【本編完結】お互いを恋に落とす事をがんばる事になった

シャクガン

文字の大きさ
10 / 129

10月15日(2)

しおりを挟む
 「それで?朝は大丈夫だったの?」

今日のお弁当のメインの唐揚げを箸でつまみながら朝亜紀ちゃんに連行されていったちさきちゃんに問いかけた。

普通に気になるよね?ホームルームギリギリまで帰ってこないし、ちさきちゃんはぐったりしてるし…

「んぐっ!?!?」

急な問いに驚いたのかりんごディッシュを頬張っていたちさきちゃんは咽せてミルクティーを流し込んでいる。

「そんなに驚くようなことしてたの!?まさか…エッチなこ―――」
「してないから!!」

全力で否定されてしまった。まぁ、朝のわずかな時間でそんな事してるなんて思ってはないけど…

唐揚げを一口齧ってまた問いかける。

「じゃあ、何してたの?あんなにぐったりして戻ってきて」
「あーえっと…」

そんなに言いづらいことをしていたのかなかなか話出さないちさきちゃんを見つめながら、一口齧られた残りの唐揚げを口の中に放り込みジッと話し出すのを待ってみた。

観念したように頭を抱えて顔を赤らめながらちさきちゃんは口を開いた。

「匂いを…嗅がれてました」
「……え?」
「匂いを嗅がれてたの!」

赤く染まった顔を片手で隠すようにして肘をついてそっぽを向いてしまった。

「ぷっ、あはははは。私にしてた事をされちゃったんだ」
「そうだよ!そんなに笑うな!」

ちさきちゃんが私に平気でしてきた事を亜紀ちゃんがちさきちゃんにしたら、恥ずかしがって言い淀むなんて攻められると弱いタイプなんだ。

「だって、すごい言い淀むからもっとすごい事してるのかと思っちゃった」
「すごいことって何」
「キスとかーエッ―――」
「してないから!亜紀とはそういう関係じゃないから!!」

立ち上がり抗議してきたけど、お昼休みで騒がしい教室でもさすがに注目の的になっている。それに気づいたちさきちゃんは教室を見渡して静かに椅子に座り直してミルクティーを一口飲んで落ち着いた。

「亜紀ちゃんとちさきちゃんってお似合いだと思うけど」
「……えっ?」

私はついポロッとそんな事を口走ってしまった。

幼馴染でずっと2人は仲良しだしそういう恋人同士の関係になったとしても、2人ならずっと一緒にいられるような関係なんじゃないかと思っている。

「ちさきちゃんは女の子を恋愛対象としてみれる?」
「え、いやわからないかな…」

私は女の子を恋愛対象としてみた事ないしこれからもないと思っているけど、ちさきちゃんはどうなのか気になった。

亜紀ちゃんからは多分ちさきちゃんの事を恋愛対象として見られていて、ちさきちゃんは亜紀ちゃんの事を恋愛的な意味で好きになる事はあるのかな……

りんごディッシュをまた齧り始めたちさきちゃんは「でも…」と言葉を続けた。

「好きになった人が女の子でも私は同性を好きになった事では悩まないかな」
「どうして?」
「だって、あたしが好きになった人だもん」

ニカッと笑うちさきちゃんは登校初日に目撃したあの時の笑顔そのままだった。その笑顔は彼女の魅力的な部分で私はとても好きだ。

「同性でも好きになって一緒にいたい人ができたら私は正直でいたい。将来の事とか異性同士の恋人とは違うだろうからそういう所は悩む事は多いだろうけど、相手を好きになったことは否定したくないかな」

おー…思わず私はちさきちゃんを見て目を見開いた。

ちさきちゃんは亜紀ちゃんの気持ちに気づいているのかはわからないけれど、もしかしたら亜紀ちゃんの事もあってちさきちゃんは考えることもあったのかもしれない。

「ちさきちゃんすごくカッコいいね…」

私もちさきちゃんみたいな考え方ができるだろうか…―同性でも好きになって一緒にいたい人ができたら正直でいたい―なんて

「で?急にそんな話するってことは女の子でも好きになったの?」
「んぐっ!!」

今度は私が咽せる番だった。小さいおにぎりを箸で小さくして口に入れてたので大惨事には至らなかったけど…
ちさきちゃんはミルクティーを飲みながら私を見ている。

普段私達の恋バナと言ったら男子とのことだった。でも、付き合うことになったとかその程度の話題で“この男の子かっこいいよね“とか“〇〇くんと××ちゃんが付き合ってるんだってぇ“とかそういう話もないし、そもそもあまり恋バナ自体ちさきちゃんとはほとんどしてこなかったと思う。

それなのに急に女の子を恋愛対象としてみれるかなんて話をすれば、自然と私が女の子を好きになったとかそういう方向に話が向くだろう…

女の子を好きになったとかそいういう訳ではない。

でも、涼ちゃんの事をどう説明したらいい?お互いが相手を自分に恋に落とすなんて話をしていいのだろうか…涼ちゃんにも勝手にこんな話をしたら悪い気がする…

「女の子を好きになったとかそういうんじゃないよ。最近は女の子同士とか普通だからちさきちゃんはどうなのかな?って思っただけ」
「ふーん。まぁ、いいけど。悠木涼って女の子からもモテるからね」

―ポロッ

動揺して最後の唐揚げを床に落としてしまった。
それを見ていたちさきちゃんは「あーぁ、勿体無い」とティッシュで唐揚げを拾って、私を見て微笑んだ。え?何その笑顔?

「な、なんで急に涼ちゃんの名前が出てくるの?」
「あ、もう涼ちゃん呼びしてんだ」
「私はみんな仲良くなったら下の名前で呼ぶよ」
「はいはい。そうですね。まぁ、最近凪沙が知り合ったのが悠木涼ってこともあるし、あいつ無駄に女の子にモテてるところあるからね。もしかしたら凪沙が好きになっちゃったのかな?って思って」

確かに涼ちゃんは女の子から告白されたことあるって言ってたけど、だからって私が涼ちゃんを恋愛的な意味で好きになるなんて……

「ないない!私は男の子しか好きになったことないよ!」
「そう?まぁ、今まではそうかもしれないけど今後はわからないんじゃない?」

そう言って最後の一口のりんごディッシュを口に放り込みミルクティーで流し込んでいた。

「ちさき」
「?亜紀…………と悠木涼?」
「えっ!?!?」

ちさきちゃんの名前が呼ばれ廊下側に視線を向ければ亜紀ちゃんと涼ちゃんがこっちに向かってきていた。
2人とも身長が高くてスラっとしてるからすごく絵になる2人だ。バスケ部の涼ちゃんの方がやっぱり身長は高かったけど。そんな2人がお昼休みに一緒に私たちの所にくるなんて初めてのことだった。

「あれ?まだ凪沙ご飯食べてるの?卵焼き美味しそうだね」

涼ちゃんが私のすぐ隣にやってきてお弁当を覗き込んでくる。そんなに見たってあげませんからね!スッとお弁当を私の方に寄せた。ちょっと拗ねたような表情をしてるけど唐揚げ落としてただでさえ、おかず減ってるのにあげられないよ。

そんなやりとりを怪訝な表情で見ていたちさきちゃんは話を変えるようにして疑問をぶつけてくれた。

「どうした?2人で来るなんて珍しいね」
「涼さんがちさきと凪沙さんに話があるって」

話?朝話てた朝練の事だろうか…そういえばまだちさきちゃんに話してなかった。

「そうそう!明日からなんだけどさ――」

やっぱり朝練の話かとお弁当をさっさと食べ終わろうと卵焼きを箸でつまむ。

「お昼ご飯一緒に食べない?」
「はぁ!?」

また卵焼きが床に転がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...