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12月25日(1)
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「お……重い……」
まだ薄暗い部屋で私は体が重くて身動きが取れない感覚で目が覚めた。
周りを見渡すと豪華なホテルの一室。そういえば、私涼ちゃんとホテルに泊まったんだった。
いつの間に寝てしまったんだろうか……確か、涼ちゃんがお風呂に入りに行って、ベッドでゴロゴロしていたところまでは覚えてる。
涼ちゃんを追いかけたりして走り回っていたせいか、ベッドでゴロゴロ中に疲れて寝てしまっていたらしい。
涼ちゃん……?
背中に回された腕、胸やお腹に感じる温もり、足もなんだか重たい……
「涼ちゃん!?!?」
いつの間にか寝てしまっていた間に、涼ちゃんに抱きつかれるようにして寝ていたみたいだ。
目線を下げれば頭が見える。しかも、何故か涼ちゃんは私の胸に顔を埋もれるようにして眠っている。
私が声を上げたせいか涼ちゃんが「んーーーぅ」と唸りながら更に顔を胸に押し付けていた。
「りょ、涼ちゃん……」
「………おはよぅ凪沙」
「う、うん。おはよ涼ちゃん………あ、あの……いつまでそこにいるの?」
目が覚めたらしい涼ちゃんは顔も上げずに私の胸の中で挨拶をする。
「幸せ……」
「私の胸で幸せ感じないで!!」
「凪沙で幸せ感じてるんだけど?」
ちょっと顔を上げた涼ちゃんが私を見つめるけれど、胸から離れようとしない。
「説得力ないんだけど……」
「もぅ……」と言いつつ、ずるずると顔の位置を私と合わせて再び抱きついてくる。
「幸せ………」
「仕方ないなぁ」
私も涼ちゃんを抱きしめ返して幸せを共有する事にした。
携帯のバイブレーションの音が部屋の静かな空間の中で響いた。
「涼ちゃんの携帯じゃない?」
まだ外は薄暗い中で鳴り止まない携帯は電話の着信を知らせていた。涼ちゃんが枕元に置いてある携帯をチラッと見て再び私に抱きついてくる。
「取らないの?」
「大丈夫……」
長いバイブレーションを経て携帯は静かになった。
すぐにまたブーブーと携帯が鳴る。今度は私の携帯が電話の着信を知らせているみたいだ。私は手を伸ばして携帯を手にした。
「凪沙、取らなくていいから」
「なんで?」
携帯の画面を見ると美月さんの名前が出ている。どうやら涼ちゃんの携帯に電話をしても出なかったから、私の携帯に電話をしたらしい。それを涼ちゃんは察して出なくて良いと言っているのか……
私は涼ちゃんの言葉を無視して通話ボタンを押した。
『もしもし?凪沙ちゃん?朝早くからごめんね?』
「いえ、ちょうど起きたところなので大丈夫です。どうしたんですか?」
「なんで取っちゃうの?」
涼ちゃんが私に抱きついて離れないまま、不貞腐れた感じで私を見てくる。
『涼も起きてるの?なんで電話出ないの!』
静かな空間ではスピーカーモードにしなくても美月さんの声は涼ちゃんに届いている。
私は話しやすいようにスピーカーモードに変えて涼ちゃんの方に携帯を向けた。
「出なくていいと思ったから」
『用事があるから電話してるのに出なくて良いなんて事ないでしょ』
涼ちゃんはちょっと罪悪感があるのか、不貞腐れている感じを出しつつ携帯から視線を逸らした。
私は苦笑いを浮かべてかわりに美月さんに答える。
「あのこんな朝早くから急用ですか?チェックアウトまで時間ありますよね?」
『凪沙ちゃんごめんね。涼の父親なんだけど、早い時間の電車で空港まで行くのよ。だから涼もせめて顔を見せてあげて欲しくて』
そうだった。涼ちゃんは早い時間の飛行機に乗る為に空港に近いここのホテルで一泊をしてから移動する予定だった。涼ちゃんはもうアメリカには行かなくても、涼ちゃんのお父さんはそのままアメリカに行くから早めに出ないとお見送りができない。
「そうなんですね。わかりました。すぐ支度します」
『涼も早くしなさいよ?』
「………わかった」
通話を切るとようやく涼ちゃんが私から離れた。上半身を起こしてベッドに座る涼ちゃんはさっきとは違ってちょっと暗い雰囲気を漂わせている。
「涼ちゃん?」
私は寝起きでピョコと跳ねている涼ちゃんの短い髪を手で撫でながら涼ちゃんの顔を覗く。
「小さい頃に離婚したんだ」
涼ちゃん視線が私と交わった。ちょっと重たい口調はあまり良くない思い出を語ろうとしているみたいだった。
「父さんとの記憶は少ないけれど、思い出すのはみんな私を否定する言葉だった」
「………」
「でも、今ならわかるんだけど……それは私のことを思ってのことだったんだろうなって……小さい頃の私はそのまま受け取っちゃったから……私はがんばってもダメなんだって思っちゃったんだろうな」
私は涼ちゃんを抱きしめた。涼ちゃんも私に身を委ねるようにして体を預けてくる。
きっと涼ちゃんは小さい頃の記憶のせいでがんばろうとする事が怖かったのかもしれない。
「今は?お父さんの事、今は大丈夫?」
「今は全然。凪沙のおかげだね」
涼ちゃんは私の胸に顔を埋めて抱きついてくる。
「幸せ………」
「私の胸で幸せ感じないで!?!?」
「凪沙で幸せ感じてるんだよ!?!?」
「胸が凪沙じゃないんですっ!」
私は涼ちゃんを離してベッドからさっさと降りて着替えをする為にバスルームの扉を開けた。
まだ薄暗い部屋で私は体が重くて身動きが取れない感覚で目が覚めた。
周りを見渡すと豪華なホテルの一室。そういえば、私涼ちゃんとホテルに泊まったんだった。
いつの間に寝てしまったんだろうか……確か、涼ちゃんがお風呂に入りに行って、ベッドでゴロゴロしていたところまでは覚えてる。
涼ちゃんを追いかけたりして走り回っていたせいか、ベッドでゴロゴロ中に疲れて寝てしまっていたらしい。
涼ちゃん……?
背中に回された腕、胸やお腹に感じる温もり、足もなんだか重たい……
「涼ちゃん!?!?」
いつの間にか寝てしまっていた間に、涼ちゃんに抱きつかれるようにして寝ていたみたいだ。
目線を下げれば頭が見える。しかも、何故か涼ちゃんは私の胸に顔を埋もれるようにして眠っている。
私が声を上げたせいか涼ちゃんが「んーーーぅ」と唸りながら更に顔を胸に押し付けていた。
「りょ、涼ちゃん……」
「………おはよぅ凪沙」
「う、うん。おはよ涼ちゃん………あ、あの……いつまでそこにいるの?」
目が覚めたらしい涼ちゃんは顔も上げずに私の胸の中で挨拶をする。
「幸せ……」
「私の胸で幸せ感じないで!!」
「凪沙で幸せ感じてるんだけど?」
ちょっと顔を上げた涼ちゃんが私を見つめるけれど、胸から離れようとしない。
「説得力ないんだけど……」
「もぅ……」と言いつつ、ずるずると顔の位置を私と合わせて再び抱きついてくる。
「幸せ………」
「仕方ないなぁ」
私も涼ちゃんを抱きしめ返して幸せを共有する事にした。
携帯のバイブレーションの音が部屋の静かな空間の中で響いた。
「涼ちゃんの携帯じゃない?」
まだ外は薄暗い中で鳴り止まない携帯は電話の着信を知らせていた。涼ちゃんが枕元に置いてある携帯をチラッと見て再び私に抱きついてくる。
「取らないの?」
「大丈夫……」
長いバイブレーションを経て携帯は静かになった。
すぐにまたブーブーと携帯が鳴る。今度は私の携帯が電話の着信を知らせているみたいだ。私は手を伸ばして携帯を手にした。
「凪沙、取らなくていいから」
「なんで?」
携帯の画面を見ると美月さんの名前が出ている。どうやら涼ちゃんの携帯に電話をしても出なかったから、私の携帯に電話をしたらしい。それを涼ちゃんは察して出なくて良いと言っているのか……
私は涼ちゃんの言葉を無視して通話ボタンを押した。
『もしもし?凪沙ちゃん?朝早くからごめんね?』
「いえ、ちょうど起きたところなので大丈夫です。どうしたんですか?」
「なんで取っちゃうの?」
涼ちゃんが私に抱きついて離れないまま、不貞腐れた感じで私を見てくる。
『涼も起きてるの?なんで電話出ないの!』
静かな空間ではスピーカーモードにしなくても美月さんの声は涼ちゃんに届いている。
私は話しやすいようにスピーカーモードに変えて涼ちゃんの方に携帯を向けた。
「出なくていいと思ったから」
『用事があるから電話してるのに出なくて良いなんて事ないでしょ』
涼ちゃんはちょっと罪悪感があるのか、不貞腐れている感じを出しつつ携帯から視線を逸らした。
私は苦笑いを浮かべてかわりに美月さんに答える。
「あのこんな朝早くから急用ですか?チェックアウトまで時間ありますよね?」
『凪沙ちゃんごめんね。涼の父親なんだけど、早い時間の電車で空港まで行くのよ。だから涼もせめて顔を見せてあげて欲しくて』
そうだった。涼ちゃんは早い時間の飛行機に乗る為に空港に近いここのホテルで一泊をしてから移動する予定だった。涼ちゃんはもうアメリカには行かなくても、涼ちゃんのお父さんはそのままアメリカに行くから早めに出ないとお見送りができない。
「そうなんですね。わかりました。すぐ支度します」
『涼も早くしなさいよ?』
「………わかった」
通話を切るとようやく涼ちゃんが私から離れた。上半身を起こしてベッドに座る涼ちゃんはさっきとは違ってちょっと暗い雰囲気を漂わせている。
「涼ちゃん?」
私は寝起きでピョコと跳ねている涼ちゃんの短い髪を手で撫でながら涼ちゃんの顔を覗く。
「小さい頃に離婚したんだ」
涼ちゃん視線が私と交わった。ちょっと重たい口調はあまり良くない思い出を語ろうとしているみたいだった。
「父さんとの記憶は少ないけれど、思い出すのはみんな私を否定する言葉だった」
「………」
「でも、今ならわかるんだけど……それは私のことを思ってのことだったんだろうなって……小さい頃の私はそのまま受け取っちゃったから……私はがんばってもダメなんだって思っちゃったんだろうな」
私は涼ちゃんを抱きしめた。涼ちゃんも私に身を委ねるようにして体を預けてくる。
きっと涼ちゃんは小さい頃の記憶のせいでがんばろうとする事が怖かったのかもしれない。
「今は?お父さんの事、今は大丈夫?」
「今は全然。凪沙のおかげだね」
涼ちゃんは私の胸に顔を埋めて抱きついてくる。
「幸せ………」
「私の胸で幸せ感じないで!?!?」
「凪沙で幸せ感じてるんだよ!?!?」
「胸が凪沙じゃないんですっ!」
私は涼ちゃんを離してベッドからさっさと降りて着替えをする為にバスルームの扉を開けた。
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