筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝

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「我が息子よ。よく来た。学園の生活に不満はないか?」

国王陛下は息子の王太子を呼び、親子の対話を望んだ。
王は為政者だけれど、父親の顔も忘れずに王太子を心配する。
多少の過保護の気はあるが、子に甘いと思われぬよう臣下たちの前ではそれを出さぬように心掛けている。

「はい。学業と友人関係には特に問題はないです」

うんうんと目尻に皺を作って王は頷いた。

「婚約者候補たちとはどうだ」
「それは…」

婚約者の候補には満遍なく接しなければならない。
その中から、正妃と側妃を選ぶ。
彼女たちに優劣をつけてはいけないと教わった。
後の諍いは最小にしたいと王家は望む。

結婚もまだの状態でも側妃をとることは決定事項だった。
子を残すために必要なのだと言われ、正妃との間に子が出来なかった時に考えれば良いのにと王太子は思っていても。

(愛する者は一人で良い、ローレンシアだけで…)

「彼女たちとは隔たりなく時間を過ごしております」

側妃にはきっと愛情を向けられない。
気の毒な妃を作る事への抵抗が、王太子の中で燻り続けていた。




「して、お前の目から見て私はどう写る?」

定例のように王は息子に尋ねた。

貴族や国民にどう思われても構わないが、息子の評価を昔から気にする父親だった。

不安そうにいつも尋ねる父に、王太子はいつも通りの返しをする。

「『父は優秀な王であります』」

実際、過保護な父は賢王と呼ばれている。
国民からも人気があり、貴族からも一定の評価を得ている。
反対勢力からも、認める部分はあると言わしめるのだから、『優秀』の言葉で片付くものではないと思う。

それでも父は息子の言葉に満足して、破顔して喜んだ。

「王太子よ。お前もきっと良き王に慣れるだろう。精進せよ」
「はい」

父は目を細めて何度か頷いた。

「よく、周りの声を聞いて、よく考えて発言するのだぞ。王族の言葉は重い。簡単に人の人生を変えてしまえるのだ。
放った言葉は取り消せない。それは間違いでしたと言ったところで『発言した事実』を無しには出来ない。
それほどに…我々の言葉は重いのだ」

常々、父はその教訓を口にする。
ずっと言われ続けていて、王太子はもうお腹いっぱいである。

神妙な顔で「はい」と返事をすればこの話は終わる。

「うむ。身体には気をつけるようにな」

例にも違わず、王は話を終えると息子へ退出を命じた。

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