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第1章 前世を思い出した悪役令嬢は、皇太子の執着に気が付かない

第23話 デートに行こう4

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 劇場へと到着し、ルイスにエスコートをしてもらってイザベルは馬車から降りた。


 すると、ザワりと空気が揺れる。

「あの方は誰だ? イザベル様か?」
「女神だ……」
「フォーカス家のご令嬢と親しくなったと聞いていたけれど、イザベル様……よね?」
「リリアンヌさんが殿下と特別な仲だという噂は嘘だったのか?」
「イザベル様……みたいだけれど、雰囲気は別人よね。マッカート公爵家の遠縁のお方かしら?」

 等々、子息・子女を連れてきていた保護者や兄姉のざわめきが起きる。


 (見られておる! じゃが、われではないな。
 ミーアが殿下は人気者じゃから、皆が殿下に視線を奪われると言っておった。
 危うくわれと勘違いするところじゃったわ)

 劇場へと行けばイザベルが様々な視線にさらされると予想したミーアがあらかじめ「ルイス殿下はいつも注目の的ですので、視線を感じても気にする必要はございません」と言い含めておいたのだ。

 その言葉を信じきったイザベルは余裕の表情だ。
 ルイスはというと笑顔をキープしたまま、イザベルに熱のこもった視線を向ける男を素早くチェックする。


 (思ったより、男が多いな。イザベルに見惚れるのは仕方がない。だが、恋慕は許さない。
 縁を結ぼうものなら引きちぎって、二度と目の前に現れられなくしてやる)

 そんなことを思いながら、さっさと専用席へとイザベルを誘導する。

 ルイスが予約したのは観劇が一番見やすい二人掛けのソファー席で、両側が壁になっており覗き込まない限りは隣の席から見えない作りになっている。いわば、カップル席である。


 イザベルはその席を見て、困惑を隠せなかった。

 (席が一つしかないではないか! 劇場員に言うて席をもう一つ用意させねばならぬ。
 じゃが、われが申すことは殿下のお立場的にはいいのじゃろうか……)

 チラリとイザベルがルイスを見たが、特に変わった様子はない。

 (つまり、席はもともと一つだったと。
 うむ。殿下が座られるのは当然。ならば、われは後ろに立って控えれば良い……か。流石に床に座るようには言わぬだろうしな)

 イザベルは納得し、ソファーの斜め後ろで控えようとした。だが──。


「イザベル、座ろう」

 何故かルイスにソファーへとエスコートをされる。

「あの、ここは殿下のお席ですよね?」

 その問いにルイスは明らかに不満げな視線を向ける。

「殿下じゃないだろ」

 拗ねた言い方にイザベルは目を瞬かせた。

「ほら、呼んで。それで、早く慣れて」

 どこと無く焦った様子に、イザベルは首を捻り、彼の名を紡ぐ。

「……ルイス様」

 小さな声でそう言うや否や腕を引かれ、二人掛けのソファーに仲良く腰をかけることとなる。
 すぐに立ち上がろうとしたイザベルだが、捕まったままの腕がそれを許さない。

「どこへ行く?」
「ここは殿でん……ルイス様のお席ですので、後ろで控えようかと思いまして」

 暫しの沈黙の後、ルイスは何かに納得したように頷いた。

「イザベル、このソファーは大きいよな?」
「そうですわね」
「二人で余裕をもって座れるとは思わないか?」
「そうですわね、可能かと思いますわ」
「だろ? これは、家族や恋人と座るための席だ。イザベルと俺は婚約者だから、こうやって二人で座る」

 分かった? と視線で問われたが、イザベルは小さく首を横に振る。

「でも、私はこの前、婚約解消を……」
「しないよ。例え、イザベルの望みでも、それだけは叶えられない」

 強い口調で遮られ、イザベルは肩を揺らす。

「頼むから、その話はもうしないでくれ」

 そうわれたが、イザベルは頷かなかったのだった。
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