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第1章 王都編
第32話 未来の攻略対象はやっぱりイケメン要素満載でした
しおりを挟むレオナルドを追い出すことに失敗した私は、畏怖、憧憬、憎悪といった視線を360度あらゆる角度から浴び続けている。
何せ、お茶会の席のなかでも中心あたりの席だからね。端っこが良かったのに。
あーぁー、やんなっちゃったー。視線のデパートじゃんかー。
心のなかで文句の大合唱をしながら、自棄になって焼き菓子をむしゃむしゃ食べる。もちろん、おしとやかにだけど。
そんな注目の的である私達に話しかけてきた猛者が現れた。
「レオナルド、私達もこちらの席にお邪魔してもかまわないかな?」
ダークグレー髪を後ろに縛り、髪より少し薄い灰色の瞳を持つどこか冷たい印象を与える美少年と、ふわふわとした栗色の髪とアーモンド型のぱっちりとした目が可愛らしい女の子のような少年が立っていた。
そんな彼らを見て一瞬大きく目を見開きカトリーナは小さな声で何かを呟いた。
横目でカトリーナを見ると何だか頬が少し色付いているような……。
可愛い系の男の子が私とカトリーナの間に立ち小声で話しかけてくる。
「あのね、他の女の子達がギラギラしてて怖くてさー。だから、僕たちをここに避難させて欲しいんだ。お願い‼」
然り気無く周囲を見ると先程よりも令嬢達の殺気が増している気がする。一部この様子を面白そうにみている子もいるけれど。確かにこれは怖い。
「私は構いませんが……」
どうせ既に針のむしろ状態。殺気が増えたところで大差はない、ということにしよう。
長いこと領地に引きこもるのだから、その間にみんな忘れてくれるはず。たぶん。
何より、カトリーナが嬉しそうだから良しとしよう。例え同性の仲間がいなくても、少しでも入学してからの友達がいた方がいい……のか? あれ? ダメな気がしてきた。
今更だけど、断ってみようかな。
「やったー! ありがとー。じゃぁ、僕はカトリーナの隣に座るね‼」
あっ、無理だった。まぁ、仕方ないよね。カトリーナは賢いから自分でどうにかできる、ということにさせてもらうことにしよう。
ガタガタと椅子を引いて座る、可愛い系の男の子。その子がカトリーナに微笑めば、カトリーナの顔はみるみる赤く染まっていく。かなり良い雰囲気だ。
これって、もしかしなくてもそう言うことだよね? 微笑ましい姿に私の口は思わずニマニマしてしまう。
「二人とも自己紹介くらいしたら?」
どこか不機嫌なレオナルドの声に、私は慌てて男の子達の方を向き挨拶のために立ち上がろうとしたが、制された。
「フランとレーンがなかなか挨拶しないから、勘違いさせちゃっただろ」
少しだけ拗ねた様子を見せたレオナルドは、私に視線を向けると甘く微笑んだ。
「ごめんね、勘違いさせて」
そんなレオナルドに、フランとレーンと呼ばれた少年は笑いながら謝った。
「挨拶が遅れて申し訳ない。私はフランチェスコ・リーブラだ。4月からは同級生となる。仲良くしてもらえると嬉しい」
「僕はねー、レーン・リェーフ。1年先輩だよ‼ よろしくー」
やっぱり! 二人ともほしきみ☆の攻略キャラだったかー。面影もあるし、そうかなぁとは思ってたけど、これだけ将来イケメン要素満載だったら当然だよね。
……って、あれ? カトリーナの相手キャラって教師じゃなかったっけ?
でも、カトリーナの好きなのはレーンだよね。
舞台は高等部だからこれから心変わりするとか? それとも、ゲームとこの世界は関係ないと思ってもいいの? まさか、この後に強制力が働く……とか。
そう考えたら、ぞわりと背筋が凍るような感覚に襲われた。強制力が働けば、自分の力ではどうにもできなくなる。
「スコルピウス嬢?」
レオナルドの心配そうな声に、ハッとした。
しまった! 今はお茶会だった。自己紹介してないじゃん。
「すみません、少し驚いてしまって……。アリア・スコルピウスと申します」
嘘は言っていない。こんなにも攻略対象が揃い踏みしたことにはビックリしているからね。
「やっぱりフランが老けてるからびっくりしたんじゃん」
「いや、私にはレーンの幼さに驚いたようにみえた」
二人が言い合いを始めたが、レオナルドはいつものことなのか全く気にせず、話しかけてくる。
面倒くさそうなので、私もフランチェスコとレーンは放っておくことにして、リカルドに勧めてもらった焼き菓子を食べた。
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