魔甲闘士レジリエンス

紀之

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第37話 f市戒厳令(前編)  類人猿型UMAスカンクエイプ 登場

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 異世界

とある森が燃えていた。

炎から逃げるように2m程の猿の様なUMAが1体、森を駆ける。

その目は何かに追い立てられる恐怖に染まっており、その恐怖の根源から遠ざかっていることを時折後ろを振り向い
て確認している様だった。

そのすぐ後ろには無精ひげのを生やした男が一人、両手の平から熱線を放っていた。

「ハハハハハ!逃げろ逃げろ!ここも直に人間様のモノになるんだからよ!」

彼の足元には森を駆け抜けていったあの猿のUMAの同族の黒焦げの焼死体が累々と折り重なるように散らばっている。
中には子供を守るつもりだったのだろう、母親か父親どちらか判別できない大きな遺骸が小さな遺骸の上に折り重なっているのもある。


犯人たる男は異形の姿へと変身し、その姿はあのジャージーデビルへと変わる。彼はコウモリの翼を森の上空へ飛んで呟いた。

「まあこんな物だろう。後はスカンクエイプが来る前に現世で仕込みをしないとな」

この森林火災はこの怪物のこれからの始まる余興に過ぎない

炎は爆発を伴いながらあっという間に広がっていたがその勢いはスカンクエイプの逃げる方向に行くほど強まっていた。

「フン、恨むなら自分の体質を恨みな。後で向こうの人間共にもお前の恐ろしさを知ってもらおうじゃないか」

そう言うとジャージーデビルは次元移動の穴をスカンクエイプの前方に開く。

その穴にスカンクエイプは勢いよく飛び込む。

その数秒後、穴の周辺で一際大きな爆発が起こった。



翌日

「これは普通の森林火災ではないですね」

レジリエンス達との決戦の傷がようやく癒えたフライング・ヒューマノイドとイエティは昨夜見えた怪光と森林火災の調査に来ていた。

最後の1人、ナウエリトは別の用事があると言って不参加だった。

その理由は判り切っている。ナウエリトはあるUMAに夢中なのだ。

連日言いよっては肘鉄砲を食らい続けていたが、一向に諦める気配は無かった。

基本的に他者のやる事に干渉しないフライング・ヒューマノイドも今回ばかりはやめておいた方が良い、と忠告したがそんなものが聞き入れられる事は無かった。

『一世一代の恋なんだ』

『次は然るべき処置をすると言われたのでしょう?あの女ならどんな手を使っても不思議ではありません。最悪死ぬことになりますよ』

『それならそれを躱しちまえば認めてくれるってことだろ?』

取り付く島もないとはこの事でもはや好きにしろ,
馬鹿は死なねば治らん、とイエティは色ボケ蛇の眼前に大剣を叩きつけて件の森へと出て行った。

それを追う形でフライング・ヒューマノイドも同行したのだった。


「原因が分かったぞ。この森にはスカンクエイプの群れがいるが何らかの原因かもしくは何者かに襲われたようだ」

「なるほど。彼らの特性からこの森の不自然な焼け方の説明はつきますね」

イエティの説明にフライング・ヒューマノイドは不自然に開けた場所にある、足跡を見つける。

「ただ、その理由とは何でしょうね?足跡からすると1匹のみ別行動をしていた?その個体は村八分にでも合っていたんですか?」

「連中はそういう事はしない。そういう発想が無いと言っていい。ただ何か事情があったとしても部外者にペラペラしゃべる事でもないからな。それと先ほど聞いたのだが妙な奴が空を飛んでいたらしい」

「そいつはどんな奴です?」フライング・ヒューマノイドが聞き返す。

「それがヤギだのコウモリだのと一致しないんだ」

「ジャージーデビルの特徴ですね。そうだとすると厄介な事になりましたね」

「知っているのか?どうする?迷子を捜索して連中に恩を売っておくか?」

「見つかったらね。余り期待を掛けない方がお互いの為でしょうから。どちらかといえばジャージーデビルを探しましょう。恐らく事件の犯人でしょうしその意図を確かめなくては」

そう言って2体は森を後にするのだった。



現世

文明存続委員会本部・会議室

「それで結局喜納朔太郎が我々が回収した風の四元将テベリスの右腕と左足をどのように入手したかはわからずじまいか」

文明存続委員会に所属していた元職員・喜納朔太郎がEスリー残党の科学者Dr田出井と組んで引き起こした影事件は不可解な点が多いまま終結してしまった。事件の前後関係を普通に考えれば内通者がいると考えるのが妥当ではある。その究明の為の会議が深夜にも拘らず続いていたことがこの問題を文明存続委員会がどれだけ重視しているかの証左だった。

「しかし、内通者がいるとして彼らに何かメリットはありますかね?結局奴らは倒されてしまったわけですし」

古川努技術主任のいう事ももっともだった。装備を渡しただけで特にその後特に支援をしたという事も無いのだ。

「囮か、もしくはあの影共の実験結果を知りたいだけだったとか?」

「じゃあまだ終わりじゃないってことか?次は何を企んでいるんだ?そしてそいつは誰なんだ?」

笠井恵美の立てた推測に古川は頭を抱える。

「でもレジリエンスがマルスに協力すれば事態解決にこれ程心強い味方もいないと思います。あの2人は昔なじみの仲なのだから今後もこの協力体制を維持していきたいですね」

「利害が一致する間はな」

黒川博士は重々しい口調で呟く。

異世界にアトランティス人の生き残りがいる。それは彼が以前から懸念していた事だった。

(自分ならこちらの世界に帰還する事を考えるだろう。今回の事件がそれとどう繋がるのかは分からないがどの道ティブロンの言い分を全面的に信用できない事は決定的だな。監視の目の振り切って何をやっているのかわからぬときがある)

彼からすればティブロンという男はある意味ではレジリエンスや四元将以上の危険性を持ちかねない問題だった。

「引き続きエレメンタル・エナジーの増減の監視を怠らないように。そして異常気象を感知したらすぐに伝える事。以上だ」
時計は午前3時を回っている。黒川は会議終了を告げると彼以外はあくびを噛み殺しながら宿直室へと向かう。

同時に会議室の内線が鳴った。

「は?f市北部でガス爆発?それと猿の様な怪物が?それはどちらの方角へ?はい、はい判りました。すぐに調査を向かわせます」

報告を受けた笠井は黒川を見やる。

「聞いていた。分析班を回したまえ。それとマルスチームも同行させろ。ただし全員件の地区からは徒歩でな。ガスの出所が分からん以上慎重に行動するように。そしてガスの成分が分かり次第すぐに報告せよ」

数時間後驚くべき証言と映像そして分析結果が文明存続委員会へともたらされた。


分析班が現地で聞いた話とはこういうものだった

結果を言えばK県f市はまたも奇怪な事件の舞台となった。

それは早朝3時の住宅街から始まった。

調査員が聞いた話では聞き込みをした人物によれば向かいの家の家主とその家族の不幸はこの日に限ってこんな早くから会社に行かなければならない用事があった事だ、と語った。

窓を開けるなり強烈な異臭がしたという。

硫黄と銀杏を混ぜて100倍に煮詰めた、目も開けていられないほどの強烈な臭い。

「後から思えば向かいの家の家主である彼の頭に一瞬浮かんだ会社を休む口実ができたという勤め人によくある邪念に従っていればこの時彼とその家族は助かっていたかもしれない。だが彼はそうしなかった」

調査員へ唇を戦慄かせて語るその男数秒の沈黙の後にその直後に起こった悲劇を語る

「彼が車庫に入って10秒いや5秒かな?それくらいしたら途端爆発音がして車庫が爆発したんだ。続けて車庫と家に繋がる道に火が付いたかと思うと家も爆発して。この火災は家の敷地を超えて道路までも焼き尽くしたのさ。見てくれよ。この焦げ跡」

他の調査員が聞いた話では似たような火災がその後付近で2件立て続けに起こった。

その最後の火災現場はよりにもよって火災の通報を受けた消防署だった。

これと同時に警察にある通報が相次いでいたという。

それらはほぼ同じような内容でゴリラのような生物が町を走っている、という物である。

警察はこの通報と奇妙な火災を関連付け、文明存続委員会へと連絡したという訳である。



「あれはスカンクエイプだな」

安全帽を被った骸骨状の頭部に作業服を思わせる見た目。

道路上に設置された監視カメラからの映像でティブロンは怪物の外見からそう判断した。

「スカンクというとこれが異臭の犯人でしょうか」

「そうだ。そして厄介な事にコイツが発するガスは極めて高い可燃性がある。恐らく火災の原因はそれによるものだろう」

マルスチーム保有のトレーラーにいる笠井恵美からの報告と疑問にティブロンが答える。

「現在分析班がガスを採取して分析中です」

その結果は驚くべき物だった。

その結果を受けて黒川博士は県知事と市長へ電話をした

2つの電話の内容は概ね同じだったので内1つを記す。

「君は自分が何を言っているのか分かっているのか?」

明らかに不愉快な声が電話口から聞こえるが、黒川は無視した。

「もちろんです。ですからf市全域に戒厳令を敷いて頂きたいと申しているのです」

「住民は納得しないだろう。私を含めてね」

「その場合はf市の40万人が確実に死ぬことになるでしょうな。市内に充満しつつあるガスは高い可燃性と時間経過で性質を変化させる特殊な物だと判明しました。具体的には比重が軽くなり、爆発性が付与されるのです」

「つまりどういうことが起きるというのだね?」

相手の声色が明らかに変わったところで黒川はさらに畳みかける。

「人間の使うガスで例えると空気より重いプロパンガスが空気よりも軽い都市ガスへと変化するというのです。今話している間に最初の通報から約2時間半経っているので市の北東部の住宅街はガスで覆われている状態でしょうね。そんな状態で換気後にコンロを使ったり、車を出そうものならどうなるかはもうおわかりでしょう?そしてその事を知りつつ警告を出さなかった貴方方がどうなるか」

ここで黒川は言葉を切って相手の反応を待つ。

「・・・戒厳令はどのくらいの期間を見ているのかね?」

「分解酵素の作成を急がせてはいますが長くて5日程と思って頂きたい」

「その期間内に確実に事態を収拾してくれたまえ」

「私達はそのための組織ですから」

そう言って黒川は電話を切る。

(ことなかれ主義の連中には命と責任。この2つの言葉を使えば大抵は納得する物だ)

今度は内線を使い

「許可が下りた。スカンクエイプの予想ルートは?奴は今どこにいる?北から南へと向かっているのだな。よろしい。マルスチームは海岸へガンウルフを運べ。エンジンをかけるなよ。着いたらディバイン・ジャッジメントの準備だ。私は追い込みの協力者を呼ぶ」

「南へ奴を追い込むんですね?北はy市と隣接しているからですか?」

「そうだ。ケイ、海岸沿いならこの時間殆ど人もいない。海側に向けて撃てばほぼ被害は無いと見ていい」

「分かりました。達人さんには僕から電話しましょうか?そっちの方が幾分マシに対応してくれるんじゃないですか?」

「その心配はない。こういう時には強力する。奴はそういう男だし、そう育てたのはこの私だ」

同時刻

八重島家の2階。ここに居候した時と同じ部屋をあてがわれた芹沢達人は布団の上でジッと座っていた。部屋は家具の位置も瀕死の重傷を負ってアトランティスへと送られたあの日と変わっていない。

(疲れているが眠れない)

達人は今考えなければならぬ事が山積みだった。

影事件の裏で暗躍していたレジリエンス・シャドーとシャドー・マルスを撃破後彼は八重島家へと戻り、家主の八重島修一郎とも再会した。修一郎も彼の帰還に驚きそして喜んだ。

感動の再会もそこそこに達人は夕食後、八重島家に異世界へ行っていた時の経緯の説明と現世で状況を聞いた。

「それじゃ、この世界の異常気象はお前が異世界で戦った影響もしくはこの世界でUMAと戦ったからと考えているのか」

TVでは日本へ向かっていた大型台風が忽然と姿を消したことが速報で流れていた。

「かもしれません。ただ少なくとも台風消滅は確実にさっき俺達が戦った影響でしょうね」

「確か異世界だとUMA撃破されると嵐が起こるんだったな。ここはマルスが出現してここで戦っているがその直後に別の場所で天候が変わっているな」

「鈴宮も来ているんですか?」

「ここにいるのはケイ君だけよ。鈴宮さんからは何の連絡もないわ」

紗良の言葉に

「しかしあいつが学校とはね。よく行く気になった物だ」

達人は当時から使命に燃えていた少年を思い出す。

自分同様使命だと考える事以外にあまり興味関心を示さない点は『施設』の教育の賜物と言えた。

(UMA退治のみに勤しむと思ったがそれがどんな心変わりだ?)

そんな思いを巡らせながら彼は八重島家にある人物の捜索の協力を願い出た。

「正体はUMAなんです。とかく派手な見た目をしているらしいのですが見かけたら連絡してほしい」

「うーむ。それだけじゃなんともな。一応生徒にも聞いてみるが期待するなよ」

「私も学校で聞いてみる」

「塾の子供達にも聞いてみるわね」

「お願いします。どうもよくない事が起こりそうなんです」

根拠はない。

だが達人は奇妙な確信があった。


その確信は夜明けと共に的中した。

「空の色が異世界の色に似ている!?」

そろそろ5時になろうかという時にカーテン越しに空を見て達人は愕然とする。

それはほんの数分だけで徐々に青い色へと変わっていったが、確かに赤黒いあの異世界の空があった。

その時家の電話が鳴った。

1階へ降りた彼はディスプレイに表示された番号を見て受話器を取った。

「達人か?」

「そうだ。こんな時間に何かあったのか?」

「単刀直入に言う。我々に協力しろ。でないとf市全域が火の海になる。スカンクエイプというUMAがf市内に侵入しているのだが、コイツの全身から出る可燃性の高いガスのおかげで既に火災による死者が出ている。間もなくf市全域に戒厳令が発令されるが敵が民家を襲撃しないとも限らない以上は絶対と言えん」

「それで敵はどこに向かっているんだ?俺は何をすればいい?」

達人はそう言いながらパジャマ姿の修一郎に目配せをする。

「自分のすべきことが分かっているな。南の海岸へ奴を追い込んでもらいたい。その後は我々がやる」

電話越しでも黒川博士は満足そうに頷いているのが達人の目に見えるようだった。

「そんな危険な奴を地表で始末するのか?万が一追い込み途中で自爆したりはしないのか?」

「その心配は今の所ない。問題はそこに至るまでの過程だ。お前の言う通り万一に備えたいが、空中に爆発させずに飛ばせるのか?あのガスはエレメンタル・エナジーにも反応する。さらに言えばどういう理屈かスカンクエイプの体内温度が上昇している。奴を異世界に送り返すことは出来ない。それどころかちょっとの衝撃で爆発しかねん」

「今の所は、な。他に知っておくことは?」

「奴の移動ルートと風向きから計算して後4時間で市内全域がガスで覆われる。それとスマホは持っているのか?」

「借りていく」

f市全域に市内で初めての戒厳令が布告されたのはそれからすぐだった。

八重島家の持つ各スマホは市からのアラートが鳴りっぱなしだった。

TVではどのチャンネルでも市長が戒厳令についての会見を行っているのが映し出されていた。

『戒厳令って何?」

「非常事態で軍隊が一切を主導する事だが、この場合は文明存続委員会か。連中そんな権限を持っているのか」

娘の疑問に答えながら修一郎はTVを凝視する。

TVではアナウンサーが換気をやめる事と火気厳禁、自動車やバイクの使用も取りやめるよう繰り返し呼びかけている。

『また不審な生物を見かけた際は危険ですので近づかず警察へ連絡を・・・・』

「ここにはそんな気配はないけど」

「ここは市内でも標高の高い場所だからガスの蔓延はかなり後の方だろうが逆を言えばその頃には南部はガスで充満している事になる。不審な生き物って事はそのUMAがそのガスをまきちらしているんだろう?なあ達人」

「ええ。それとすいませんがスマホを貸してくれませんか?文明存続委員会と逐次連絡を取り合わないといけないので」

「いいとも。気を付けろよ」

「ありがとうございます」

そう言うと達人はその電話番号を文明存続委員会へ伝えるとレジリエンスの箱を部屋に運び、そこで装着すると外に飛び出した。

戒厳令を受けた街は人ひとり歩いていなかった。

高齢者が住んでいるのだろう、建物から聞こえる大音量のTVかラジオの音が事態の異常さを際立たせていた。

「歩行にも気を使わないとな。火花1つで全滅だからな」

レジリエンスは借りたスマホを出しつつ自分の金属製のブーツを見ながら言う。

「もうすぐ市内中心部に来るのか。ここから海岸に誘い出すとなるとこのルートか」

スマホに送られてきた追跡アプリを起動する。アプリには市内各所のガスの状態も示されていた。

探知魔法プサクフでガスの性質が火のエナジーの性質を持っていることを確認するとスカンクエイプの移動予測ルートへ先回りすべく歩き出した。




スカンクエイプの追い込みにかかるマルスチームはトレーラーからマルス専用バイク・ガンウルフを運び出す班と車内に残ってスカンクエイプの目撃情報の収集にあたる情報班に分かれて行動を開始した。そこは未だガスの影響の無い場所だった。

「ケイ君、今レジリエンスいえ達人君も出るそうよ。そっちはどう?そろそろ最後の目撃現場に着くみたいだけど」

「こちらケイ。ガスはこの地区一帯に充満しています。まるで霧の中にいるみたいですよ」

そこでマルスは視界の隅に蠢く何かを捉える。後ろにいるサポート員5名に動かない様手で制す。その間にもその影はノソノソとこちらに向かってくると槍を振りかざして打ちかかってきた。

「!いけない」

反射的に右のホルスターからマルスブラスターを引き抜こうとしたマルスはガンウルフ後部に載せているガトリングランス・ランスモードを右手で構える。

「自由に戦えないって厄介だな」

振り下ろされた槍を左手で受け止めるとその相手をマルスのヘルメット内部のモニターの端に呼び出した、目撃された件の標的の画像と見比べる。

「こいつはo山に出てきた泥人形?護衛のつもりか?」

マルスは敵をサーチする。サーチ結果はそのアダマンはアスファルト成分をふんだんに含んでいる事をマルスに伝える。

(よし。空中ならば)

マルスは空中へ槍ごとアダマンを放り上げると左腰のADプレートを投げつける。

アダマンは明け方のまだガスに侵されていない清浄な空気の中胴を真っ二つにされる。さらにマルスはプレートを5つに分離させ敵の残骸をガス圏に到達する前に細かく分断する。

「敵1体にこれではね」

「でもこれだけ分解できれば例え地表に落ちても爆発しないと分かったのは朗報では?」

スタッフの一人にまあね、と返しながら再び霧の中を探る。他に動く物は無い。

(護衛がたった1体だけか?それとも偶然なのか?もしくは)

一つの考えに至ったケイは笠井に連絡を取ると達人の持つスマホの電話番号を聞き出すと、そこに連絡を入れた。

「急ぎましょう。時間は待ってくれない」

そう言うとマルスチームは市内南部へ向けて歩みを進める。

暫く進むとガスの霧が晴れ、視界が良好となる。スタッフの一人が大通りに繋がる細い道で今まさに戦おうとしている類人猿型UMAスカンクエイプと数体のアダマンを発見した。



スカンクエイプは最初森を焼いた犯人からただ必死に逃げているだけであった。

見知らぬ場所へとやって来た彼は元居た森へと変える為その彷徨の最中にある家々の敷地に侵入し、早朝カーテンや窓を開けた住民達を驚かせ、恐怖の悲鳴を上げさせながらひたすらに移動していた。さらに移動した先で日課のジョギング中の男性をその鋭利な爪で襲ったことで幾分か落ち着いた彼は悲鳴を上げて逃げるソレが群れを襲った『犯人』とよく似ている事に気が付いた。

仲間の復讐が出来る

そう考えたスカンクエイプは近くにある人間の『巣』へと近づく。

そして前方に何かモソモソとぎこちなく動く物が近づいて来るのを見た。

最初背格好から仲間と思われたそれはいきなりスカンクエイプに殴り掛かってきた。

その正体は合成UMAジャージーデビルが生み出した土人形兵士アダマンだった。

何故自分が襲われるのか。

判らないまま彼は自分を守るために応戦するのだった。

そんな場面に居合わせたマルスは両者の間に割って入るべく走りだした。
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