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12月25日(2)
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ちさきちゃんが大きな欠伸をした。
人気が少ない駅のホームで3人横並びにベンチに座り反対側のホームを眺める。
私たちが乗る電車とは逆方向に向かう電車が止まるホームには、涼ちゃんと美月さん、それと男の人が立って話している。
和やかなムードとは言えないくて、涼ちゃんも少しぎこちなく会話に参加しているように見える。
亜紀ちゃんはずっと本を読んでいて、ちさきちゃんはすることがなく飽きてしまったのか、眠たそうに膝に片肘をついて私を覗き込んできた。
「それでどうだった?」
「なんの話?」
「付き合いたての2人がホテルに一泊したら何かあるんじゃないの?」
「……何もないけど?」
「いやいやいや、何かあるでしょ?いい雰囲気になったりとか?一緒に寝たりとかそれ以上とか!!」
「なっ!!そんなことしません!!」
急になんの話かと思えば、こんな朝早くからするような話じゃなかった。それにしていたとしても、こんな駅のホームでするような話ではない。実際してないけど……
「お風呂くらい一緒に入っただろ?」
「入らないよ。というか、涼ちゃんがお風呂に入ってる間にいつの間にか寝ちゃってたみたいで、本当に何もないから」
「あいつやっぱヘタレか……」
ブツクサとつまらなそうに呟いている。
涼ちゃんがヘタレかどうかはわからないけど、私の胸に顔を埋めていた話はしないでおいてあげよう。
「お風呂くらいって言うからには、ちさきちゃん達は何かあったの?」
「っ!!」
ちさきちゃんは一瞬にして顔を染め上げた。これは何かあったやつ。私はさっきの反撃とばかりにちさきちゃんを問い詰めた。
「2人はホテルどうだった?いいホテルだったよね?いい雰囲気になったんじゃないの?一緒に寝たりした?もしかしてお風呂一緒とか?」
「な……なっ……な!!」
「凪沙さんあまりちさきをいじめちゃダメですよ?相手の話を聞くのは良いけど、自分の事になるとちさきは弱いんですから」
本から顔を上げてちさきちゃんを挟んで反対側にいる亜紀ちゃんがこちらに視線を向けた。一応亜紀ちゃんの話でもあるのに、亜紀ちゃんは顔色ひとつ変えずに淡々と答える。
「2人は何かなかったの?」
「………秘密です」
亜紀ちゃんが濁した返しをしてくる。
「そもそも付き合ってないからな!?!?」
駅の静かなホームにちさきちゃんの声が響き渡った。
亜紀ちゃんが秘密というのだから、多分もう話してはくれないんだろうなと思ってまた視線を涼ちゃん達に
向けた。
涼ちゃんがこっちを見て苦笑している。ちさきちゃんの声は反対方面に向かうホームにいる人たちにも聞こえていたらしい。涼ちゃんの前に立っている男の人もこちらを見て、私たちに会釈をした。あの人が涼ちゃんのお父さんなのだろう、遠目から見てもなんとなく涼ちゃんに似ているような気がする。
私も会釈を返すとそれを見ていた美月さんが私たちに手を振って、また3人での会話に戻っていった。チラチラとこちらを見ながら話しているから、私たちの話題でも話しているのかもしれない。先程よりは和やかな雰囲気になっていた。
駅のホームに電車が入ってくる。私たちと涼ちゃん達の間に入っていた電車は空港行きの電車で、それに乗って涼ちゃんのお父さんは空港へ向かった。
「ごめんねー。お待たせ」
美月さんが私たちがいるホームに階段で降りてきた。後につづいて涼ちゃんも大きめのボストンバックを肩にかけてゆっくりと降りてきた。そのまま私のところまで来て手を繋がれる。
「ちゃんとお別れできた?」
「うん……」
少しすっきりとした表情を見せている。短かったけれど、ちゃんと話せる機会があったのは良かったのかもしれない。
電車が入ってくる。今度は私たちが家に帰る為の電車だ。
「さ、帰りましょうか」
美月さんは嬉しそうに私たちに振り返ってきた。
「そういえば、今日クリスマスなんだよなぁ」
ちさきちゃんが電車の広告を見ながら呟いた。座席に横並びで座っているちさきちゃんは私の右隣にいる。左は涼ちゃんだ。
ちさきちゃんがぼそっと呟いた言葉をきいて涼ちゃんはハッとしたような表情をした。
「クリスマス……クリスマスプレゼント………用意してない」
涼ちゃんが絶望的な表情に変えて、私を見た。クリスマスプレゼントだとか、クリスマスとかそれどころではなかったんだから、別にそこまで気にしなくてもいいのにと私は思う。
「あ、そうだ!凪沙にこれあげる」
ゴソゴソと何かを思い出した涼ちゃんがカバンの中を漁って出てきた小さい紙袋を私に差し出してきた。
「いいの?」
「うん!」
小さい紙袋を開けると中から出てきたのは、涼ちゃんがよく使っているメッセージのスタンプのキャラクターだった。イケメンの猫がポーズを取っていて涼ちゃんになんとなく似ていて私も気にいっている。
「ありがとう……やっぱりなんだか涼ちゃんに似てるよね」
「そう?」
涼ちゃんとキーホルダーを並べて比べてみると、少し猫目で黒い瞳とイケメンな猫はなんとなく似ていて、すぐにそのキーホルダーも好きになる。
「あ、そうだ。私もあるよ。涼ちゃんにあげる」
私もカバンの中から昨日クレーンゲームで取れたチビぬいを取り出した。私がメッセージでよく使うスタンプの手のひらサイズの犬だ。涼ちゃんの手のひらにチビぬいを置いた。
「あ、ありがとう!!嬉しい!」
嬉しそうにチビぬいを見つめて、私に抱きついてくる。
「えっ!?」
「あ!悠木涼!人前で何してんだ!」
「別に抱きつくくらい普通ですぅ」
「ちょっと涼ちゃ……」
「あ、亜紀まで何抱きついてきてんだ!!」
「抱きつくくらい普通らしいから?」
横並びで座っていた4人は涼ちゃんは私に抱きついてきて、亜紀ちゃんはちさきちゃんに抱きついていて、抱きついてくる2人に押されるように私とちさきちゃんの背中がぶつかって電車の中で4人でわいわいと騒がしかった。
朝早い時間だから他に人がいなくて助かった。美月さんにはやっぱり微笑ましい感じで見られていたけれど……
人気が少ない駅のホームで3人横並びにベンチに座り反対側のホームを眺める。
私たちが乗る電車とは逆方向に向かう電車が止まるホームには、涼ちゃんと美月さん、それと男の人が立って話している。
和やかなムードとは言えないくて、涼ちゃんも少しぎこちなく会話に参加しているように見える。
亜紀ちゃんはずっと本を読んでいて、ちさきちゃんはすることがなく飽きてしまったのか、眠たそうに膝に片肘をついて私を覗き込んできた。
「それでどうだった?」
「なんの話?」
「付き合いたての2人がホテルに一泊したら何かあるんじゃないの?」
「……何もないけど?」
「いやいやいや、何かあるでしょ?いい雰囲気になったりとか?一緒に寝たりとかそれ以上とか!!」
「なっ!!そんなことしません!!」
急になんの話かと思えば、こんな朝早くからするような話じゃなかった。それにしていたとしても、こんな駅のホームでするような話ではない。実際してないけど……
「お風呂くらい一緒に入っただろ?」
「入らないよ。というか、涼ちゃんがお風呂に入ってる間にいつの間にか寝ちゃってたみたいで、本当に何もないから」
「あいつやっぱヘタレか……」
ブツクサとつまらなそうに呟いている。
涼ちゃんがヘタレかどうかはわからないけど、私の胸に顔を埋めていた話はしないでおいてあげよう。
「お風呂くらいって言うからには、ちさきちゃん達は何かあったの?」
「っ!!」
ちさきちゃんは一瞬にして顔を染め上げた。これは何かあったやつ。私はさっきの反撃とばかりにちさきちゃんを問い詰めた。
「2人はホテルどうだった?いいホテルだったよね?いい雰囲気になったんじゃないの?一緒に寝たりした?もしかしてお風呂一緒とか?」
「な……なっ……な!!」
「凪沙さんあまりちさきをいじめちゃダメですよ?相手の話を聞くのは良いけど、自分の事になるとちさきは弱いんですから」
本から顔を上げてちさきちゃんを挟んで反対側にいる亜紀ちゃんがこちらに視線を向けた。一応亜紀ちゃんの話でもあるのに、亜紀ちゃんは顔色ひとつ変えずに淡々と答える。
「2人は何かなかったの?」
「………秘密です」
亜紀ちゃんが濁した返しをしてくる。
「そもそも付き合ってないからな!?!?」
駅の静かなホームにちさきちゃんの声が響き渡った。
亜紀ちゃんが秘密というのだから、多分もう話してはくれないんだろうなと思ってまた視線を涼ちゃん達に
向けた。
涼ちゃんがこっちを見て苦笑している。ちさきちゃんの声は反対方面に向かうホームにいる人たちにも聞こえていたらしい。涼ちゃんの前に立っている男の人もこちらを見て、私たちに会釈をした。あの人が涼ちゃんのお父さんなのだろう、遠目から見てもなんとなく涼ちゃんに似ているような気がする。
私も会釈を返すとそれを見ていた美月さんが私たちに手を振って、また3人での会話に戻っていった。チラチラとこちらを見ながら話しているから、私たちの話題でも話しているのかもしれない。先程よりは和やかな雰囲気になっていた。
駅のホームに電車が入ってくる。私たちと涼ちゃん達の間に入っていた電車は空港行きの電車で、それに乗って涼ちゃんのお父さんは空港へ向かった。
「ごめんねー。お待たせ」
美月さんが私たちがいるホームに階段で降りてきた。後につづいて涼ちゃんも大きめのボストンバックを肩にかけてゆっくりと降りてきた。そのまま私のところまで来て手を繋がれる。
「ちゃんとお別れできた?」
「うん……」
少しすっきりとした表情を見せている。短かったけれど、ちゃんと話せる機会があったのは良かったのかもしれない。
電車が入ってくる。今度は私たちが家に帰る為の電車だ。
「さ、帰りましょうか」
美月さんは嬉しそうに私たちに振り返ってきた。
「そういえば、今日クリスマスなんだよなぁ」
ちさきちゃんが電車の広告を見ながら呟いた。座席に横並びで座っているちさきちゃんは私の右隣にいる。左は涼ちゃんだ。
ちさきちゃんがぼそっと呟いた言葉をきいて涼ちゃんはハッとしたような表情をした。
「クリスマス……クリスマスプレゼント………用意してない」
涼ちゃんが絶望的な表情に変えて、私を見た。クリスマスプレゼントだとか、クリスマスとかそれどころではなかったんだから、別にそこまで気にしなくてもいいのにと私は思う。
「あ、そうだ!凪沙にこれあげる」
ゴソゴソと何かを思い出した涼ちゃんがカバンの中を漁って出てきた小さい紙袋を私に差し出してきた。
「いいの?」
「うん!」
小さい紙袋を開けると中から出てきたのは、涼ちゃんがよく使っているメッセージのスタンプのキャラクターだった。イケメンの猫がポーズを取っていて涼ちゃんになんとなく似ていて私も気にいっている。
「ありがとう……やっぱりなんだか涼ちゃんに似てるよね」
「そう?」
涼ちゃんとキーホルダーを並べて比べてみると、少し猫目で黒い瞳とイケメンな猫はなんとなく似ていて、すぐにそのキーホルダーも好きになる。
「あ、そうだ。私もあるよ。涼ちゃんにあげる」
私もカバンの中から昨日クレーンゲームで取れたチビぬいを取り出した。私がメッセージでよく使うスタンプの手のひらサイズの犬だ。涼ちゃんの手のひらにチビぬいを置いた。
「あ、ありがとう!!嬉しい!」
嬉しそうにチビぬいを見つめて、私に抱きついてくる。
「えっ!?」
「あ!悠木涼!人前で何してんだ!」
「別に抱きつくくらい普通ですぅ」
「ちょっと涼ちゃ……」
「あ、亜紀まで何抱きついてきてんだ!!」
「抱きつくくらい普通らしいから?」
横並びで座っていた4人は涼ちゃんは私に抱きついてきて、亜紀ちゃんはちさきちゃんに抱きついていて、抱きついてくる2人に押されるように私とちさきちゃんの背中がぶつかって電車の中で4人でわいわいと騒がしかった。
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