6 / 10
六
しおりを挟む
「父上!?それではっコルティナがっ」
「あれが欲しいなら死んだことにして囲って好きにすれば良い。王太子妃にはできんがそれで我慢しろ」
国王陛下の言葉に、良い案だとグネールは気持ち悪い笑顔を見せた。
「コルティナ。私が可愛がって上げるから降りておいで?そこにいたら間違って騎士たちの刃を受けるかもしれないよ?」
コルティナに向ける醜悪な顔は気分が悪くなる。
「騎士の刃は俺には届かない」
黒馬が前足を踏み鳴らす。
大きな揺れにコルティナはデュードにしがみついた。
デュード達を包み守るように球体の結界魔法が展開した。
「小癪な」
「持久戦に持ち込んだ所でこちらの優位は変わらないわよ」
王妃も陛下の選択に従うようだった。
懐から短い杖を取り出して、臨戦態勢をとった。
「これは、多勢に無勢…だな」
「デュー?」
弱気な台詞にコルティナは顔を上げた。
言葉とは裏腹な帝国皇子の表情。
状況はデュードの分が悪い。
それでもコルティアは王太子殿下よりデュードを選んだ。
「いつまで余裕でいられるか」
陛下が近くの近衛に合図を送ると、取り囲む騎士の後ろに隠れた魔法師達が詠唱を開始した。
「グネール。下がれ」
「ですが、」
「その女は守ってやるから下がれ」
国王の言葉にグネールはしぶしぶ陛下のもとへ向かう。
コルティナに視線を送ったまま。
「集中砲火」
王妃が先陣を斬って、火炎を放った。
それに倣って魔法師達が炎球を飛ばす。
炎は真っ直ぐ黒馬に向かって投げられたはずなのに、急に角度を変えて天へ登る。
まるで魂が召されるような光景にその場にいた人間すべてが魅入った。
視線が上向いて、ようやく人々は気づいた。
「穏やかではないなァ。国王よ」
空に浮かぶのはデュードの黒馬よりも一周り大きな黒馬。
それにデュードと同じ髪色をした壮年の男が跨っている。
「…親父」
「よぅ!息子。助けに来たぞ」
「いや、あんた忙しいだろ…」
「いや?丁度時間が出来て暇だった」
「…宰相苦労してるな…」
「まさか、皇帝陛下っ…何故、此処に」
黒馬の繁殖国、皇帝陛下自ら愛馬に跨り参上した。
その光景に国王は驚愕していた。
空に浮かぶ皇帝の周りに次々と黒馬が集まってきた。
「うちの騎馬隊。ちょっと凄いぞ」
空に浮かぶ黒馬達の足元に大きな魔法陣が形成されていく。
空を埋め尽くす無数の魔法陣。
その一つから予告なく鉄の塊が現れ、地上に落ちた。
大きな音と土埃を上げて地面にクレーターを作る。
民衆は逃げ惑った。
「鉄の雨を降らされたくなければ、得物を仕舞え」
皇帝の言葉に、騎士達は刃を捨てた。
剣や槍では鉄の塊は防げない。
「皇帝陛下っ急にこのような振る舞い!戦にするつもりか!?」
「おかしな事を。先に剣を息子に向けたのはそちらだろう。私は息子を守っただけだが、何が問題だ」
帝国の皇子を取り囲んで居た。
国王は顔色を変えた。
ようやくこの状況のまずさに気づいた。
「違う、これはっ」
「国王よ。黒馬の貸与契約の解消の話をしよう」
「解消…?」
「契約にあったはずだ。黒馬及び世話役に危害を加えた場合、即解消すると」
「危害は、…加えてません」
まだ、加えていなかった。
国王はそう言い逃れるしかない。
「攻撃を受けたと伝達があったから救出に来た。黒馬は離れている仲間と疎通がとれる」
「まさか」
国王も黒馬そこまでの能力があるとは知らなかった。
国の戦力の指標にもなる黒馬はそれ程までに優秀だった。
「攻撃しただろう…?拘束魔法の痕跡があった」
国王は王妃を振り返る。
王妃は青ざめた顔で杖をキツく握りしめていた。
「国王。契約は解消だ」
それは決定事項だった。
王国と帝国。上下関係はない。
しかし、王国にはそれを拒否できるだけの誠意も力も無かった。
「あれが欲しいなら死んだことにして囲って好きにすれば良い。王太子妃にはできんがそれで我慢しろ」
国王陛下の言葉に、良い案だとグネールは気持ち悪い笑顔を見せた。
「コルティナ。私が可愛がって上げるから降りておいで?そこにいたら間違って騎士たちの刃を受けるかもしれないよ?」
コルティナに向ける醜悪な顔は気分が悪くなる。
「騎士の刃は俺には届かない」
黒馬が前足を踏み鳴らす。
大きな揺れにコルティナはデュードにしがみついた。
デュード達を包み守るように球体の結界魔法が展開した。
「小癪な」
「持久戦に持ち込んだ所でこちらの優位は変わらないわよ」
王妃も陛下の選択に従うようだった。
懐から短い杖を取り出して、臨戦態勢をとった。
「これは、多勢に無勢…だな」
「デュー?」
弱気な台詞にコルティナは顔を上げた。
言葉とは裏腹な帝国皇子の表情。
状況はデュードの分が悪い。
それでもコルティアは王太子殿下よりデュードを選んだ。
「いつまで余裕でいられるか」
陛下が近くの近衛に合図を送ると、取り囲む騎士の後ろに隠れた魔法師達が詠唱を開始した。
「グネール。下がれ」
「ですが、」
「その女は守ってやるから下がれ」
国王の言葉にグネールはしぶしぶ陛下のもとへ向かう。
コルティナに視線を送ったまま。
「集中砲火」
王妃が先陣を斬って、火炎を放った。
それに倣って魔法師達が炎球を飛ばす。
炎は真っ直ぐ黒馬に向かって投げられたはずなのに、急に角度を変えて天へ登る。
まるで魂が召されるような光景にその場にいた人間すべてが魅入った。
視線が上向いて、ようやく人々は気づいた。
「穏やかではないなァ。国王よ」
空に浮かぶのはデュードの黒馬よりも一周り大きな黒馬。
それにデュードと同じ髪色をした壮年の男が跨っている。
「…親父」
「よぅ!息子。助けに来たぞ」
「いや、あんた忙しいだろ…」
「いや?丁度時間が出来て暇だった」
「…宰相苦労してるな…」
「まさか、皇帝陛下っ…何故、此処に」
黒馬の繁殖国、皇帝陛下自ら愛馬に跨り参上した。
その光景に国王は驚愕していた。
空に浮かぶ皇帝の周りに次々と黒馬が集まってきた。
「うちの騎馬隊。ちょっと凄いぞ」
空に浮かぶ黒馬達の足元に大きな魔法陣が形成されていく。
空を埋め尽くす無数の魔法陣。
その一つから予告なく鉄の塊が現れ、地上に落ちた。
大きな音と土埃を上げて地面にクレーターを作る。
民衆は逃げ惑った。
「鉄の雨を降らされたくなければ、得物を仕舞え」
皇帝の言葉に、騎士達は刃を捨てた。
剣や槍では鉄の塊は防げない。
「皇帝陛下っ急にこのような振る舞い!戦にするつもりか!?」
「おかしな事を。先に剣を息子に向けたのはそちらだろう。私は息子を守っただけだが、何が問題だ」
帝国の皇子を取り囲んで居た。
国王は顔色を変えた。
ようやくこの状況のまずさに気づいた。
「違う、これはっ」
「国王よ。黒馬の貸与契約の解消の話をしよう」
「解消…?」
「契約にあったはずだ。黒馬及び世話役に危害を加えた場合、即解消すると」
「危害は、…加えてません」
まだ、加えていなかった。
国王はそう言い逃れるしかない。
「攻撃を受けたと伝達があったから救出に来た。黒馬は離れている仲間と疎通がとれる」
「まさか」
国王も黒馬そこまでの能力があるとは知らなかった。
国の戦力の指標にもなる黒馬はそれ程までに優秀だった。
「攻撃しただろう…?拘束魔法の痕跡があった」
国王は王妃を振り返る。
王妃は青ざめた顔で杖をキツく握りしめていた。
「国王。契約は解消だ」
それは決定事項だった。
王国と帝国。上下関係はない。
しかし、王国にはそれを拒否できるだけの誠意も力も無かった。
応援ありがとうございます!
14
お気に入りに追加
1,002
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる