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一
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王太子は、聖女補佐に口付けた。
「ようやく君を婚約者にできる」
「殿下…」
地味な聖女には、婚約破棄を告げた。
それに伴い、聖女の職も辞めさせた。
真の聖女は、見た目も華やかでなければならない。
聖女補佐のミリャーナは花のように朗らかに笑った。
「ですが、私は聖女様ほど力はありません」
「おいおい、今はもう君が聖女だよ」
「殿下ったら…」
王太子は教会に大金を積んだ。
金で王太子は、聖女の座を買った。
神官たちは反発したが、教会の総司教が認めたら下の者は何も言えなくなる。
教会の内部も他と変わらない。
下官は上官には逆らえない。
「君の不安はわかるよ。前の聖女の力は膨大だったらしいが。でも安心してほしい」
王太子はミリャーナを抱き寄せ、また口付けた。
「私はアレを追放したりなどしない。他国にむざむざくれてやるつもりもない。
住む家を与え、金を渡して、アレを飼うことにした」
聖女を教会から追い出す際に、契約をした。いや、させた。
衣食住を死ぬまで提供する代わりに、聖女は王太子の呼び出しに応じ、力を貸すことを条件に契約を交した。
「君が困れば、いつでもアレを呼び出して仕事をさせればいい」
「なんとかと…鋏は使い用…、ですわね」
くくっと王太子は笑う。
この少し毒のあるミリャーナを気に入っている。
温室育ちの嫌味もわからない、常識の抜けた女よりも、少し毒のある令嬢の方が。
「死ぬまで、飼い殺すよ。君との時間のために」
「…殿下と共寝をした次の日、とか?」
「そうだな、そうしよう」
王太子はミリャーナを抱き上げて、そのまま自室に消えていった。
「ようやく君を婚約者にできる」
「殿下…」
地味な聖女には、婚約破棄を告げた。
それに伴い、聖女の職も辞めさせた。
真の聖女は、見た目も華やかでなければならない。
聖女補佐のミリャーナは花のように朗らかに笑った。
「ですが、私は聖女様ほど力はありません」
「おいおい、今はもう君が聖女だよ」
「殿下ったら…」
王太子は教会に大金を積んだ。
金で王太子は、聖女の座を買った。
神官たちは反発したが、教会の総司教が認めたら下の者は何も言えなくなる。
教会の内部も他と変わらない。
下官は上官には逆らえない。
「君の不安はわかるよ。前の聖女の力は膨大だったらしいが。でも安心してほしい」
王太子はミリャーナを抱き寄せ、また口付けた。
「私はアレを追放したりなどしない。他国にむざむざくれてやるつもりもない。
住む家を与え、金を渡して、アレを飼うことにした」
聖女を教会から追い出す際に、契約をした。いや、させた。
衣食住を死ぬまで提供する代わりに、聖女は王太子の呼び出しに応じ、力を貸すことを条件に契約を交した。
「君が困れば、いつでもアレを呼び出して仕事をさせればいい」
「なんとかと…鋏は使い用…、ですわね」
くくっと王太子は笑う。
この少し毒のあるミリャーナを気に入っている。
温室育ちの嫌味もわからない、常識の抜けた女よりも、少し毒のある令嬢の方が。
「死ぬまで、飼い殺すよ。君との時間のために」
「…殿下と共寝をした次の日、とか?」
「そうだな、そうしよう」
王太子はミリャーナを抱き上げて、そのまま自室に消えていった。
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