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1月1日(1)
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ゆっくりと目を開くとあたりは暗くもうすでに日が暮れていることがわかった。
どのくらい寝ていたんだろうか、朧げな記憶を辿り最後の記憶が涼ちゃんにメールを送ろうとして携帯を手にしたことは覚えている。
その後もメールは送ったような気がする程度しか思い出せない。
ちゃんと送ったんだろうか?枕元に置いてあるはずの携帯に手を伸ばそうとすれば、体が重たくうまく動かせなかった。
まだ熱がちゃんと下がっていないからだろう。
どうにかして動かそうとすれば、モゾモゾと何かが動く気配が横からした。
横を見れば誰かがいる。焦点が定まらなかった視線が徐々にその人物を写し出した。
「え?……涼ちゃん?」
よく見れば動かせないと思っていた腕や体はどうやら抱きしめられているからだと気づいた。
ぼんやりとしていた頭が加速していく。
「涼ちゃん!?なんでここにいるの!?」
どうして私の部屋に涼ちゃんがいて、しかも同じベッドで寝ているって一体どういう事?
必死に記憶を探ると徐々に思い起こされていく。チャイム。メッセージ。涼ちゃんが悲しそうに別れたくないと訴えてきたこと……
動かせない腕で頭を抱えそうになっていると、涼ちゃんの目が薄く開いて、私と視線が合いパッと目が見開いた。
「凪沙!!」
肩肘をついて身体を起こした涼ちゃんが私を上から見下ろしてくる。
「凪沙……もう熱は大丈夫?体調は?悪くない?どこか痛かったりしない?」
私の顔をペタペタと触って、額に手を当てたり布団がかけられている身体を見渡したり忙しない。
「大丈夫だよ」
「そっか良かった。薬飲んだから熱もだいぶ下がったみたいだね」
涼ちゃんが私を抱きしめた。
「薬?」
「龍皇子さんがお医者さんを呼んでくれて、あとおかゆとか色々持ってきてくれたんだ。龍皇子さん本人は来れなくて、龍王子さんの護衛さんが持ってきてくれたんだけどね」
「要ちゃんが……」
わずかに残っている記憶には、お医者さんが私を診てくれて薬を貰い、ご飯を涼ちゃんが食べさせてくれて、薬も飲ませてくれたような……
思い出していく記憶はどれもめちゃくちゃ涼ちゃんに看病してもらっている私だった。
「あ、あの、ごめんね。なんか色々と看病してもらっちゃって……」
「ううん。気にしないで………」
涼ちゃんは視線を逸らし照れたように顔を赤くした。
私は体を起こして照明のスイッチを押して部屋を明るくした。
「すごく心配かけちゃったよね?ごめんね?なんか、別れるとかそんな事言ってたみたいだし……」
「い、いや!それは私が勘違いしちゃっただけっていうか……」
「それでもだよ。ちゃんとメール送ったつもりになってたから」
枕元に置いてある携帯を手に取って、送信履歴を確認する。
“ごめん“とか“ごめんなさい“とか謝っているだけでちゃんと理由が書かれていない。ぼんやりとしていたとはいえ、そこはちゃんとメッセージを送れたか確認をしておくべきだった。
でも、ここから何故別れるという話になるんだろうか?
「ごめん。ちゃんと送れてないね。でも、別れるなんて打ってないけど?」
「あ、いや……その……“彼を“って送られてきたのを、私が深読みしすぎたというか……間違って捉えちゃったというか……」
メッセージの最後の方に“彼を“と誤字が打たれていてそれを涼ちゃんが勘違いしてしまったのか……
「これ、“彼を“じゃなくて多分“風邪を“って打とうとしたんだよね」
風邪を引いたと打とうとして誤字した上にそのまま送信してしまったみたいだ。
「体調悪い時にメッセージ送ってくれたんでしょ?私こそ勘違いしちゃって、凪沙が辛い時に困らせちゃってごめんね?」
再び涼ちゃんが抱きしめて私の肩に頭を置いた。
「あ、涼ちゃん……私汗くさいよ!?」
「大丈夫だよ」
そう言って涼ちゃんが私の首元に鼻を擦り寄せて、唇も触れた感触がする。
「えぇ!ちょっと待って!………あれ?私、パジャマ?」
よく見ればパジャマが変わっていることに気づいた。
いつの間に着替えたんだろうか?
ゆっくりと遡るようにして思い出してきたのは、脱いだ記憶。
そして、下着姿の私が涼ちゃんに背中を拭かれている記憶だった。
「涼ちゃん………今すぐ記憶を消して」
「……大丈夫だよ」
涼ちゃんが私を抱きしめる腕の力が強まった。
「今すぐ消しなさい」
「……だ、大丈夫だって。綺麗だったよ?」
だからって涼ちゃんの目の前でパジャマを脱いで、あんな下着姿を晒して……多分その後涼ちゃんはわざわざ私にパジャマを着させてくれたはずで……その後も、おかゆを食べさせてくれたりしていたし、恥ずかしくて顔が熱くなっていく。また熱が上がってしまったかもしれない。
「ダメ。記憶消して」
カプッ!
「ぁっ……」
涼ちゃんが私の首を甘噛みしてきた。
「大丈夫だって!すごく綺麗だったし、それにいずれは見るんだよ?」
「み、見るって……」
「凪沙の風邪が治ったら、それ以上の事だってするんだからね?」
涼ちゃんが顔を上げて私の顔を覗き込んでくる。
その顔は真剣で、瞳の奥には熱い炎が宿っているように見えた。
どのくらい寝ていたんだろうか、朧げな記憶を辿り最後の記憶が涼ちゃんにメールを送ろうとして携帯を手にしたことは覚えている。
その後もメールは送ったような気がする程度しか思い出せない。
ちゃんと送ったんだろうか?枕元に置いてあるはずの携帯に手を伸ばそうとすれば、体が重たくうまく動かせなかった。
まだ熱がちゃんと下がっていないからだろう。
どうにかして動かそうとすれば、モゾモゾと何かが動く気配が横からした。
横を見れば誰かがいる。焦点が定まらなかった視線が徐々にその人物を写し出した。
「え?……涼ちゃん?」
よく見れば動かせないと思っていた腕や体はどうやら抱きしめられているからだと気づいた。
ぼんやりとしていた頭が加速していく。
「涼ちゃん!?なんでここにいるの!?」
どうして私の部屋に涼ちゃんがいて、しかも同じベッドで寝ているって一体どういう事?
必死に記憶を探ると徐々に思い起こされていく。チャイム。メッセージ。涼ちゃんが悲しそうに別れたくないと訴えてきたこと……
動かせない腕で頭を抱えそうになっていると、涼ちゃんの目が薄く開いて、私と視線が合いパッと目が見開いた。
「凪沙!!」
肩肘をついて身体を起こした涼ちゃんが私を上から見下ろしてくる。
「凪沙……もう熱は大丈夫?体調は?悪くない?どこか痛かったりしない?」
私の顔をペタペタと触って、額に手を当てたり布団がかけられている身体を見渡したり忙しない。
「大丈夫だよ」
「そっか良かった。薬飲んだから熱もだいぶ下がったみたいだね」
涼ちゃんが私を抱きしめた。
「薬?」
「龍皇子さんがお医者さんを呼んでくれて、あとおかゆとか色々持ってきてくれたんだ。龍皇子さん本人は来れなくて、龍王子さんの護衛さんが持ってきてくれたんだけどね」
「要ちゃんが……」
わずかに残っている記憶には、お医者さんが私を診てくれて薬を貰い、ご飯を涼ちゃんが食べさせてくれて、薬も飲ませてくれたような……
思い出していく記憶はどれもめちゃくちゃ涼ちゃんに看病してもらっている私だった。
「あ、あの、ごめんね。なんか色々と看病してもらっちゃって……」
「ううん。気にしないで………」
涼ちゃんは視線を逸らし照れたように顔を赤くした。
私は体を起こして照明のスイッチを押して部屋を明るくした。
「すごく心配かけちゃったよね?ごめんね?なんか、別れるとかそんな事言ってたみたいだし……」
「い、いや!それは私が勘違いしちゃっただけっていうか……」
「それでもだよ。ちゃんとメール送ったつもりになってたから」
枕元に置いてある携帯を手に取って、送信履歴を確認する。
“ごめん“とか“ごめんなさい“とか謝っているだけでちゃんと理由が書かれていない。ぼんやりとしていたとはいえ、そこはちゃんとメッセージを送れたか確認をしておくべきだった。
でも、ここから何故別れるという話になるんだろうか?
「ごめん。ちゃんと送れてないね。でも、別れるなんて打ってないけど?」
「あ、いや……その……“彼を“って送られてきたのを、私が深読みしすぎたというか……間違って捉えちゃったというか……」
メッセージの最後の方に“彼を“と誤字が打たれていてそれを涼ちゃんが勘違いしてしまったのか……
「これ、“彼を“じゃなくて多分“風邪を“って打とうとしたんだよね」
風邪を引いたと打とうとして誤字した上にそのまま送信してしまったみたいだ。
「体調悪い時にメッセージ送ってくれたんでしょ?私こそ勘違いしちゃって、凪沙が辛い時に困らせちゃってごめんね?」
再び涼ちゃんが抱きしめて私の肩に頭を置いた。
「あ、涼ちゃん……私汗くさいよ!?」
「大丈夫だよ」
そう言って涼ちゃんが私の首元に鼻を擦り寄せて、唇も触れた感触がする。
「えぇ!ちょっと待って!………あれ?私、パジャマ?」
よく見ればパジャマが変わっていることに気づいた。
いつの間に着替えたんだろうか?
ゆっくりと遡るようにして思い出してきたのは、脱いだ記憶。
そして、下着姿の私が涼ちゃんに背中を拭かれている記憶だった。
「涼ちゃん………今すぐ記憶を消して」
「……大丈夫だよ」
涼ちゃんが私を抱きしめる腕の力が強まった。
「今すぐ消しなさい」
「……だ、大丈夫だって。綺麗だったよ?」
だからって涼ちゃんの目の前でパジャマを脱いで、あんな下着姿を晒して……多分その後涼ちゃんはわざわざ私にパジャマを着させてくれたはずで……その後も、おかゆを食べさせてくれたりしていたし、恥ずかしくて顔が熱くなっていく。また熱が上がってしまったかもしれない。
「ダメ。記憶消して」
カプッ!
「ぁっ……」
涼ちゃんが私の首を甘噛みしてきた。
「大丈夫だって!すごく綺麗だったし、それにいずれは見るんだよ?」
「み、見るって……」
「凪沙の風邪が治ったら、それ以上の事だってするんだからね?」
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その顔は真剣で、瞳の奥には熱い炎が宿っているように見えた。
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