決められたレールは走りません

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フィアーノの助言

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「王子は帰ったのか?」

「はい。」

奥にいたフィアーノとヴァンが戻ってきた。

「話してみてどうだった?」

(入店してきた時から落ち着いていたし、冷静に話していたから大きな問題はないんだろうが。)

「謝罪を頂きました…あとは、選ばれなかった訳も教えてもらいました。」

「へぇー。何て?」

「…意外と私、王家の方に評価されてたみたいです…ご自分に自信がなくて、身近に接することの出来た女性に惹かれてしまった、と。」

「………まぁ、バカだったんだな。でもま、謝れるってことは評価出来る。おえらいさんはなかなか否を認めれないものだからな。」

「結構深く頭下げてましたからね…。」


男性陣2人は、彼の謝罪が相当衝撃的だったようである。

「噂の男爵令嬢とはどう知り合ったんだ?婚約者選んでる身なのに、それそっちのけで構ってたのか?」

(構ってたって…何か誤解を生むような表現ね…)

「気晴らしで下町に出られた時に出会ったそうです。いつも市井に下りる時は護衛もついてますので、側近や近衛騎士の中に協力者がいたんだと思います…」

「王子が平民の真似事ね……まぁ、普段見慣れない場所とか慣れないことしてたら、良い人に出会った気にもなるかもね。」

「彼女に魅力があったとは、思わないんですか?」


「だって、結局すぐ見放されてるじゃん?」

「………。」

「本当に惹かれた相手ならそうなんないよ?実力が伴ってなくても、頑張ってたら結果はついてくるし、見てる側も応援したくなるでしょ?多分、男爵令嬢は考え方が致命的だったんじゃない?」

「そういうものでしょうか??」

男爵令嬢サラについては、シャルノアも知っていることが少ないので、同じ婚約者候補としてどうだったのか判断出来ずにいる。

「慣れないことしてるのは今のシャルだってそうだろ?けど、いっつもニコニコしてるし、出来ないことでも身につけようと努力してる。見てる側は、応援したくなるし、むしろ元気こっちが貰ってるわ。」

「…そうですか?」

慣れない褒め言葉にシャルノアは照れる。

「1度決めたこと覆すのも勇気がいるだろ。王子の評価に直接繋がる訳だし。男爵令嬢側にも問題があったんだろ。王子の肩もつ訳じゃないが、早々に目が覚めたコトは評価出来るね。シャルと王子ってデートとか、お茶とか…したことないの?婚約者候補筆頭だったんだろ?」

「王宮ですれ違って挨拶したりはしてましたよ?デートとかお茶は、候補者の1人って立場でしたし、教育時間の方が重視されてたので。」


「そういうもん?それなら候補者それぞれとお茶すればいいのに。人となり知らずに婚約者決められるってのは、ちょっと王子に同情するね…。シャルはそう思わないの?」

「…貴族は政略結婚ってのが当たり前ですし、5歳から王宮に通っていたので、そういうものだと…。」

戸惑うように話すシャルノアを見て、考える余裕もなかったんだな、とフィアーノは気づく。

「お前は、少しは夢を見ろ!かっこいい王子様が現れる、とか恋愛結婚するとかさ、若い頃はもっと恋に憧れるもんだろ?政略結婚するにしても、相手が誰でもいいってのと、この人がいいってのは違うぞ??」


 フィアーノの言葉に動揺するシャルノア。そもそも異性に対する恋心など彼女には無縁なこと。言われるがままに受け入れていたのはここもだったのか、と気づく。

「居場所もバレたし、あの様子だと王子、しょっちゅう来るんじゃないか?これからアピールが始まるんだから覚悟しとけ。」

ポンっとシャルノアの頭に手を置くと、ニヤニヤと笑い出した。

「おそらく王子、本格的にシャルを落とす気で来るぞ。」

その言葉に、シャルノアはどう反応していいのか分からなかった。
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