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プロローグ
誕生
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マウトが指を鳴らすと、アンクの身体は四方八方に弾け飛んだ。
「マウト様! なんてことを!」
シエルが叫ぶ。アンクの身体が散り散りになった先を目で追いながら、シエルは空を必死に掴んだ。
「バラバラになっただけだ。しばらく顔を見たくないのでな。時はかかるだろうが、そのうち勝手に再生する」
マウトはたった今弾いた指先を慈しむように擦り合わせると、シエルに視線を向ける。
「孤独など知らん。我々の目的は、母を追放し居場所を無くしたあの忌まわしいジェロスと、四人の兄弟に報復を与えることだった。我々こそが本物の神。立場をとって代わるため、母の転生復活はその始まりに過ぎなかった。そうであろう? 我は間違っておるか?」
睨むシエル。マウトがシエルから目を逸らすと、いつの間にかそばにニフティが居た。シエルもそれに気づくと、庇うようにしてニフティを抱き締める。
「我らはアンク様のお身体を探しに行きます」
「……勝手にしろ。だが母上の魂は置いていけ」
ふたりが去って行く。小さくなる背中がその影を消すまで見送ると、苛立ちと虚無で満たされたマウトは自身の足元から土を枯れさせていた。
(島ごと潰れてしまえ)
地響きの続くなか、民家の手前まで砂風が覆ったとき、ふと人の気配を感じとったマウトは民家を覗いた。小さく悲鳴を上げた初老の男。その隣では、青年が小さな女の子を抱えて震えている。
「なぜ生きている」
「そ、それは貴方様のご加護なのかと……我々をお導きください。主である貴方様のためにこの身を尽くしとうございます」
「主? ……そうか、主か」
我がアンクになろう。
記憶を持ったまま転生し続け、
不老不死の身となり、
この世の絶対的な神として君臨する。
マウトは瞳に決意を燃やした。
「そなた。名はなんという」
「ジンノにございます」
マウトは目の前の人間を観察した。ついさっきこの島に存在する人間は全て消したはず。それが何故かこの人間たちには呪力が効かなかったらしい。
「ジンノ、そなたのそばにいる人間は皆血縁者か」
「はい。息子のヤス、孫娘のテイでございます」
ジンノは怯えるように背中を丸め、ヤスは力強くテイを抱き締める。テイに至っては恐怖からか、それともヤスの腕の力が強かったのか、気を失ってしまったようだ。
マウトは三人から自分と近しい何かを感じ取った。殺せないことはない。だが殺してしまうよりも、もっとよい使い道があるのではないか、そう思った。
「ジンノよ、今からそなたを我が使徒とする。未来永劫その命、我に捧げると誓えるか」
ジンノは祈るように胸の前で手のひらを組み合わせた。
「はい。仰せのままに」
「マウト様! なんてことを!」
シエルが叫ぶ。アンクの身体が散り散りになった先を目で追いながら、シエルは空を必死に掴んだ。
「バラバラになっただけだ。しばらく顔を見たくないのでな。時はかかるだろうが、そのうち勝手に再生する」
マウトはたった今弾いた指先を慈しむように擦り合わせると、シエルに視線を向ける。
「孤独など知らん。我々の目的は、母を追放し居場所を無くしたあの忌まわしいジェロスと、四人の兄弟に報復を与えることだった。我々こそが本物の神。立場をとって代わるため、母の転生復活はその始まりに過ぎなかった。そうであろう? 我は間違っておるか?」
睨むシエル。マウトがシエルから目を逸らすと、いつの間にかそばにニフティが居た。シエルもそれに気づくと、庇うようにしてニフティを抱き締める。
「我らはアンク様のお身体を探しに行きます」
「……勝手にしろ。だが母上の魂は置いていけ」
ふたりが去って行く。小さくなる背中がその影を消すまで見送ると、苛立ちと虚無で満たされたマウトは自身の足元から土を枯れさせていた。
(島ごと潰れてしまえ)
地響きの続くなか、民家の手前まで砂風が覆ったとき、ふと人の気配を感じとったマウトは民家を覗いた。小さく悲鳴を上げた初老の男。その隣では、青年が小さな女の子を抱えて震えている。
「なぜ生きている」
「そ、それは貴方様のご加護なのかと……我々をお導きください。主である貴方様のためにこの身を尽くしとうございます」
「主? ……そうか、主か」
我がアンクになろう。
記憶を持ったまま転生し続け、
不老不死の身となり、
この世の絶対的な神として君臨する。
マウトは瞳に決意を燃やした。
「そなた。名はなんという」
「ジンノにございます」
マウトは目の前の人間を観察した。ついさっきこの島に存在する人間は全て消したはず。それが何故かこの人間たちには呪力が効かなかったらしい。
「ジンノ、そなたのそばにいる人間は皆血縁者か」
「はい。息子のヤス、孫娘のテイでございます」
ジンノは怯えるように背中を丸め、ヤスは力強くテイを抱き締める。テイに至っては恐怖からか、それともヤスの腕の力が強かったのか、気を失ってしまったようだ。
マウトは三人から自分と近しい何かを感じ取った。殺せないことはない。だが殺してしまうよりも、もっとよい使い道があるのではないか、そう思った。
「ジンノよ、今からそなたを我が使徒とする。未来永劫その命、我に捧げると誓えるか」
ジンノは祈るように胸の前で手のひらを組み合わせた。
「はい。仰せのままに」
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