婚約破棄した令嬢の帰還を望む

基本二度寝

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王国劇場。

王都にある一番古く、一番大きな劇場だ。
上演が終わった劇場から客が足早に出ていく。

「うん。今回も満足した」

王太子ベンジンはお忍びで、それとわからぬように変装して演劇を楽しんだ。
何度見ても良い。

「恐れ入ります。少し、よろしいでしょうか」

劇場の関係者が、帰城しようと馬車に向かっていたベンジンに声をかけた。




「演目を変更したい、だと?」

劇場支配人に呼ばれたベンジンは来客室で目を釣り上げた。

「はい、殿下。もう半年も同じ演目を行っております。そろそろ別の物に変更したいのですが」

「何故だ。話題になっていると喜んでいたでいたではないか」

原案はベンジンの持ち込んだ物語だった。
名前を出さない事を条件に入れて上演させたものだ。

テーマは今流行りの婚約破棄物。

上辺だけの女にうつつを抜かした男がずっと彼を支え続けた婚約者に婚約破棄を突きつけた。
女に騙されたと気づいた男は、心を入れ替え勤勉になり、その姿に感激した元婚約者と再会するラブストーリーだった。

これは実際にあった話で、ベンジン自身の話でもあった。
物語のように、元婚約者と再会する所までは行き着いていないけれど。

ベンジンはこの話を見た元婚約者からの再会を期待している。
心を入れ替えた姿を見てほしいと思っていた。





支配人は頭を抱えていた。

当初、実際にあった話とよく似たこの演目は話題になった。
気を良くしたベンジンから長期興行を提案されて断ることができずに毎日四公演、半年も同じ演目を上演している。

さすがに一般客は飽きてしまい、俳優を推す愛好家しかもう見に来る客はいない。
これでは商売にならない。


「別の演目が見たいと要望が来ております。劇場存続のためにもご容赦ください」

「…まだ、戻ってこないのに、」

「殿下?…なにか?」

「なんでもない!演目の変更は許さない!以上だ」

反論は認めないと、ベンジンは劇場から飛び出した。


劇場前の停留所で馬車を待つ観客達からは、推しを尊む声の他は、「飽きた」「他の劇はないのか」などと言った感想が飛んでいる。


「くそ、まだ…まだ、アドニナに届いていないのか」

ベンジンは裏手に待たせている馬車へと急いだ。

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