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バルドの気持ち
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(ひとまず謝罪は出来た…マイナスのスタートが少しはゼロに近づいたかな。)
帰りの馬車に揺られながら、バルドはブランシェでの会話を思い出していた。
シャルノアの捜索を進めるも、全く手がかりが掴めずにいたバルドのもとに、再び新たな情報をもたらしたのは、彼女の義母ユリーナだった。カリニャンの街にある、カフェ・ブランシェ 彼女はそこで働いているという。情報の真偽を確かめるために下見にいった部下からの報告を受け、すぐさま自分も向かった。
王子という身分を隠せるように準備し、こじんまりとした店の扉をくぐると店内は思いの外賑わっていた。空いているカウンター席に向かい、目の前の人間を目視して驚く。前国王弟にそっくりな人物がキッチンで料理を作っていた。メニューに隠れて周りを見渡すと、髪色は違うが、シャルノアだと思われる女性が別のお客さんの対応をしていた。
(もしかして、こないだ一緒にいたのがシャルノア嬢だったのか…)
近くまできていたのに、自身の力で見つけれなかったことに悔しさがつのる。店内の様子を見ていると、店員同士の連携がしっかりと取れていることがよく分かる。活き活きと動き回る彼女の表情を見て、楽しんで働いていることが伝わってきた。王宮では感情を表に出さないようにしていたのだと、気づかざるを得ない。
(王宮では笑っている所なんて、見たことないものな…)
メニューから選び、注文を済ますと、バルドはキッチンで働く彼の動きを見ていた。何度見ても、前国王弟にそっくりな顔をしている。王宮を出てから、どんな生活をしてきたのだろうか…しばらく見ているうちに、彼にたいしても興味が湧き始めていた。食事をとりながら、シャルノアの様子を見ていたら、急に前から話しかけられた。
「あの子に用なんだろ?この席で待ってればいいよ。他のお客さんが帰ったら話す時間あるから。」
そう話してくる彼はニカッと笑うと、頼んでいないのにおつまみを差し出してくれた。
「俺、店長のフィアーノ。あの子のお客さんよくここで待ってるから。俺らも慣れてんの。もうちょいかかると思うから、これ、食べてて。」
「ありがとうございます…。」
(王子ってのはバレてないといいな。)
その後、シャルノアと2人で、向かい合って話をする時間がもてた。謝罪をし、バルド自身の気持ちも少しだけ伝えることができた。
(思っていたよりも、話しやすかった。)
謝罪をする、という目的もあり緊張していたが、シャルノアと話をする機会というのも初めてだった。拒絶されたらどうしようか…でも、それだけのコトをしでかして傷つけてしまっているのだから…と、頭の中では冷静になるよう、自分に必死に言い聞かせていた。
対面して、まず思ったこと。キレイだなあ。彼女が高嶺の花と言われることに納得した。白シャツに紺のラフジーンズ、エプロンというシンプルな姿だからこそ、彼女の容姿の良さが際立つ。魔道具で髪色を変えているのだが、気品溢れる雰囲気は隠しようがない。なんてことない顔で座っているが、内心彼女と向かい合っていることにドキドキしていた。
話を進めるうちに、バルドは素直な気持ちを伝えることにためらいがなくなっていた。シャルノアの目を見て、自分の気持ちを理解してもらいたい、と思い始めていた。馬鹿なことをしてしまったと後悔すると共に、サラに惹かれてしまった自分の恥ずかしさが見えてきて頭を抱えたくなった。そして、自分は婚約者とこうやって身近で話す機会が持ちたかったんだと気付かされた。誰かから知らされる話ではなく、自分の目で相手の反応が見れる。機敏な反応がすぐ見れるというのは、思っていたよりも自分にとって好ましい状況らしい。
(焦ることはない。もっと気楽に話して貰えるように、自分が頑張るのみだ。)
バルドにとってサラ嬢が初恋だったとするならば、シャルノアは次の恋になるだろう。彼女に心から許してもらいたい、もっと仲良くなりたい、と思い始めていた。自分の恋心が動き始めていることに無自覚なのが、バルドのダメなところかもしれない。
帰りの馬車に揺られながら、バルドはブランシェでの会話を思い出していた。
シャルノアの捜索を進めるも、全く手がかりが掴めずにいたバルドのもとに、再び新たな情報をもたらしたのは、彼女の義母ユリーナだった。カリニャンの街にある、カフェ・ブランシェ 彼女はそこで働いているという。情報の真偽を確かめるために下見にいった部下からの報告を受け、すぐさま自分も向かった。
王子という身分を隠せるように準備し、こじんまりとした店の扉をくぐると店内は思いの外賑わっていた。空いているカウンター席に向かい、目の前の人間を目視して驚く。前国王弟にそっくりな人物がキッチンで料理を作っていた。メニューに隠れて周りを見渡すと、髪色は違うが、シャルノアだと思われる女性が別のお客さんの対応をしていた。
(もしかして、こないだ一緒にいたのがシャルノア嬢だったのか…)
近くまできていたのに、自身の力で見つけれなかったことに悔しさがつのる。店内の様子を見ていると、店員同士の連携がしっかりと取れていることがよく分かる。活き活きと動き回る彼女の表情を見て、楽しんで働いていることが伝わってきた。王宮では感情を表に出さないようにしていたのだと、気づかざるを得ない。
(王宮では笑っている所なんて、見たことないものな…)
メニューから選び、注文を済ますと、バルドはキッチンで働く彼の動きを見ていた。何度見ても、前国王弟にそっくりな顔をしている。王宮を出てから、どんな生活をしてきたのだろうか…しばらく見ているうちに、彼にたいしても興味が湧き始めていた。食事をとりながら、シャルノアの様子を見ていたら、急に前から話しかけられた。
「あの子に用なんだろ?この席で待ってればいいよ。他のお客さんが帰ったら話す時間あるから。」
そう話してくる彼はニカッと笑うと、頼んでいないのにおつまみを差し出してくれた。
「俺、店長のフィアーノ。あの子のお客さんよくここで待ってるから。俺らも慣れてんの。もうちょいかかると思うから、これ、食べてて。」
「ありがとうございます…。」
(王子ってのはバレてないといいな。)
その後、シャルノアと2人で、向かい合って話をする時間がもてた。謝罪をし、バルド自身の気持ちも少しだけ伝えることができた。
(思っていたよりも、話しやすかった。)
謝罪をする、という目的もあり緊張していたが、シャルノアと話をする機会というのも初めてだった。拒絶されたらどうしようか…でも、それだけのコトをしでかして傷つけてしまっているのだから…と、頭の中では冷静になるよう、自分に必死に言い聞かせていた。
対面して、まず思ったこと。キレイだなあ。彼女が高嶺の花と言われることに納得した。白シャツに紺のラフジーンズ、エプロンというシンプルな姿だからこそ、彼女の容姿の良さが際立つ。魔道具で髪色を変えているのだが、気品溢れる雰囲気は隠しようがない。なんてことない顔で座っているが、内心彼女と向かい合っていることにドキドキしていた。
話を進めるうちに、バルドは素直な気持ちを伝えることにためらいがなくなっていた。シャルノアの目を見て、自分の気持ちを理解してもらいたい、と思い始めていた。馬鹿なことをしてしまったと後悔すると共に、サラに惹かれてしまった自分の恥ずかしさが見えてきて頭を抱えたくなった。そして、自分は婚約者とこうやって身近で話す機会が持ちたかったんだと気付かされた。誰かから知らされる話ではなく、自分の目で相手の反応が見れる。機敏な反応がすぐ見れるというのは、思っていたよりも自分にとって好ましい状況らしい。
(焦ることはない。もっと気楽に話して貰えるように、自分が頑張るのみだ。)
バルドにとってサラ嬢が初恋だったとするならば、シャルノアは次の恋になるだろう。彼女に心から許してもらいたい、もっと仲良くなりたい、と思い始めていた。自分の恋心が動き始めていることに無自覚なのが、バルドのダメなところかもしれない。
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