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一
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辺境に領地を持つ主、クロードは応接間で貴族令嬢と対峙していた。
急な訪れを詫て、名乗られたその名は、数日前に届いた書簡にあった令嬢の名前だった。
「セレスティア嬢」
「…はい」
彼女は急に口元を抑え、瞳を潤ませてクロードを見つめた。
己の厳しい顔には魔物の爪痕が残る。
未熟だった頃の驕りの痕は、令嬢には受け入れられない物だろう。
できるだけ怖がらせぬよう視線を他所に向ける。
「俺達の婚姻は王命だ。貴方には諦めて我が家に嫁いでもらう他ない」
「…はい」
「王都に比べ快適とは言い難いがこの地に慣れ」
「あの、」
急に言葉を遮られ、クロードは目線をセレスティアに戻す。
「クロード様の、お隣に座してもよろしいでしょうか」
セレスティアは頬を染めて相変わらず瞳を潤ませて訴える。
己に慣れるためだろうか?
承諾すれば、セレスティアはいそいそとクロードの隣に座り、此方を見上げる。
ー感情のない人形のようで、気持ちの悪い女だ
書簡と共に届けられた王太子からの手紙には、セレスティアをそう評価していたが…。
「あの、クロード様に…触れてもよろしいでしょうか…」
スカートをぎゅっと握りしめこちらを心配そうに伺うセレスティアを感情のない人形には思えない。
「構わないが…」
「ありがとうございますっ」
セレスティアはクロードの腕に絡みついて、顔をスリスリと擦り付ける。
触れるなど生易しいものではなく抱きついているようなものだ。
クロードは目を白黒とさせた。
「あぁ、この上腕二頭筋…いい」
ー男を褒めることもしない、可愛げのない女で
どこが…?
「旦那様。あ、まだ気が早いですね、クロード様。初対面ではありますが、お噂はかねがねより聞き及んでおりました。憧れ、尊敬し、その…お慕いしております」
頬を染め、嬉しそうに微笑むセレスティアに、クロードは考えることを放棄して、欲望のまま彼女を押し倒した。
急な訪れを詫て、名乗られたその名は、数日前に届いた書簡にあった令嬢の名前だった。
「セレスティア嬢」
「…はい」
彼女は急に口元を抑え、瞳を潤ませてクロードを見つめた。
己の厳しい顔には魔物の爪痕が残る。
未熟だった頃の驕りの痕は、令嬢には受け入れられない物だろう。
できるだけ怖がらせぬよう視線を他所に向ける。
「俺達の婚姻は王命だ。貴方には諦めて我が家に嫁いでもらう他ない」
「…はい」
「王都に比べ快適とは言い難いがこの地に慣れ」
「あの、」
急に言葉を遮られ、クロードは目線をセレスティアに戻す。
「クロード様の、お隣に座してもよろしいでしょうか」
セレスティアは頬を染めて相変わらず瞳を潤ませて訴える。
己に慣れるためだろうか?
承諾すれば、セレスティアはいそいそとクロードの隣に座り、此方を見上げる。
ー感情のない人形のようで、気持ちの悪い女だ
書簡と共に届けられた王太子からの手紙には、セレスティアをそう評価していたが…。
「あの、クロード様に…触れてもよろしいでしょうか…」
スカートをぎゅっと握りしめこちらを心配そうに伺うセレスティアを感情のない人形には思えない。
「構わないが…」
「ありがとうございますっ」
セレスティアはクロードの腕に絡みついて、顔をスリスリと擦り付ける。
触れるなど生易しいものではなく抱きついているようなものだ。
クロードは目を白黒とさせた。
「あぁ、この上腕二頭筋…いい」
ー男を褒めることもしない、可愛げのない女で
どこが…?
「旦那様。あ、まだ気が早いですね、クロード様。初対面ではありますが、お噂はかねがねより聞き及んでおりました。憧れ、尊敬し、その…お慕いしております」
頬を染め、嬉しそうに微笑むセレスティアに、クロードは考えることを放棄して、欲望のまま彼女を押し倒した。
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