこなかったり…
そうょ、このノートの持ち主たちだって、初めから完璧なはずがないわ。私みたいに間違ってたハズ…ノートを見つめながら、あれこれ自問自答を繰り返す。
バルドたちだって完璧な訳ではない。ただ違うのは、サラにとって私は普通、この人たちは凄い、と思ってしまっていること。
バルドたちは王家の人間として、他者から見られる自分を考えることが出来る。民から慕われる王子、周りから認められた人間、そんな理想の姿になるまで、諦めずに努力し続けることができた。
サラは王家の人間ではない。彼女がバルドの横に並ぶためには、どうあるべきか…王家の人間として相応しい姿を想像しなければならない。簡単ではないからこそ、目標や向上心は必要となる。今の彼女は悲嘆に暮れるばかりで前に進むことが出来ずにいる。
バルドがこのノートたちを渡した意味は?彼は何を伝えようとしていた?振り返れば出来ることは見えてくるハズなのだが、今のサラには難しい。どうすれば良いのか、頑張り方がさっぱり分からないのだった。
王子バルドからあと半月で基礎教育を終えるよう言われた男爵令嬢サラ。自室へ戻り、椅子に腰掛けると頭の中で言われた言葉を思い出し項垂れた。
(バルド様ひどいわ…私だって一生懸命頑張ってるのに。身分が違えば受けている教育の質だって変わるもの。時間がかかるのは仕方ないじゃない。)
でも…だって…と、頭の中で文句を言いながら、自分は悪くないと思い込もうとしている。
選んだ僕に後悔させないで…
君が良いと言った言葉を信じさせて…
バルドの真剣な表情と言われた言葉が頭の中をよぎる。
彼なりの激励の言葉のようにも感じ、心がざわつく。
(このノート。何ヶ所も折り曲げた跡がある。授業の内容に細かく付け加えられているわ。ここも、ここも…数字は何かしら?…)
サラが開いたノートは幼き頃のバルドのノート。授業で言われた言葉、習った内容はもちろんのこと、自分の中の疑問点や掘り下げたい場所には参考書のページ数がメモされ、調べたことは小さな書き込みで追加されている。
サラは1冊目のノートの中身をすべて理解した訳ではないが、このノートの持ち主は書き込みが多く、授業の内容について詳しく調べているのだと感じた。せっかくなので、次のノートも開いてみる。
(とても幼い子のようね。字が拙いわ。)
パラパラッとめくり、その下の2冊目も手に取る。どうやら同じ人物のようだけど、先程よりもキレイに読める。
(ん?この内容1冊目と同じ流れね。復習ってことかしら?)
1冊目より字も読みやすく、内容も分かりやすくなっている。さらに、その下のノートを手に取るとお手本のようなキレイな文字が並んでいた。
(また同じ方のようね。内容の流れも…同じはずなんだけど、見た事ない文字が出てくるわ。びっしりと書き込まれてて読むのが大変…)
これは第2王女シャルロッテのノート。彼女は基礎教育は幼き頃に終えた。だが、努力家の彼女はその内容を忘れないように何度も見直し、復習も兼ねて勉強し直していた。そして、さらにもう1度。今度は社交界に活かせるように、内容を違う視点から捉えるように再度見直した。彼女は天才ではない。繰り返すことで忘れないように、内容をいろんなものと紐づけて自分の知識として話せるように心がけていた。
(時間に余裕がある方なのかしら。同じ内容を繰り返しなんて大変なのね。)
サラはノートを見るだけで、書いた本人の意図や理解の深さを知ることが出来ずにいた。しっかりと読み込むだけでも彼女の勉強不足は補われるだろうに…価値のあるものは、全ての人に理解されるとは限らない。
その後も、バルドに渡されたノートに目を通す。どのノートも自分のノートに比べ、書いてある内容が多く、見ても分からない文字や内容もたくさんあった。今の自分よりも幼そうなノートも多い。けど、必死に勉強しているのは伝わってくる。
(高位貴族は10歳で基礎教育を終えている。その言葉はきっと本当なのだゎ…)
サラは大きなため息を吐いた。どのノートも自分のものとはまるっきり違う。基礎教育はただの通り道なのだ。なのにそんな初歩の部分で自分は躓いている…
(どうしよう…泣きたくなってきた。)
あと半月で基礎教育を終えなければならない。じゃないとこの王宮から追い出されてしまう。そう言われても…
気持ちは焦ってばかりで、どうすれば良いのか分からない。頑張らなきゃ、とは思っているのだが、覚え間違えたり、パッと答えが出てこなかったり…
そうょ、このノートの持ち主たちだって、初めから完璧なはずがないわ。私みたいに間違ってたハズ…ノートを見つめながら、あれこれ自問自答を繰り返す。
バルドたちだって完璧な訳ではない。ただ違うのは、サラにとって私は普通、この人たちは凄い、と思ってしまっていること。
バルドたちは王家の人間として、他者から見られる自分を考えることが出来る。民から慕われる王子、周りから認められた人間、そんな理想の姿になるまで、諦めずに努力し続けることができた。
サラは王家の人間ではない。彼女がバルドの横に並ぶためには、どうあるべきか…王家の人間として相応しい姿を想像しなければならない。簡単ではないからこそ、目標や向上心は必要となる。今の彼女は悲嘆に暮れるばかりで前に進むことが出来ずにいる。
バルドがこのノートたちを渡した意味は?彼は何を伝えようとしていた?振り返れば出来ることは見えてくるハズなのだが、今のサラには難しい。どうすれば良いのか、頑張り方がさっぱり分からないのだった。
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