辺境伯は悪女を愛す

基本二度寝

文字の大きさ
6 / 9

しおりを挟む
「セレスティアに夜会への招待状を送れ」

王太子の言葉に、側近たちは顔を見合わせた。

「送る…とは何処に」

「公爵家で良いだろ」

側近は肩をすくめた。

「…以前公爵家にセレスティアの問い合わせを行いましたが、『王家の指示通り放逐済』と返答がありましたので」

「…まだ戻ってないのか。公爵の領地にいるのでは」

王太子の疑問に側近は頭を振って答えた。

王太子と婚約破棄をしたとはいえ、見目美しい元公爵令嬢を側に置きたいと側近たちは考え、愛人にと申し入れするつもりで公爵家に問い合わせた。
所在を知らぬと断られ、側近たちは個々にセレスティアの居場所を探していたのだが、結局誰も行方を追えなかった。

「あら、セレス様の居場所を探しているのです?」

王太子の妹、シャルロットは開いていた扉からひょこりと顔を出す。
まだ成人前のシャルロットはセレスティアを姉と慕い仲が良かった。

「なんだ、シャルロット。行儀が悪いぞ」
「私、セレス様の居場所なら知ってますわ」

「なにっ」

王太子だけでなく、側近たちもざわついた。

「何処、何処にいる」
「何処って…」

シャルロットは呆れたような顔をして、「兄様がセレス様の婚約をお膳立てしたではありませんか」と言われ、ようやく思い当たった。

「辺境…?」
「もちろん」

「なぜ!」
「なぜって…」

驚愕する兄にシャルロットは訝しむ。

「あの悪魔の伯爵が住む呪われた地になんでわざわざ」
「え…セレス様、辺境伯の大ファンじゃないですか」

シャルロットの言葉に、男たちは絶句した。
あの悪党とも悪魔とも呼ばれる辺境伯のファン…?

「婚約解消されてそのまま辺境に向かって、結婚したそうです」
「結婚!?婚約の間違いだろう!?しかも期間限定の…」

王太子はセレスティアが泣きつけばすぐに婚約者に戻すつもりだった。
泣きついてこないなど考えもしなかった。

「婚約解消と同時に貴族籍を抜かせたではありませんか…平民となったセレス様は貴族ではないのですぐにでも結婚できますよ?
クロード様より父の元に婚姻届けが提出され受理されてます。
…兄様大丈夫ですか…?」

心配そうに兄を伺うシャルロット。

「というか、セレス様と兄様は婚約したのですよ?破棄ではなく。しっかりしてくださいませ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の意地悪な旦那様

柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。 ――《嗜虐趣味》って、なんですの? ※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話 ※ムーンライトノベルズからの転載です

魅了されたのは

基本二度寝
恋愛
「公爵令嬢エルシモアとの婚約を破棄する!」 貴族が集う夜会で王太子は、婚約者と対峙した上で宣言した。 エルシモアは、きょとんとした後、ゆっくり口角を上げて笑った。 「かしこまりました」 静かに了承し、側に居た男性にエルシモアは身を寄せる。 「私、婚約破棄されてしまいました」 甘えるように男性を見上げる姿に、王太子は憤った。 「婚約者がある身でありながらそのように他の男に縋る女などお断りだ!だから婚約破棄をするのだ!!」 叫ぶ王太子にも、傍らに婚約者ではない令嬢を連れていた。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

婚約破棄される令嬢は最後に情けを求め

かべうち右近
恋愛
「婚約を解消しよう」 いつも通りのお茶会で、婚約者のディルク・マイスナーに婚約破棄を申し出られたユーディット。 彼に嫌われていることがわかっていたから、仕方ないと受け入れながらも、ユーディットは最後のお願いをディルクにする。 「私を、抱いてください」 だめでもともとのその申し出を、何とディルクは受け入れてくれて……。 婚約破棄から始まるハピエンの短編です。 この小説はムーンライトノベルズ、アルファポリス同時投稿です。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔

しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。 彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。 そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。 なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。 その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。

【完結】亡くなった妻の微笑み

彩華(あやはな)
恋愛
僕は妻の妹と関係を持っている。 旅行から帰ってくると妻はいなかった。次の朝、妻カメリアは川の中で浮いているのが発見された。 それから屋敷では妻の姿を見るようになる。僕は妻の影を追うようになっていく。  ホラー的にも感じると思いますが、一応、恋愛です。     腹黒気分時にしたためたため真っ黒の作品です。お気をつけてください。 6話完結です。

だから、どうか、幸せに

基本二度寝
恋愛
話し合いもない。 王太子の一方的な発言で終わった。 「婚約を解消する」 王城の王太子の私室に呼びつけ、婚約者のエルセンシアに告げた。 彼女が成人する一年後に、婚姻は予定されていた。 王太子が彼女を見初めて十二年。 妃教育の為に親元から離されて十二年。 エルセンシアは、王家の鎖から解放される。 「かしこまりました」 反論はなかった。 何故かという質問もない。 いつも通り、命を持たぬ人形のような空っぽの瞳で王太子を見つめ、その言葉に従うだけ。 彼女が此処に連れて来られてからずっと同じ目をしていた。 それを不気味に思う侍従達は少なくない。 彼女が家族に会うときだけは人形から人へ息を吹き返す。 家族らだけに見せる花が咲きほころぶような笑顔に恋したのに、その笑顔を向けられたことは、十二年間一度もなかった。 王太子は好かれていない。 それはもう痛いほどわかっていたのに、言葉通り婚約解消を受け入れて部屋を出ていくエルセンシアに、王太子は傷付いた。 振り返り、「やはり嫌です」と泣いて縋ってくるエルセンシアを想像している内に、扉の閉じる音がした。 想像のようにはいかない。 王太子は部屋にいた側近らに退出を命じた。 今は一人で失恋の痛みを抱えていたい。

処理中です...