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本編
元ベータの苦労
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元ベータの苦労
それは、未だに自身のバース性をベータだと思ってしまう事だ。
少し前にベータからオメガへ転換した。元ベータだからか、当初はアルファの匂いには鈍感だった。
普段のアルファからは、甘い匂いを感じる程度で、ベータの時と然程変わらない。
根本的にベータとオメガは、アルファの匂いの嗅ぎ分けは違うらしい。
例えばベータは、アルファやオメガの匂いを嗅いでもなんとも起こらない。
甘い匂いがどこからか漂うかな?と、感じる程度だ。
ベータにとってのアルファの発情は、匂いがキツく怖気付く程度だ。発情中のアルファの雰囲気が怖いのもある。
対してオメガは、普段からアルファの匂いを嗅ぐと、体調にも影響を及ぼす。
それはアルファやオメガは、好みの匂いや対となる運命の相手の匂いを嗅ぎ取る事ができる所為で、対となる相手を無意識に求めているからだろう。
無意識、それは本能からくるものらしい。
俺にはそこまで匂いの嗅ぎ分けなんて出来ない。
それもその筈で、元々ベータからオメガになった者に、運命の番なんて者は、存在しないといわれていた。
だが、相性の良い者同士では、時には元ベータだろうが、運命の相手が現れる。
いや、もしかしたら運命の相手がいるからこそ、バース性の変化が起こるのかもしれない。
そんなバース性についての事が、最近テレビでやっていた。
俺には実際の事は分からないが、オメガになった事で、身体の仕組みが変わった。そのことだけは、熱でうなされて発情期を迎えて実感した。
当初の俺は、オメガになって、発情期が来ても、子供が産めるように身体が作り替えられた位だと思っていた。
それは、子供から大人になる過程と、近いものだと思っていた。
ついこの間までは、違いについて、そのくらいにしか考えた事も無かった。
ベータがオメガに途中で変化する。
という事は、例えるならば、男から女に性転換するという事だ。
それだけではない。
今の俺は、相手の匂いが徐々に分かる様にもなってしまった。
アルファの大上に、執拗に追いかけられていたからか、大上の匂いを嗅ぐだけで身体が疼く。
「なんだよコレ‥。」
匂いだけでも、全身がじくじくと疼いて仕方がない。
どうしてそうなった?
不安でしかない。
俺の身体はどうなった?
日を追うごとに、度重なる不安が募っていく。
自身の身体と心が変わりゆく恐怖。ジワジワと精神までも蝕まれていく。
少しずつ、だが確かに、確実に変わっていく身体。だんだんと匂いにも敏感になっていく。
俺は、大上の側にいられなくなった。
隣にいるだけで、精神が持っていかれるほどに発情してしまう。そんな浅ましい自分なんて知りたくなかった。
(もういやだ‥。)
いつの間にか、俺は泣いていたらしい。涙が頬を伝う。
「どうして、そんなに泣くんだ。」
大上が、俺の頬に伝う涙を指で拭う。その指は、俺の顔を労るように、優しく撫でていく。思わず指を追いかける様に、顔を指にすりっとしていた。無意識の行動だった。とはいえ、気づいたらとても恥ずかしくて俯く。
「ハルっ!」
俺の身体を抱き締める大上の身体は熱い。
俺が熱いのか、大上が熱いのか‥。
「っ、おおかみ‥。」
俺の両腕もいつの間にか、無意識に大上を抱き締めていた。
身体が熱を持つように熱い。
体温を分け与える様にお互いが熱くなっていく。
俺は、自身の意思なのか、それとも本能からくるものなのか、もうわからない位に、とろとろに思考が蕩けきっていた。
このまま大上に身を任せたい。
「れお、れおっ‥。」
「ハル‥かわいいな‥。」
大上は、そっと俺の頬に手を添えて口付けをした。
俺は、真綿の様に優しく口付けをする大上に、とろりと蕩け身を任せた。
俺のオメガ性は、アルファの大上の溺愛には反論出来ない。
すぐに理性を失ってしまう。
それが俺の、元ベータの苦労だ。
それは、未だに自身のバース性をベータだと思ってしまう事だ。
少し前にベータからオメガへ転換した。元ベータだからか、当初はアルファの匂いには鈍感だった。
普段のアルファからは、甘い匂いを感じる程度で、ベータの時と然程変わらない。
根本的にベータとオメガは、アルファの匂いの嗅ぎ分けは違うらしい。
例えばベータは、アルファやオメガの匂いを嗅いでもなんとも起こらない。
甘い匂いがどこからか漂うかな?と、感じる程度だ。
ベータにとってのアルファの発情は、匂いがキツく怖気付く程度だ。発情中のアルファの雰囲気が怖いのもある。
対してオメガは、普段からアルファの匂いを嗅ぐと、体調にも影響を及ぼす。
それはアルファやオメガは、好みの匂いや対となる運命の相手の匂いを嗅ぎ取る事ができる所為で、対となる相手を無意識に求めているからだろう。
無意識、それは本能からくるものらしい。
俺にはそこまで匂いの嗅ぎ分けなんて出来ない。
それもその筈で、元々ベータからオメガになった者に、運命の番なんて者は、存在しないといわれていた。
だが、相性の良い者同士では、時には元ベータだろうが、運命の相手が現れる。
いや、もしかしたら運命の相手がいるからこそ、バース性の変化が起こるのかもしれない。
そんなバース性についての事が、最近テレビでやっていた。
俺には実際の事は分からないが、オメガになった事で、身体の仕組みが変わった。そのことだけは、熱でうなされて発情期を迎えて実感した。
当初の俺は、オメガになって、発情期が来ても、子供が産めるように身体が作り替えられた位だと思っていた。
それは、子供から大人になる過程と、近いものだと思っていた。
ついこの間までは、違いについて、そのくらいにしか考えた事も無かった。
ベータがオメガに途中で変化する。
という事は、例えるならば、男から女に性転換するという事だ。
それだけではない。
今の俺は、相手の匂いが徐々に分かる様にもなってしまった。
アルファの大上に、執拗に追いかけられていたからか、大上の匂いを嗅ぐだけで身体が疼く。
「なんだよコレ‥。」
匂いだけでも、全身がじくじくと疼いて仕方がない。
どうしてそうなった?
不安でしかない。
俺の身体はどうなった?
日を追うごとに、度重なる不安が募っていく。
自身の身体と心が変わりゆく恐怖。ジワジワと精神までも蝕まれていく。
少しずつ、だが確かに、確実に変わっていく身体。だんだんと匂いにも敏感になっていく。
俺は、大上の側にいられなくなった。
隣にいるだけで、精神が持っていかれるほどに発情してしまう。そんな浅ましい自分なんて知りたくなかった。
(もういやだ‥。)
いつの間にか、俺は泣いていたらしい。涙が頬を伝う。
「どうして、そんなに泣くんだ。」
大上が、俺の頬に伝う涙を指で拭う。その指は、俺の顔を労るように、優しく撫でていく。思わず指を追いかける様に、顔を指にすりっとしていた。無意識の行動だった。とはいえ、気づいたらとても恥ずかしくて俯く。
「ハルっ!」
俺の身体を抱き締める大上の身体は熱い。
俺が熱いのか、大上が熱いのか‥。
「っ、おおかみ‥。」
俺の両腕もいつの間にか、無意識に大上を抱き締めていた。
身体が熱を持つように熱い。
体温を分け与える様にお互いが熱くなっていく。
俺は、自身の意思なのか、それとも本能からくるものなのか、もうわからない位に、とろとろに思考が蕩けきっていた。
このまま大上に身を任せたい。
「れお、れおっ‥。」
「ハル‥かわいいな‥。」
大上は、そっと俺の頬に手を添えて口付けをした。
俺は、真綿の様に優しく口付けをする大上に、とろりと蕩け身を任せた。
俺のオメガ性は、アルファの大上の溺愛には反論出来ない。
すぐに理性を失ってしまう。
それが俺の、元ベータの苦労だ。
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