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本編
愛しいあの子〜大上礼央視点〜
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春樹を自分だけのものにしたい。そう思うのは、自身のアルファとしての本能なのか‥。そう悩んだ事もあった。
愛しいあの子~大上礼央視点~
俺こと大上礼央が、藤宮春樹を見た瞬間。内に秘めた獰猛な欲が、身体中を駆け巡った。
それは、運命とも呼ぶべきものだった。
だが、運命の相手とはまだ分からず、本能の赴くままに、求める様にハルを追い掛けるようになった。
追いかけていくうちに、冷静になっていく思考の中で、ハルが運命の番である事が分かる。
それは、正しく初めて感じる感覚だった。
初めから、自身の半身に会う様な、心と体に空いた穴を埋める様な、そんななくてはならない、お互いの空いたピースを埋める様な感覚。
だからこそ、運命に出会うと、本能に抗えず、そのまま追いかけてしまう。
運命の番とはそういうものなのだろう。
魂の足りない部分を補う感覚で、お互いに一目見てわかる様になっているのだろう。
俺はそう思っていた。
だが、ハルは俺を見ても気付きもしない。
(どうしてだ。俺はこんなにもお前を求めているのに‥。どうしてお前も求めない?)
そのうちに、自分だけのものにしたい。自分だけを見てくれない番を縛り付けたい。その欲求が日毎に強くなっていく。
貪欲で暗い欲望が目覚めた。
今思えば、本能からくるもので、好きとか愛しているとかいう類のものではなかったのだろう。
だからこそ、春樹にはその気がない事は一目見た瞬間に分かってしまった。
それはそうだろうと思う。
春樹は元はベータだ。元がベータの人間は基本的には運命の番はいないはずだった。
運命の番に会っても気付かないのも、元がベータとしては当たり前なのだろう。
だが、それでは俺はどうなる?俺だけが、一目見た瞬間に魂の震えを感じた。それは理屈では無かった。それと同時に愛しいと激しい独占欲も湧いた。
激しい独占欲は、自身のみならず相手にも深い傷を作る事がある。
独占欲の為に、己の欲のために、そうして俺は、春樹を追いかけ縛り付け傷付けた。
今は、ある程度の欲の耐性は着いたが、ふっ、とした瞬間に獰猛な程に求めてしまいそうになる。
支配したい。縛り付けておきたい。自分だけを見てほしい。
そういう欲が常にある。それと同時に大切にしたい。大事に真綿で包んで、部屋に閉じ込めておきたい‥。
ふぅ‥。礼央は溜め息を吐いた。
長く深く息を吐く。
全身の疲れを出すように。
礼央は、春樹を愛したい。それと同時に愛されたいとも思う。
きっと、この強い独占欲・渇望は愛されていればいつかは治るだろうか?それとも‥。
だが、春樹は一向に振り向いてくれない。欲は常に燻り続けている。
いつか、いつの日か春樹を、自身に向ける事ができるのだろうか。
そうして日々を過ごす内に、春樹との仲は穏やかなものになっていった。
強い独占欲はそのままだったが、春樹が隣で笑ってくれるだけで、愛しいと思う気持ちが強く、そうして育っていった感情は、バース性に囚われる事はなくなっていった。
愛しいあの子~大上礼央視点~
俺こと大上礼央が、藤宮春樹を見た瞬間。内に秘めた獰猛な欲が、身体中を駆け巡った。
それは、運命とも呼ぶべきものだった。
だが、運命の相手とはまだ分からず、本能の赴くままに、求める様にハルを追い掛けるようになった。
追いかけていくうちに、冷静になっていく思考の中で、ハルが運命の番である事が分かる。
それは、正しく初めて感じる感覚だった。
初めから、自身の半身に会う様な、心と体に空いた穴を埋める様な、そんななくてはならない、お互いの空いたピースを埋める様な感覚。
だからこそ、運命に出会うと、本能に抗えず、そのまま追いかけてしまう。
運命の番とはそういうものなのだろう。
魂の足りない部分を補う感覚で、お互いに一目見てわかる様になっているのだろう。
俺はそう思っていた。
だが、ハルは俺を見ても気付きもしない。
(どうしてだ。俺はこんなにもお前を求めているのに‥。どうしてお前も求めない?)
そのうちに、自分だけのものにしたい。自分だけを見てくれない番を縛り付けたい。その欲求が日毎に強くなっていく。
貪欲で暗い欲望が目覚めた。
今思えば、本能からくるもので、好きとか愛しているとかいう類のものではなかったのだろう。
だからこそ、春樹にはその気がない事は一目見た瞬間に分かってしまった。
それはそうだろうと思う。
春樹は元はベータだ。元がベータの人間は基本的には運命の番はいないはずだった。
運命の番に会っても気付かないのも、元がベータとしては当たり前なのだろう。
だが、それでは俺はどうなる?俺だけが、一目見た瞬間に魂の震えを感じた。それは理屈では無かった。それと同時に愛しいと激しい独占欲も湧いた。
激しい独占欲は、自身のみならず相手にも深い傷を作る事がある。
独占欲の為に、己の欲のために、そうして俺は、春樹を追いかけ縛り付け傷付けた。
今は、ある程度の欲の耐性は着いたが、ふっ、とした瞬間に獰猛な程に求めてしまいそうになる。
支配したい。縛り付けておきたい。自分だけを見てほしい。
そういう欲が常にある。それと同時に大切にしたい。大事に真綿で包んで、部屋に閉じ込めておきたい‥。
ふぅ‥。礼央は溜め息を吐いた。
長く深く息を吐く。
全身の疲れを出すように。
礼央は、春樹を愛したい。それと同時に愛されたいとも思う。
きっと、この強い独占欲・渇望は愛されていればいつかは治るだろうか?それとも‥。
だが、春樹は一向に振り向いてくれない。欲は常に燻り続けている。
いつか、いつの日か春樹を、自身に向ける事ができるのだろうか。
そうして日々を過ごす内に、春樹との仲は穏やかなものになっていった。
強い独占欲はそのままだったが、春樹が隣で笑ってくれるだけで、愛しいと思う気持ちが強く、そうして育っていった感情は、バース性に囚われる事はなくなっていった。
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