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因縁編
終焉の雨
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再びの惨劇。マリアと千聖は、井無田と使用人によって大食堂の外に運び出された。
「どうするんだよ、こんな。俺はただ……」
権堂は、縋るように芹を見つめる。
「芹! 今度こそお前の治癒力でなんとかしろよ! お前ならなんとかできるんだろう?! なあ!」
「権堂様、もう結構ですよ。私に治癒能力なんてありません。はじめからご存知でしょう?」
口籠る権堂を一瞥すると、芹は改まって4人に言う。
「私は世界を清くクリーンにするために、この活動を行なっています。此度はこの『女子高生ラブホテル殺人事件』の闇を、浄化させていただきました」
淡々と。それでいて一仕事終わったような達成感に満ちた表情で、芹は続ける。
「段田慎之介、江畑マリア、相澤千聖。3名のご遺体は責任を持って私が対処致します。契約は覚えてらっしゃいますね? 館内で起きたことは他言厳禁。江畑様まで亡くなった今、この事件を記事にするのは些かリスキーかと存じますが、いかがでしょう。権堂様」
「……ああ、もう記事にすんのはやめだ。俺はもうこの件から手を引かせてもらう」
芹は満足げに、2回頷く。
「そして野中様、竹林様。おふたりをこのような危険な場所に招待したこと、そして黙ってご協力を仰いでいたこと。心よりお詫び申し上げます。契約期間が短縮しようと、初期の通り報酬はお支払いさせていただく所存ですので、何卒」
芹は丁寧に頭を下げた。その様子に、佐和子は脱力させた肩を抱えるように摩る。
「そう……初めから決まってたのね、この結末は。じゃあ私も契約、全うしなくちゃね」
「そうですね。大柳様は是非、もう少しだけこの館に」
「ええ。そうさせてもらうわ」
パチパチと唸る暖炉の炎が、徐々に小さくなる。この館に来てから10日あまり、そのたった数日で3人の命がなくなり、その死を弔うように館の外には涙雨が降りしきる。
(ここ、雨降るんだ)
海里は大食堂の窓に目をやりつつ、落ち着いた声色で芹に聞いた。
「あの、俺と彩美さんはどうしたら」
「ご自由に。お帰りになるのであれば、車を外にご用意致します」
その答えに、海里はそっと彩美の手を取った。
「行きましょう、彩美さん」
「いや、でも」
戸惑う彩美に、海里はもう一方の手で更に彩美の手を包み込んだ。
「俺。この館に来て唯一良かったことって、あなたに出会えたことなんです。よければここを出た後も、俺と会ってはもらえませんか?」
血染めの館で生まれた種が、やおら芽を出す。
「ええ。それは、もちろん」
「良かった」
そのふたりの様子に、芹は皮膚に彫刻したような満面の笑みを浮かべていた。
居館の敷地を一歩出たところで、海里の左手から例の印が消え去る。
「お疲れ様で、ございました」
「どうするんだよ、こんな。俺はただ……」
権堂は、縋るように芹を見つめる。
「芹! 今度こそお前の治癒力でなんとかしろよ! お前ならなんとかできるんだろう?! なあ!」
「権堂様、もう結構ですよ。私に治癒能力なんてありません。はじめからご存知でしょう?」
口籠る権堂を一瞥すると、芹は改まって4人に言う。
「私は世界を清くクリーンにするために、この活動を行なっています。此度はこの『女子高生ラブホテル殺人事件』の闇を、浄化させていただきました」
淡々と。それでいて一仕事終わったような達成感に満ちた表情で、芹は続ける。
「段田慎之介、江畑マリア、相澤千聖。3名のご遺体は責任を持って私が対処致します。契約は覚えてらっしゃいますね? 館内で起きたことは他言厳禁。江畑様まで亡くなった今、この事件を記事にするのは些かリスキーかと存じますが、いかがでしょう。権堂様」
「……ああ、もう記事にすんのはやめだ。俺はもうこの件から手を引かせてもらう」
芹は満足げに、2回頷く。
「そして野中様、竹林様。おふたりをこのような危険な場所に招待したこと、そして黙ってご協力を仰いでいたこと。心よりお詫び申し上げます。契約期間が短縮しようと、初期の通り報酬はお支払いさせていただく所存ですので、何卒」
芹は丁寧に頭を下げた。その様子に、佐和子は脱力させた肩を抱えるように摩る。
「そう……初めから決まってたのね、この結末は。じゃあ私も契約、全うしなくちゃね」
「そうですね。大柳様は是非、もう少しだけこの館に」
「ええ。そうさせてもらうわ」
パチパチと唸る暖炉の炎が、徐々に小さくなる。この館に来てから10日あまり、そのたった数日で3人の命がなくなり、その死を弔うように館の外には涙雨が降りしきる。
(ここ、雨降るんだ)
海里は大食堂の窓に目をやりつつ、落ち着いた声色で芹に聞いた。
「あの、俺と彩美さんはどうしたら」
「ご自由に。お帰りになるのであれば、車を外にご用意致します」
その答えに、海里はそっと彩美の手を取った。
「行きましょう、彩美さん」
「いや、でも」
戸惑う彩美に、海里はもう一方の手で更に彩美の手を包み込んだ。
「俺。この館に来て唯一良かったことって、あなたに出会えたことなんです。よければここを出た後も、俺と会ってはもらえませんか?」
血染めの館で生まれた種が、やおら芽を出す。
「ええ。それは、もちろん」
「良かった」
そのふたりの様子に、芹は皮膚に彫刻したような満面の笑みを浮かべていた。
居館の敷地を一歩出たところで、海里の左手から例の印が消え去る。
「お疲れ様で、ございました」
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