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第1章 前世を思い出した悪役令嬢は、皇太子の執着に気が付かない

第20話 デートに行こう1

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「イザベル様、贈り物が届きました」

 呆れたような様子でミーアはイザベルへと告げる。それを聞いたイザベルも珍しく溜め息をついた。

「何度ももう頂けないと話してるのだけど、困ったわね」

 イザベルの形の良い眉が下がる。そんな顔も美しいとミーアは今日もイザベルの美貌を間近で堪能していた。

 とりあえず運んでもらった贈り物は、花束にアクセサリー、ドレス、靴、鞄、扇、オルゴール、写真立て、万年筆、書籍、人気のお菓子、そして手紙が入っていた。

 贈り物の多さに顔をひきつらせながらもイザベルは手紙を開ける。そこには、観劇のチケットとが入っていて、送ったドレスを着て一緒に観劇に行って欲しい、とルイスからのお誘いが書かれていた。


「ミッミミミミミミミーア!!」
「はいはい、ミミミミミーアに何のご用ですか?」

 このやり取りも既に何回目になるだろう。皇太子殿下の手紙や言葉にイザベルが振り回されるのは、目覚めてから2週間ほど経った今では日常と化した。

「殿下が、その……」
「デートのお誘いですか?」

 ボンッと音が出そうなほど朱に染まったイザベルにミーアは笑いを堪える。

 (前はデートのお誘いが来ると高笑いしながら小躍りしていたのに……)

 性悪だった頃のイザベルが小躍りしている姿を見るのが実は好きだったミーア。
 叩かれたり、罵られたりしたけれど、ルイスからの誘いで喜んでいるイザベルは見ていて少し面白かったのだ。
 もちろん、表情には一切出さなかったが。

「それで、どちらに行こうと書かれているのですか?」
「観劇に誘っていただいたのだけど、これを着けていっても良い場所かしら……」

「なりません!!」

 イザベルが取り出したのは、特注で作らせた仮面。それは、ミーアからすれば奇妙なもので、初めて見た時にはイザベルのセンスを本気で疑った。
 それなのにルイスは仮面を褒めるものだから、自身の感覚がおかしくなったのではと思ったのも記憶に新しい。

「不審者とみなされて、劇場に入れなくなりますよ」
「顔が見えなければ、不審な者がいても分からないものね。警備上、仕方がないとはいえ、残念だわ」

 残念そうに仮面を撫でながら、イザベルは贈られた藤色のドレスを見て頬を染めた。その色はルイスの瞳よりも少し薄い色だが、十二分に彼を連想させた。

 そんなイザベルを見て、ミーアはどう判断すべきか迷う。


 (うーん。ルイス殿下の一方通行かと思ってたけど、イザベル様も満更ではないのかも。でもなぁ、そもそも恋愛全般に疎そうな感じもあるし、ただ照れてるだけって可能性も……。

 それにしても、藤色のドレスに加えて、アクセサリーはシルバーチェーンにバイオレットサファイアって……。
 瞳の色だけじゃなく、チェーンに髪色取り入れてくるあたり、執着度がえげつないわよね。

 本気度が凄すぎて、怖いわー。イザベル様はきっとルイス殿下の瞳の色を連想しちゃう、くらいにしか思ってないんだろうけど。
 鈍くて助かったと思うべきか、危機感を抱いた方がいいと危惧するべきか……。というか、そこまでイザベル様が殿下にお気持ちがないのであれば、今のうちに逃げるべきなんじゃ……)

 ルイスから強制的に縁結びをされてしまっているイザベルが逃げることなど不可能なのだが、ミーアの勘は正しかったと言えよう。


 観劇は2日後の夕方だ。ドレスから鞄、靴まで全てルイスが揃えたのでミーアが直ぐにすることはない。
 一先ず、頬を染めている主を落ち着かせるために、リラックス効果のあるハーブティーの準備をするのであった。



    
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